「誘導電流」と「電磁誘導」をやさしく解説! 身近な活用例も見てみよう【親子で物理のおべんきょう】

誘導電流は、日々の生活に欠かせないさまざまな機器に使用されています。ただし電流は目に見えないため、原理を理解するのは少し難しいかもしれません。誘導電流が発生する仕組みや関連する法則、身近な活用例をやさしく解説します。

誘導電流って何のこと?

誘導電流は名前の通り、何かに誘導されて流れる電流です。まずは誘導電流を生じさせるものの正体を紹介します。

電磁誘導によって流れる電流のこと

誘導電流とは、「電磁誘導」によって流れる電流を指す言葉です。コイルの周囲で磁石を動かすと、コイルの磁界が変化して電流が流れます。この現象を電磁誘導といい、そのとき流れる電流が誘導電流です。

コイル[細い金属(導線)をグルグルとらせん状に巻いたもの]に磁石を近づけるだけで電流(=誘導電流)が流れる。これを電磁誘導という。
コイル[細い金属(導線)をグルグルとらせん状に巻いたもの]に磁石を近づけるだけで電流(=誘導電流)が流れる。これを電磁誘導という。illustration by Juancarcole , Wikimedia Commons

なお磁界とは、磁石や電気製品の周りに生じている「磁気がはたらく範囲」のことです。磁石の動きを止めるとコイルの磁界も変化を止め、誘導電流も止まります。

またコイルの巻き数や磁石の磁力を変えることで、誘導電流の大きさを調整できます。

電磁誘導と誘導電流の仕組みを法則で学ぼう

誘導電流を学ぶには、磁界への理解が欠かせません。電気と磁界との関係を軸に、電磁誘導と誘導電流の仕組みを見ていきましょう。仕組みそれぞれに決まりがあるので、法則ごとに紹介します。

磁界・電流の向きの決まり「アンペールの法則」

導線に電気が流れると、導線の周囲を回転する形で磁界が発生します。そのときの磁界の大きさや、回転方向に関する決まりを「アンペールの法則」といいます。

アンペールの法則のうち、電流の向きと磁界の回転方向が常に一定であることを示したのが「右ねじの法則」です。右ねじの法則は手を使うと分かりやすいため、子どもと一緒に試してみてもよいでしょう。

【図1】右ねじの法則。電流の方向と磁界の向きの関係性を右手で表すとこうなる。

 

まずは図のように、右手の親指を電流に見立てて一方向に突き出し、他の指を電流の周囲に発生した磁界に見立てて握ります。この状態で親指を別の方向に向けると、他の指も連動して向きが変わることが分かるでしょう。

電流の向きと磁気の回転方向にも、同じことがいえるのです。

誘導電流の向きの決まり「レンツの法則」

電磁誘導によって生じる誘導電流の向きは、磁石を近づけるときと遠ざけるときとで変化するほか、磁石の極性によっても変わります。

例えば磁石のN極をコイルに近づけると、コイルはその磁石を遠ざける方向に磁界を発生させます。その後、近づけた磁石を遠ざけたり、N極をS極に変えたりすると、コイルは磁石を引きつけようとして磁界の向きを変えるのです。

【図2】コイルと磁石を近づけると磁石の方向に磁場が生じ、誘導電流の流れる方向もそれによって決定される。
【図3】[図2]の場合の電流と磁場の方向の関係を右手であらわすとこうなる。真っ直ぐの電線の場合を考えるときには[図1]で、ぐるぐる巻いた電線(コイル)の場合を考えるときには上の[図3(親指が磁場の向き、4本の指が電流の向き)]で考えるとわかりやすい。

右ねじの法則にあるように、磁界と電流の向きは常に一定です。そのため磁界の向きが変われば、誘導電流の向きも変わることが分かります。このように、誘導電流の向きを示す決まりを「レンツの法則」といいます。

誘導電流の大きさ・量の決まり「ファラデーの電磁誘導の法則」

「ファラデーの電磁誘導の法則」は、誘導電流の大きさ・量に関する決まりです。ファラデーはイギリスの有名な物理学者で、電気や磁気の分野の研究に大きく貢献した人物です。

彼は電磁誘導によって生じる電流の大きさ・量が、磁石を動かす速さやコイルの巻き数に比例することを発見し、計算するための公式も作りました。その公式は一般的に「V=N×(dΦ/dt)」のように表されます。

Vはコイルに発生した電圧の大きさ、Nはコイルの巻き数です。「dΦ/dt」は、コイルの磁束(磁界内の磁力線の量)が時間あたりにどれほど増減するかを示します。

誘導電流を利用した機器を見てみよう

電磁誘導の仕組みは、身の回りのさまざまな機器に活用されています。誘導電流を利用している代表的な機器を見ていきましょう。

発電機

日々の生活に欠かせない電気は、電磁誘導の原理を利用して作られています。コイルの周囲で素早く磁石を動かすと、それだけたくさんの誘導電流が発生し、取り出して使えるようになります。

ただし磁石を動かし続けるためには、大きなエネルギーが必要です。そこで火力や水力を用いて磁石の付いたタービンを回し、電磁誘導を促す「発電機」が作られました。

例えば水力発電所では、水が高いところから落ちるときの力を利用してタービンを回しています。火力や原子力発電所は、水を熱して生じる水蒸気の力を利用しています。

黒部ダム。黒部川水系には、ダムと12の水力発電所がある。水力によって発電した電気は主に関西方面に送られる。

ICカード

通勤・通学・買い物などで、SuicaやPASMOのようなICカードを使っている人も多いでしょう。カードを読み取り機にかざすだけで、改札を通れたり買い物できたりするのはなぜでしょうか。

ICカードの中には、ICチップと呼ばれる電子機器と、コイルと同じ役目を持つ電気回路が入っています。一方、改札やレジなどの読み取り機は、常に磁界を発生させています。

そのためICカードを読み取り部分に近づけると誘導電流が流れ、ICチップが起動して読み取り機との間でデータをやり取りできるのです。

ワイヤレスのスマホ充電器

ワイヤレスタイプのスマホ充電器にも、誘導電流が使われています。充電パッドの中には送電用のコイルが入っており、ケーブルをコンセントに挿すと電気が流れて磁界が発生します。

ここに受電用コイルが入ったスマホを近づけると電磁誘導が起こり、発生した誘導電流がバッテリーに蓄えられる仕組みです。

スマホのワイヤレス充電

同様の技術は、電気自動車のバッテリーにも応用が期待されています。車を特定の場所に止めておくだけで充電できれば、電気自動車の使い勝手は大きく向上するでしょう。

誘導電流を活用したものを探してみよう

誘導電流は、電磁誘導によって生じる電流です。電磁誘導は磁界の変化によって電流が発生する現象であり、発電や充電など、さまざまなシーンで使われています。誘導電力を利用したものを探し、実際に使ってみると、難しく感じがちな物理や電気の学習をより楽しめるかもしれません。

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構成・文/HugKum編集部

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