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お金の3つの役割とは
みなさんはお金の役割を考えたことがありますか? お金には3つの役割があります。
買い物をするときの「ほしいものと交換する」役割、商品の価値を理解するための「ものの価値の基準になる」役割、そして必要なときに使えるようにする「財産として蓄える」役割の3つです。
お金は誰が造っているの?
さて、お金はいったい誰が造っているのでしょう? お金の信用を保つために、多くの国ではお金を造ることができる組織を定めています。
日本の場合、十円玉、百円玉などの硬貨は政府が造ります。そしてお札(紙幣)は中央銀行と呼ばれる銀行、日本では日本銀行(日銀)が造っています(中国では中国人民銀行、アメリカでは連邦準備制度理事会(FRB)、ユーロ圏では欧州中央銀行、インドではインド準備銀行)。お札は正式には「日本銀行券」といいます。日銀は政府や民間銀行のための特別な銀行で、個人が口座を持つことはできません。
お札のデザインが変わるのはなぜ? 2024年登場の新しいお札の顔は?
来年2024年にお札のデザインが変わります。
新しい一万円札の顔にはNHKの大河ドラマの主人公にもなった実業家、「日本資本主義の父」と呼ばれる渋沢栄一。五千円札は、7歳の時に日本初の女性留学生としてアメリカにわたり、明治時代に日本の女子教育の基礎をつくった津田梅子。千円札は、世界的な細菌学者で、伝染病の研究に大きな功績を残した北里柴三郎。皆さん、明治時代に活躍した人物ですね。
では、なぜお金のデザインはときどき変わるのでしょうか?
いちばん大きな理由は、「偽造防止」。つまり、偽札を造らせないため。私たちは有名な人の顔を見慣れています。ちょっとでも違った感じを受けると「偽札じゃないか?」と気づくことにつながると考えられているのです。偽札だとすぐに見破られないものを造るには、大変な技術や設備が必要です。お札造りの技術が上がれば上がるほど、悪いことを考える人が減ると期待されています。また歴史上の人物が描かれることをきっかけに、その人物の歴史ついて、あらためて多くの人に理解してもらいたい、という思いも込められているのです。
偽札造りが、重い罪になるワケとは
ではなぜ、偽札が出回ってはいけないのでしょうか? ズルをしてお金を手に入れるのは悪いことはもちろんですが、他に何か影響があるのでしょうか?
お札1枚を造る費用はたった二十数円です。その紙になぜ1万円という価値があるのか?
理由は、その国の政府が「1万円の価値があるのだ!」と言っているからであり、使う側もそれを「信じている」からなのです。偽札が使われるということは、国が保証しているお札の価値が怪しくなり、国と使う側の信頼関係が壊れてしまうということ。つまりお札の価値がなくなってしまうのに等しいですね。人々はそれが本物のお札かどうか不安になり、やがて経済は大混乱になり、最後には国の信用が地に落ちるのです。
だから偽札造りは重い罪になります。面白半分にコピーをするだけでもダメ。コピー機が止まったり、警報音が鳴ったりすることもあります。
日本の偽造防止技術は世界トップクラス
さて、2024年に一新されるお札の肖像画。偽造されにくい顔というのはあるのでしょうか?
くわしいことは公表されていませんが、できる限り精密な写真や肖像画が手に入れることができる人物であることは、大切な条件となっているようです。
印刷のもととなる絵は、細かな部分が作り込まれたものになりますから、たくさんの情報が必要。かつてはヒゲやシワがあった方が細かい特徴を出しやすいといわれていて、若い人より高齢者、肌がツルっとしている女性よりごつごつした男性の方が向いているとされていました。そして女性で初めてお札になったのは、今の五千円札、明治の作家、樋口一葉です。彼女は24歳の若さで亡くなったのでシワも、もちろんヒゲもない。偽造防止対策にはかなり苦労したといいます。
日本の偽造防止の技術は世界でもトップクラスです。「すかし」という技術で光にかざすと絵が浮かび上がったり、インクが少し盛り上がっているところがあったり、特殊なインキが使われていたりとさまざまな技術が注ぎ込まれています。この機会にぜひお札をよく観察してみてください。
キャッシュレス化が進んで、現金がなくなるってホント?
一円玉を1枚造るのに約3円、五円玉は約10円、十円玉は約13円かかっています。
お札の場合は造る費用は二十数円でも、偽造防止のためのコストがかかります。また銀行のATMを管理するための人件費や管理費もかかります。お金を造り、お金をやりとりするには、たくさんのお金がかかるんです。
キャッシュレスになれば、そういうお金が不要になります。だからクレジットカードだけでなく、電子マネー、バーコード決済など現金を使わない支払いが増えているのです。
さて、世界にはほとんど現金を持たずに生活できる国がたくさんあります。2022年の調査によると、お隣の韓国では93.6%、中国では83%、そしてオーストラリア、シンガポール、イギリスでは6割以上がキャッシュレス決済になっています。
一方日本では、2021年にキャッシュレス支払いがようやく3割を超えました。しかし世界と比べるとキャッシュレス化は進んでいません。現金がすぐになくなることはないけれど、世界的な傾向から考えても、硬貨やお札がどんどん減っていくことは確かでしょう。
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