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サッカー選手引退後、腸内細菌研究の会社を設立
元サッカー日本代表の鈴木啓太さん。引退後、腸内細菌の可能性に着目し、株式会社AuB(オーブ)を設立。意外な転身に、驚いたサッカーファンの方も多かったのではないでしょうか。腸内細菌に着目したのは、幼い頃からのお母さまの健康管理が大きく影響していたそう。詳しくお話いただきました!
毎日うんちの状態を報告していた幼少時代
(写真は子ども時代の鈴木啓太さん/Instagramより)
―鈴木さんは、お母さまの影響で幼少期から腸に気を配っていたと聞きました。どんなことをしていたのですか?
鈴木さん:子どもの頃、母親から「腸は大事だから、毎日うんちを見なさい」と言われて育ってきました。小学生の僕は「母親はいったい何を言っているんだろう…」と思いながらも「今日はこんなうんちだった!」と報告するのが日課でした。高校生のときには、腸内細菌の入ったサプリメントも与えられていました。友人から「何飲んでるの?」と聞かれたときには、正直に言っても分かりづらいかなと思って「ビタミン剤」と答えていましたね。
―腸内細菌への理解が広まってきたのはごく最近のこと。お母さまは進んでいらしたのですね!
鈴木さん:腸が大事という話はどこかで聞いてきたのだと思いますが、シンプルに子どもの健康に気を配る中での行動だったのだと思います。皆さんも、お子さんが産まれたときはうんちで体調を観察していませんでしたか? 母はそれを続けながら「自分の作った食事で健康を保てているか」という答え合わせをしていたんだと思います。
便を見る以外にも、お腹を温めるように言われていて、食事の後は必ず温かい緑茶を飲み、発酵食である梅干しを食べていました。これは、現役時代に海外へ遠征に行った際も続けていましたね。
やってみないと分からない。考えすぎずに挑戦する
―引退後、会社を立ち上げたきっかけは何ですか?
鈴木さん:プロサッカー選手になってからも、発酵食品を意識的に摂り、お腹を冷やさないなどの習慣を続けていました。当時、科学的なことは分かっていませんでしたが、お腹の調子が良いときはパフォーマンスが良かったり、トレーナーの方々から筋肉の状態が良いと言われたりするな、とぼんやり思っていました。
引退が決まった頃、その話をトレーナーの方にしたところ、腸内細菌について専門的に調べている方を紹介していただいて。早速お会いして話をしたところ、アスリートなど特徴的な被験者の腸内細菌を調べると、大きな発見につながると教えていただいたんです。「僕の周りは特徴的な被験者だらけじゃないか!」と気づき、本格的に調べてみようと会社を立ち上げました。
―子どもの頃や現役時代に、なんとなく大事だと思ってきた点と点が、線でつながったのですね。でも、サッカー選手から新規事業の立ち上げの転身には勇気が必要だったのではないですか?
鈴木さん:物事は、知りすぎてしまうと一歩踏み出せないことがあると思っています。例えば、サッカー選手という職業。最初から1万人に1人しかなれないと知っていたら、挑戦していなかったかもしれません。でも、その確率が自分に当てはまるか、そうでないかはやってみないと分からない。
当時、自分よりもサッカーがうまい選手はたくさんいたし、足の速い選手もたくさんいました。それでも、自分はサッカー選手になれた。この経験から、やりたいことを、どうしたらできるんだろうと素直に考えることの方が重要だと思うようになりました。腸内細菌は人間の健康を保つ上で絶対に必要だし、将来的には誰かが絶対に調べる分野。それならば自分がやりたいという思いでしたね。
うんちを集めることに、理解を得られるまで
―胸に突き刺さりました…! 会社を立ち上げてから、苦労したことはありますか?
鈴木さん:現在、約1,000人(45競技)のアスリートから、2,200の検体を集めてデータを活用させていただいていますが、最初は理解してくれる方ばかりではありませんでした。
今でこそ腸活や腸内細菌の検査が一般的になりましたが、当時は皆無。「うんちを何に使うのか」と聞かれ「研究のためです」と言っても信じてもらえないわけです。
1~10まで説明し、納得してもらうまでに時間がかかりました。8年経った今では、自分のうんちを調べて欲しいと申し出ていただく機会も増え、やってきたことが積みあがってきたなと感じています。
―地道な活動を行っていたのですね。
鈴木さん:今思えば、よくこんな大変な領域に手を出したなと思うこともあります。でも、物事って最後まで見ないと分からないじゃないですか。
サッカー選手も、華やかそうに見えて大変なことがたくさんありました。その渦中に、子どもの頃の自分に会えたとしたら「啓太、やめておいた方がいいよ」と言っていたかもしれません(笑)
でも、やり遂げた今思うのは、大変なことはあったし、全部の夢は叶わなかったけど、楽しかった。今なら子どもの頃の自分に「頑張れよ」と自信を持って言ってあげられると思うんですよね。
事業でも、最近ではアスリートの方から「AuBの商品は信頼できるから、もっとこんな商品を作って欲しい」と言われることがあります。アスリートはドーピングがあり、口に入れるものに人一倍気を遣っているもの。この言葉は信頼の証と感じ、やってきて良かったと感じています。
後編は、子どもの腸活方法やプライベートのお話も!
鈴木さんの物事の考え方には学びだらけで、メモする手が止まりませんでした! 後編では、子どもの腸活の始め方や、普段の食事で気を付けていることなどをご紹介します。
AuB(オーブ)のWEBサイトはこちら≫
構成/HugKum編集部 写真/五十嵐美弥 取材・文/寒河江尚子