どんど焼きとは?
新年の慌ただしさが一段落した頃、各地で「どんど焼き」と呼ばれる行事が行われます。小正月(こしょうがつ)に行われる神事の一種で、大人はもちろん、子どもも参加が可能です。
どんど焼きではどのようなことをするのでしょうか? 地域ごとの呼び名や行事のルーツについて理解を深めましょう。
正月飾りを焚き上げる小正月の神事
どんど焼きは、「小正月」に行われる神事です。小正月とは、旧暦の正月に当たる日で、現在では1月15日を中心とする3日間を指すのが一般的です。なお、元旦や1月1~7日は「大正月(おおしょうがつ)」と呼ばれます。
どんど焼きでは、田んぼや広い空き地、神社の境内などにやぐらを組み、持ち寄った正月飾りや書き初めなどを燃やします。一説では、年神様が空に上っていくのを炎とともに見送る意味があるそうです。
鏡開きをした餅や団子を焼いて食べる地域もあり、老若男女が集うコミュニティーの機能も果たしています。どんど焼きが行われるのはおおむね1月15日前後ですが、節分の前後や1月6・7日に行われるケースも多く、地域によって差があるのも特徴です。
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ルーツには諸説ある
どんど焼きのルーツは諸説ありますが、平安時代の宮中で行われていた「三毬杖(さんぎちょう)」に関わりがあるといわれています。
三毱杖は、毬打(まりうち)の杖を3本立て、扇子や短冊などを添えて焼く悪魔払いの儀式です。後に正月飾りを集めて焼く民間行事になり、「左義長(さぎちょう)」と呼ばれるようになりました。
また、国家安泰(こっかあんたい)・五穀豊穣(ごこくほうじょう)を願う古代の伝統行事をどんど焼きの原点とする説もあります。
奈良県御所市(ごせし)で行われる「茅原(ちはら)大とんど」は、雄雌一対(しゆういっつい)の巨大な松明を焼き尽くす行事で、その始まりは1,300年前の飛鳥時代にさかのぼるようです。
出典:祐徳稲荷神社 人形供養・お焚き上げサービス「神社のお焚き上げ」
呼び名は地域によって異なる
小正月に行われるお焚き上げの神事は、地域によって呼び名が異なります。東北地方では「どんど焼き」「どんと焼き」と呼ぶ人が多いですが、京都・滋賀・岐阜・愛知や北陸地方では「左義長」が一般的です。
また、長野・山梨・群馬・埼玉・神奈川では「道祖神祭(どうそじんさい)」、九州地方では「鬼火焚き」「ほうげんきょう・ほんげんきょう」、関西地方や中国地方では「とんど焼き」と呼ばれるケースもあります。
なお、小正月のお焚き上げを「どんど焼き」と呼ぶようになったのは、燃え方に関係するといわれています。燃え盛る炎が神秘的で尊く、「尊や尊や(とうとやとうとや)」との囃子詞(はやしことば)がなまって「どんど」になったようです。その他に、炎がどんどんと燃える様子から、どんど焼きになったという説もあります。
どんど焼きの基本的なルール
どんど焼きでは、「燃やせるもの」と「燃やせないもの」が区別されています。無用なトラブルを避けるためには、基本的なルールを事前に把握しておくことが大切です。
燃やせるもの
どんど焼きでは、基本的に以下のようなものを燃やせます。
●正月飾り(松飾・注連縄・御神矢など)
●お守り
●お札(おふだ)
●書き初め
●おみくじ
正月飾りに付いている不燃物(プラスチック・ガラス・針金など)は、事前に取り外しておくのがマナーです。かんきつ類のダイダイ(橙)やカキ(柿)、餅といった「食べられるもの」も外しておきましょう。
「だるまを燃やすのは縁起が悪いのでNG」「神棚のお焚き上げも可能」など、神社や地域によってルールが異なります。
燃やせないもの
どんど焼きでは、不燃物は燃やせません。正月飾りや神社でもらったもの以外も、受け付けてもらえない可能性が高いでしょう。
●仏具
●人形
●陶器の置物
●写真
●のし袋
●年賀状
●衣類・雑貨
人形を燃やせるかどうかは、神社や地域によって異なります。受け付けてもらえる場合でも、ケースから本体を取り出した上で、プラスチック・ガラス・針金を取り外しておくことが大切です。
どんど焼きはあくまでも神事であり、ごみ処分の場ではありません。くれぐれも、衣類や生活雑貨などの不用品を持ち込まないようにしましょう。
どんど焼きに参加する際の留意点
どんど焼きは小正月の恒例行事ですが、中には初めて参加する人もいるのではないでしょうか? 正月を気持ち良く締めくくるためにも、どんど焼きに参加する際の留意点を確認しておきましょう。
地域ごとの決まりを守ろう
どんど焼きは、神社の氏子(うじこ)や町内会が関わるケースが多く、それぞれの役割分担が決まっています。参加者も地域ごとの決まりを守り、一連の神事がスムーズに執り行われるように協力する意識が大切です。
基本的に、お守りやお札も受け付けてもらえますが、「他の神社や寺院でもらったもの」の持ち込みが禁止されているケースもあるようです。初めて参加する人は、神社や地域コミュニティーのWebサイトなどで詳細を確認しておきましょう。
汚れてもよい服装で参加しよう
どんど焼きは、わらや青竹でやぐらを組んで点火するため、一般的なたき火よりも火が高く燃え上がる傾向にあります。火の粉が飛んで服に穴が開いたり、煙やすすで汚れたりする恐れがあるため、汚れてもよい服装で参加しましょう。
食べ物が振る舞われる場合は、手袋・軍手があると、すすが手に付くのを防げます。消火の際は地面がぬかるむため、長靴のような汚れてもよい靴で参加するのがベターです。
どんど焼きの灰を自宅の庭などにまくと、家内安全や無病息災の御利益が期待できるといわれています。灰を持ち帰りたい人は、熱に強い素材の容器を持参しましょう。
神様に感謝の気持ちを伝えよう
どんど焼きは、家に来た年神様を見送り、五穀豊穣や無病息災を願う神事です。年神様に感謝する心を忘れないようにしましょう。
古来、年神様は正月に高い山から下りてくると考えられていました。年神様の来訪を願うため、大みそかに家の大掃除をし、玄関付近に門松・しめ縄などを飾ります。正月飾り焚き上げる炎とともに年神様が山に帰ると考え、どんど焼きを神聖な行事と見なす地域は少なくありません。
また、どんど焼きには以下のような御利益があるといわれています。
●どんど焼きの火で焼いた餅を食べる:無病息災・虫歯にならない
●どんど焼きの灰を自宅の庭にまく:無病息災・家内安全
●書き初めを燃やした火が高く燃える:学業成就・字がうまくなる
親子で参加する場合は、これらの御利益を子どもに伝えておくのもおすすめです。
出典:正月飾りを燃やす | February 2023 | Highlighting Japan
どんど焼きに参加できないときは?
どんど焼きに参加できなかった場合、正月飾りやお守り・お札はどのように処分すればよいのでしょうか? 主な方法としては、「自宅で処分する」「事前回収や郵送を利用する」の2パターンがあります。
自宅で処分する
正月飾りは基本的に、家庭ごみとして自宅で処分できます。ただし、他のごみと混ぜずに、正月飾りだけを単独でビニール袋に入れる点に注意が必要です。以下の手順でお清めをし、感謝の気持ちを伝えて処分しましょう。
1.新聞紙の上に正月飾りを置く
2.お清めの塩を左・右・左の3回に分けてかける
3.そのまま新聞紙で包み、燃えるごみとして処分する
お守りやお札は自宅で処分せずに、神社に設置されている「古神札納所(こしんさつおさめじょ)」に返却します。なお、門松のような大きい正月飾りは処分できない可能性もあるので、事前に自治体のルールを確認しておきましょう。
事前回収や郵送を利用する
どんど焼きに参加できない人のために、正月飾りの事前回収を受け付けるケースもあります。費用の有無や回収場所などの詳細は、どんど焼きを主催する組織もしくは神社のWebサイトを確認しましょう。郵送の場合、送料や箱代は利用者が負担するのが基本です。
事前回収や郵送を利用する際、以下のような行為は控えましょう。
●回収日時や回収場所を守らない
●着払いで郵送する
●正月飾りの不燃物を取り除かない
●自分で処分できない危険物などを送る
これらの行為は主催者だけではなく、お焚き上げをする人にも迷惑がかかります。気持ち良く正月を締めくくるためにも、ルールを順守する配慮が大切です。
どんど焼きに感謝と願いを込めて
どんど焼きは、年神様への感謝と一年の無病息災を祈願する神聖な行事です。「左義長」「道祖神祭」「どんと焼き」など、地域によって呼び名はさまざまですが、小正月の恒例行事として全国各地で行われています。
老若男女が参加するどんど焼きは、地域の人々との交流を深める良い機会ともいえます。地域ごとに決められたルールやマナーをしっかりと守り、晴れやかな気持ちで一年をスタートしましょう。
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構成・文/HugKum編集部