接着剤を安全に使うには
瞬間接着剤×布でやけどに!
軍手やストッキングなど布類のように染み込みやすいものに対して、瞬間接着剤を絶対に垂らす事がないように気をつけてください。布類が持っている水分と反応し、瞬間接着剤が化学反応を起こすことによる高温の熱が発生する可能性があります。
瞬間接着剤の接着方法は、急激な化学反応を起こすことによるものなので、時には煙が出るほど温度が上がります。大きなやけどにつながる可能性も高いため、これは覚えておきたいです(説明書にも記載があります)。
ちなみに、「スーパーX」のように時間をかけて接着を行う製品の場合は、化学反応による熱は緩やかなため、瞬間接着剤のようなことは起きません。
換気をする
最近は技術改良により減ってきていますが、接着剤に含まれる溶剤により気分が悪くなってしまう事があります。すぐに健康に被害が出るほどではありませんが、換気をしながら使いましょう。
食品や口が触れるところには使わないで
大切なマグカップやお皿が割れてしまった……。そんなときに接着剤を使いたくなりますがちょっと待って!
接着剤は化学原料を使っています。マグカップの取っ手のような口や食べ物が触れない箇所に接着剤を使うならば大丈夫ですが、食べ物や口をつけるところに使うのは100%の安全の保証ができません。
セメダインでは製品の安全性も確認しています。ですが、食べる事ができる食品でもアレルギーを持つ方がたくさんいらっしゃるということは、食べ物ではない化学薬品を使っている接着剤を少量でも口にしたときに「何かしらの悪い影響が出るかもしれない」と考えています。
可能性を0にすることはとても難しく、例え影響が少数の人にしか出ないものでも「人体に影響はありません」と断言することはできないのです。
夏場に靴底が剥がれるわけ
毎年毎年「史上最高気温更新」という言葉を耳にしているような最近の暑い夏。炎天下の中歩いていたら靴底が剥がれてしまったという経験はありませんか?
靴底はゴム系の接着剤を使用しています。ゴム系の接着剤は水分に弱いという性質があります。地面が持っている熱に加えて、足の汗による湿度が加わり、「熱」と「水分」のダブルパンチで剥がれやすくなってしまうのだそうです。
接着剤の三種の神器
セメダインの三種の神器とも言える商品は「木工用」「スーパーX」「瞬間接着剤」。これらはどこのお店にもあるような定番商品となっていて、お買い求めされる方も多いのだそうです。では、それぞれをどのように使い分けたら良いのでしょうか?
まずは「木工用」が使えるかチェック
紙や木、革、石など水を吸うものをつけるならば「木工用」をまずは使ってみましょう。
「木工用」は水分を吸い込むもののみくっつける事ができます。なので水分を吸い込まないプラスチック・金属・タイルなどには使えません。
木工用は水に樹脂を溶かし込んで作っている接着剤です。70〜80度の温度下では樹脂が柔らかくなってしまい剥がれてしまいます。また、また長時間水に浸しておくとが水を吸って剥がれてしまうので注意が必要です。
次に考えるのは「スーパーX」シリーズ
木工用が使えない素材ならば「スーパーX」が使えるか確認してみましょう。弾性接着剤という、固まった後も弾力のあるタイプの接着剤です。接着できるものや固定されるまでの時間が異なり、シリーズ化されています。スーパーXシリーズのいずれかの製品を使えばどのような素材でも接着する事ができると言っても過言ではないのかもしれません。なので、木工用が使えない素材や、貼り付けたい素材の詳細がわからないときは「スーパーX」を試してみましょう。
なお、スーパーXは「熱」・「水」・「衝撃」には強いのですが、弾力があり柔らかく固まるため、例えば重いものを垂直に貼り付けた場合に、自分の重さが原因で少しずつ長い時間をかけて下がってきてしまうこともあるそうです。
短時間で接着したい時には「瞬間接着剤」の出番
瞬間接着剤は「固いもの同士で面積が小さいものを素早くつける時」に使うと一番能力を発揮します。
逆に、広い面を接着するのを苦手としています。それは瞬間接着剤は量が多いと固まりづらいという性質があるからです。適量は10円玉1枚の面積に対して1滴。広い部分の場合はその量を参考に、点々と離して数箇所につけていくのがコツです。
また、凹凸の大きなものや染み込みやすいもの(例えば紙など)も瞬間接着剤が苦手とする素材です。
スーパーXだけでも種類があります
スーパーXシリーズにはこのようなものがあります。それぞれの特徴を知って使うとより心強い味方になりますね!
スーパーX
オーソドックなタイプ。固まるまで時間的余裕があるので、広い面積を接着したい際に有効です
スーパーX2
スーパーXの便利さはそのままに、素早く小物を貼りつけたい場合に適しています。
スーパーXゴールド
スーパーXの便利さはそのままに、高透明・シリーズ最速の接着スピードを実現しています。
スーパーXハイパーワイド
接着剤が着きにくいポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)も固定できます(ポリエチレンやポリプロピレンはフードコンテナやレジャーシートなどに使われる樹脂)。プラスチックであることはわかるけれど、どの樹脂なのかがわからない場合にはこの接着剤を使ってみてください。貼り付く速度は速すぎないので広い面積にも使えます。
スーパーXデュオ
1分でガッチリと固まる接着剤。2つの液を使用することにより表札やレンガなどを貼り付ける事ができます。ただし、2つの液を塗るための面積が必要になります。
スーパーXナチュラ
バイオマス原料(ホタテの貝殻など)を50%以上使っていて、環境に優しいながらスーパーXと同等の性能を持っています。
接着剤の困った、こんな時はどうする?
瞬間接着剤がつかないときは?
「瞬間」と名前がついているのにくっつかないし、貼り合わせた部分が接着したいものはツルツル滑る……どうして?
瞬間接着剤をつける量が多すぎた可能性があります。大体10円玉の面積に1滴とごく少量でOK。本当に少量でしっかりとくっつくのが瞬間接着剤の力なのです。
瞬間接着剤で指など皮膚同士がくっついてしまったら?
人間の皮膚には温度や適度な水分、そして表面の指紋などの凹凸があって瞬間接着剤が最もきれいにつく条件が整っています。そんな時には?
解決方法は2つ。
瞬間接着剤は熱・水・衝撃に弱い性質を利用しましょう。1つ目は40〜50℃のぬるま湯のなかでくっついた部分を軽く揉むようにしてみてください。瞬間接着剤は薄いガラスのように固まるので、温度が高い場所に置くことで接着の力を弱くして、水(ぬるま湯)の中で揉むことで刺激が伝わり剥がれやすくなります。
もう一つは、アセトンが入った除光液を使う方法です。この方法はぬるま湯の方法より早く剥がせますが皮膚への刺激も強いそうなので、特にお子さんの場合は前述のぬるま湯で行うのをお勧めします。
開発が一番難しいのは家庭用
工業用・建築用の接着剤も作っているセメダイン。時には材料や詳細を明かせない新素材をつけるための接着剤の開発を依頼されることもあるそうです。その場合はさまざまな材料で作られた接着剤を試すことで依頼主の要望にあった製品を開発していきます。長い時には開発に数年間かかるので、忍耐力との戦いとも言えそうです。
また、意外なことに工業用や建築用の接着剤を基にして家庭用の接着剤が作られることが多いのだそうです。現在の主力製品である「スーパーX」も元々は工業用として作られた製品でした。
そして、一番開発が大変なのも家庭用の接着剤です。それは、使われる環境の多様性にあります。工業用や建築用の接着剤は特殊な配合や強い成分が入っていますが、使用する用途が決まっており、使う人が専門の知識を持った上で使用します。ですが、家庭用では使用方法が多岐に渡ります。また接着剤を使う方も接着されたものを使う方も安全に使えなければなりません。例えば、赤ちゃんがつけるおむつのテープに使用する接着剤は赤ちゃんが触れた場合でも安全でなければなりません。
時間をかけて開発され、アイデアと技術で商品化し、製品となって家までやってくると思うと、ありがたみを改めて感じますね。
インタビューを終えて
私たちの生活の中になくてはならない存在となっている「接着剤」。使用されている例を伺うたびに「え!これもそうなんですか!」と驚いてばかりでした。
創業者の目指した、「質の良い接着剤の開発」が創業100年を超えてこれからも続いていくのかと考えるととても応援したくなりました。
セメダインインタビュー【前編】はこちらから
文・構成/ふじいなおみ