ランドセルが世界の人気者に!? “日本らしい”“サステナブル”と評価される海外のランドセル事情を土屋鞄にインタビュー

メーガンさんのランドセルは、ナスカンに飾ったチェリーがアクセント。

入学シーズンが近づき、新一年生がいるご家庭では、ピカピカのランドセルが家で出番を待っているのではないでしょうか。そんな小学校生活になくてはならないランドセル。実は今、日本を飛び出して海外で、しかも大人の間でも人気になっているのをご存知ですか? その理由や日本では見かけない、愛用者のおしゃれな使いこなし術をご紹介します。

今、日本のランドセルが海外でも大人気!

革の質感や色味が美しい土屋鞄製造所のランドセル。
革の質感や色味が美しい土屋鞄製造所のランドセル。

日本の小学生が背負うランドセルですが、近年では海外の方にも愛用者が増加中。工房系ランドセルメーカーの老舗『土屋鞄製造所』では2020年から海外での販売を開始し、現在は2023年4月にオープンした『LaLaport 台中店』を入れると、直営店4店舗(台湾3店舗、香港1店舗)を展開しています。現地の子どもが使うのはもちろん、なんと大人の愛用者も多いんだとか。今回は、土屋鞄の海外事業本部本部長・佐藤秀俊(ひでとし)さんに、人気の理由やどんな風に使われているのかお話を聞きました。

海外でランドセル販売を始めた理由は?

 佐藤さん「理由は大きく3点あります。日本でのランドセルは小学生のスクールバックという位置づけのため、少子化によって今後は国内のランドセル市場は縮小傾向になります。マーケットが衰退していくことが、目に見えてしまっているいうことが1つ目ですね。

2つ目はコロナ禍前にインバウンドが伸びたとき、我々の店舗にも海外のお客さまがたくさん来てくださいました。ただ、ご存知の方も多いと思いますが、弊社は受注生産という形をとっているため、当時はその場でお渡しできるものがなかったんです。それを機会損失だと感じていました。

3つ目は土屋鞄を世界的なブランドに成長させていきたいという会社としての理念です。これら3つの理由から、海外販売を開始しました」

日本国内の土屋鞄では一部の店舗を除きランドセルと一般鞄とで店舗を分けていますが、海外店舗では同じ店内に大人用の一般鞄とともにランドセルも販売しているそう。ECサイトでは海外発送にも対応するようになり、海外の愛用者が一層増えています。

2023年オープンの『LaLaport 台中店』。佐藤さんは「中華圏の方は在庫がないと購入意欲がわきにくいと聞き、オープン当時は用意できる在庫をかき集めて陳列していました」と、当時の裏話も教えてくれました。
2023年オープンの『LaLaport 台中店』。佐藤さんは「中華圏の方は在庫がないと購入意欲がわきにくいと聞き、オープン当時は用意できる在庫をかき集めて陳列していました」と、当時の裏話も教えてくれました。

“日本らしい” “サステナブル” 大人も惹かれるランドセルの魅力とは?

 日本では当たり前のように存在しているランドセルが、海外の方からも評価されているとは驚きです。では、その魅力はどんなところにあるのでしょう。

No.33、34アンティークモデル 牛革 黒・レンガ
昔ながらのデザインが人気の土屋鞄『No.33、34アンティークモデル 牛革 黒・レンガ』

海外の方にはランドセルのどんなところが刺さっているのでしょう?

佐藤さん「大前提としてほかにはないデザインがうけていると思います。大人の方でも、ユニークなファッションアイテムとして、子どもと同じランドセルを普段から使っている方もいます。

海外でのランドセル人気を受けて、様々な体格の方が背負える肩ベルトを備えた、グローバルウェブサイト限定商品『The Lauderdale Randseru』の販売も開始。大人が心地よく、ファッション性も高く背負えるように、肩ベルトを従来の1.3倍の長さに。黒と赤の2種販売しています。
海外でのランドセル人気を受けて、様々な体格の方が背負える肩ベルトを備えた、グローバルウェブサイト限定商品『The Lauderdale Randseru(ローダーデール・ランドセル)』の販売も開始。大人が心地よく、ファッション性も高く背負えるように、肩ベルトを従来の1.3倍の長さに。黒と赤の2種販売しています。

佐藤さん「また、日本文化の象徴的なアイテムとして魅力を感じている方も。小学生がランドセルを背負って集団で登下校する光景は、海外では見られないもの。それを日本に来て見かけた方は、印象に深く残るようです。

今の30代、40代の方だと『ドラえもん』や『ちびまる子ちゃん』など日本のアニメや漫画を見て育った世代が多く、特に台湾や香港では自分の子どもに背負わせたいと購入される方も多くいらっしゃいます。

このほか、サステナブルであることにも注目が。私は海外に住んでいた経験があり、子どもたちが小学生のころは毎年のようにナイロン製のバッグを買い替えて使っていました。でもランドセルはとても丈夫で、同じものを6年間毎日使いますよね。子どもに物を長く大切に使うということを教育的観点で教えたい、という方も一定数いらっしゃいます」

中華圏、欧米などを含めて、海外で人気なのは赤色のランドセルだとか。男の子は黒、女の子は赤などの固定観念がないので、それぞれが好きな色を自由に選んでいるそう。
中華圏、欧米などを含めて、海外で人気なのは赤色のランドセルだとか。男の子は黒、女の子は赤などの固定観念がないので、それぞれが好きな色を自由に選んでいるそう。

個性が光りまくり!海外の方のランドセル愛用術!

 実際に海外在住の皆さんはどんな風にランドセルを取り入れているのか、その使い方を一挙ご紹介。どの取り入れ方もとってもおしゃれで、さらに機能を活かした使い方は必見です。

音楽家トーマス・ローダーデールさんは長年愛用

『ローダーデール・ランドセル』を背負いながらのピアノ演奏。
『The Lauderdale Randseru(ローダーデール・ランドセル)』を背負いながらのピアノ演奏。

国際的オーケストラバンド『ピンク・マティーニ』のリーダー・創始者のトーマス・ローダーデールさんはランドセルの愛用者で赤色ランドセルを複数所有。ランドセルはツアーで世界中を回るトーマスさんのトレードマークとなっています。

ランドセルにいつも詰め込んでいるのは、日記や作詞作曲用のノート、フィルムカメラ、鉛筆など。これらはすべて彼の創造性に欠かせないもの。マチがあるので、物の出し入れも簡単です。
ランドセルにいつも詰め込んでいるのは、日記や作詞作曲用のノート、フィルムカメラ、鉛筆など。これらはすべて彼の創造性に欠かせないもの。マチがあるので、物の出し入れも簡単です。

常に整理整頓ができるから日常にぴったり

メーガンさんのランドセルは、ナスカンに飾ったチェリーがアクセント。
メーガンさんのランドセルは、ナスカンに飾ったチェリーがアクセント。

アメリカ・ポートランドでフローリストとして活躍するメーガンさんは、真っ赤なランドセルを愛用。スタイルと実用性を兼ね備えているから、花バサミやトゲ取り、さらにはツールボックスの収納にも最適。

メーガンさん「フロントのファスナー付きポケットは、花バサミのほか、財布やノートなどの身の回り品も収納できるので、常に整理整頓ができ、日常生活のお供にもなります」

建築スタジオディレクターのシャオシャオさんは建築ツール入れに

シャオシャオさんは日常に欠かせない水筒もランドセルに入れて携帯しています。
シャオシャオさんは日常に欠かせない水筒もランドセルに入れて携帯しています。

台湾在住の建築スタジオディレクター・シャオシャオさんのランドセルスタイル。建設現場にも持ち込める機能性がお気に入りだそう。

シャオシャオさん「箱型のランドセルは底を掃除しやすく、清潔に保つことができます。また、革は防水でお手入れが簡単なので、建設現場で使用するときに安心して地面に置くことができます。 私は取り出しやすいようにタブレットを前ポケットに入れていて、巻尺などの建設現場のツールを保管するのにも十分な大きさです」

ダンサー・ディレクターUNOさんはメモを入れて

日本での活躍経験もあるというUNOさん。
日本での活躍経験もあるというUNOさん。

アメリカ・ポートランド在住のダンサー・ディレクターUNOさんは、時間割表入れをアレンジ。

UNOさん「時間割表入れに、今は振り付けや演出のメモを中に入れて、すぐに確認できるようにしています」

日本と海外を行き来しながら育ったUNOさんにとって、ランドセルは日本の象徴で、気分が高揚し、安心感を感じるそう。大人になった彼女は、優れた耐久性や時間の経過とともに愛着がわくことにも気づいたそうです。
日本と海外を行き来しながら育ったUNOさんにとって、ランドセルは日本の象徴で、気分が高揚し、安心感を感じるそう。大人になった彼女は、優れた耐久性や時間の経過とともに愛着がわくことにも気づいたそうです。

ランドセルを世界に広げていきたい

海外に飛び出したことで、おしゃれでユニークに使われるようになったランドセル。今後はより幅広い方々に受け入れられていくのかもしれません。そこで最後に、土屋鞄としての今後の展望を聞いてみました。

佐藤さん「このようなさまざまな愛用例を見ると、ランドセルは日本以外の国でもファッションアイテムの1つとして使っていただけるものだと実感しています。デザイン性もそうですし、作りがしっかりしていてほかにはないアイテム。今後も魅力を発信していき、現在店舗を構える台湾、香港にとどまらず、世界中に広げていきたいと思っています」

活躍の場が、海外に広がりを見せているランドセル。私たち日本人が思っている以上に、そのデザイン性や機能性が認められています。今後のランドセルの動向に注目していきたいですね。

土屋鞄 グローバルウェブサイトはこちら≫

お話を聞いたのは

佐藤さん顔写真
佐藤秀俊さん|土屋鞄製作所 海外事業本部 本部長
海外での金融関係の仕事などを経て、2020年より土屋鞄製作所にて海外事業を担当。海外店舗の立ち上げにも携わる。土屋鞄と海外をつなぐ、架け橋となっている。

文・構成/長南真理恵

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