シリーズ累計860万部の大人気絵本「ミッケ!」シリーズの新刊が6年半ぶりに出版されました。「ミッケ!」シリーズはアメリカの絵本で、日本語版ではコピーライターの糸井重里さんが翻訳されていることでも有名です。美しい写真の中に隠された様々なものを探していく”謎解き絵本”として、大人も子供も夢中にさせる不思議な魅力が詰まったこの本の制作舞台裏に迫ります。
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チャレンジミッケ! 日本初のオリジナル版が発売
「アメリカでは、撮り下ろしの新刊が長く出版されておらず、今後も予定がないとのことでしたので日本オリジナルとして新刊を出したいと、直接作者のウォルター・ウィックに依頼したところ、快諾いただき実現しました」と語るのは担当編集者の喜入今日子さん。今回、ウォルターさんと作品のテーマを一から話し合い、時間をかけて一緒に完成させた喜入さんに撮影裏話を聞きました。
「作品の打ち合わせは、主にメールではありましたが、2017年9月、ウォルターが住んでいるマイアミの美術館で『ウォルター・ウィック展』が開催されていたので、それを見ながら、絵本のテーマを話し合い、構成を打ち合わせすることになりました」
最新刊のテーマは”鏡”が作り出す不思議な世界
絵本のテーマのヒントになったのは、展覧会に展示されていた2016年にジャパンタイムズの表紙を飾った一枚の写真「Marble Math」。鏡がいくつも重なり合っていて、どこからどこまでが現実なのかわからない、トリッキーな写真です。鏡が作り出す不思議な世界を、球体の鏡など、いろいろな形の鏡を使って表現できないか……、そこに錯視トリックを加えて考えてみることになったそうです。
作者ウォルターのアトリエはまるでおもちゃ箱
ウォルターさんのアトリエには、アンティークのタロットカードや、のみの市で見つけた中世の置物など、これまで集めた不思議な物がたくさん!旅好きのウォルターさんは、旅先で、必ずのみの市やアンティークショップに行き素材を探しているんだとか。
全体の構成がほぼ決まったところで、絵コンテ通り上手くいくかどうかを、実際に小さなセットを作ってシミュレーションをします。そうして、最終的なページ構成が決まったところで、いよいよ撮影準備に入ります。
いよいよ撮影に突入!素材探しは問屋街や古道具屋へ
実際に撮影に入ったのは、2018年3月。ウォルターさんからどうしても撮影の最初の段階で見てほしいとの依頼があり、喜入さんも渡米。「アトリエが以前より小さいので、あまり大きなセットは組めません。とはいえ今までの「チャレンジミッケ!」以上のものを作りたい。ウォルターが実際に素材を探しにいくお店を巡りながら、もっと具体的に話していくことになりました」
向かったのは生地やビーズなどを扱う問屋街。また、映画関係の衣装を扱うお店や古道具屋などです。そこで調達した物をセットに並べて、試行錯誤して、イメージを固めていったそう。
1カットに1週間! 最終見開きページは1か月かけて撮影
「だいたい1カット撮影するのに、1週間くらいかかります。作り込んだ完成セットを撮影して、メールで送ってもらいチェック。メールでやりとりして、ファイナルショットまでに平均2週間。最終見開きのペンローズの三角形はいちばん大変で、約1か月の時間がかかりました」
全ての撮影が終わったのは、2018年の年末。撮影だけでも約10か月かかったわけです! 見るものを一瞬で引き込む圧倒的に美しい写真は、細部までこだわり抜いた緻密な計算の上に成り立っているのですね。だからこそ開くたびに新たな発見があり、手にした子どもだけでなく、一緒に見ていた大人までも夢中にさせるんです。
糸井重里さんも「これまでにない傑作!」と絶賛!
「完成した絵本をウォルターにお送りしたところ、”小包を開けるのが、とてもワクワクした。この本は、特別な一冊になった”と、興奮が伝わってくるメールが来ました。訳者の糸井重里さんも”これまでにない傑作!”と絶賛してくださいました。あとは読者の方々が楽しんでくれたら、こんなにうれしいことはありません」
日本ならではのアレがページのどこかに!
筆者の小学一年生の長男に早速見せたところ、「あー!新しいミッケだ、やったー!!」と大興奮。幼稚園や学童などに「ミッケ!」シリーズは必ず置いてあり、お友達とこぞって見ている大人気絵本なのだそう。実は「チャレンジミッケ!10」には全ページ、どこかに『招き猫』が隠れてるんです! 日本オリジナル版ならではの粋な演出ですね。この招き猫探しにドハマりした長男。「ねーママ!見つけたー!ほら、ここっ!」と得意げに教えてくれました。鏡や錯視効果を巧みに使っているので、見ているとどんどん不思議な世界に引き込まれ、親子で時間を忘れて没頭してしまいました。大人も子どもも楽しめる「チャレンジミッケ!10」でマジカルな体験をしてみてください。
文・構成/Hugkum編集部