「PPDACサイクル」って何? PDCAサイクルとの違い、教育現場や家庭での活用について解説

PPDACサイクルは、問題解決のためのフレームワークの一種です。段階ごとに正しい手順を踏めば、データを利活用しながら効率よく対策を見つけられます。PPDACサイクルの各段階でやるべきことや、家庭での活用方法などをチェックしましょう。

PPDACサイクルとは

PPDACサイクルは、蓄積されたデータを有効活用しながら問題解決を図る方法です。具体的にどのような手段なのか、PDCAサイクルとの違いと併せて見ていきましょう。

問題解決のための手段

PPDACは、Problem(問題)・Plan(計画)・Data(データ収集)・Analysis(分析)・Conclusion(結論)の頭文字をつなげた言葉です。PPDACサイクルとは、それらの5段階を循環させ、問題解決を図る枠組みを指します。

5段階を素早く何度も循環させ、結論で新たな問題が見つかったら再び頭から繰り返し、対応策の質を高めていく流れです。データ利活用の分野で使用され、ビジネスシーンはもちろん教育現場でも統計的な考え方を学ぶために役立てられています。

PDCAサイクルとの違い

PDCAは、Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Act(改善)のことです。PDCAサイクルは品質管理の分野などで、管理の質を高めるために採用されています。以下のように進めることが一般的です。

1.実績や予測をもとに計画書を作成する
2.計画書通りに検査などを実施する
3.結果を確認し評価する
4.問題がある部分を改善する

PPDACサイクルはデータの利活用を目的とし、莫大なデータであふれる社会での問題解決に適した手段です。問題に対応したデータ収集や分析に力を入れる点が、PDCAサイクルとの違いです。

PPDACサイクルの各段階ですべきこと

PPDACサイクルの各段階で何をすべきか分かっていないと、問題解決のための正しい方法が見出せなくなります。それぞれの段階でやるべきことや、うまく進めるコツを見ていきましょう。

「Problem」問題の把握

まずは現実に向き合い、問題を明らかにしましょう。現実目指すべき理想の両方を明確にし、ギャップを埋めるにはどうすればよいのかを探ります。どちらかが欠けている、または正しい認識からはずれているなどの状態では、何が問題なのかを正しく導き出せません。

また、課題をクリアしたかどうかを判断しやすくするために、課題達成の指標を具体的にすることがポイントです。問題の種類や内容によって異なりますが、定量的な数値を指標にすることが好ましいと言えます。そうすれば、後から本当に問題をクリアできたかどうかの判断が容易です。

「Plan」調査分析の計画

問題を明確化したら、調査分析の計画を立てます。指標をクリアするためにどのようなデータがあればよいのかを調査し、分析の計画を立てましょう。

問題との関係性が薄いデータを集めると、見当違いの結果が出てしまいます。どのような調査分析をすればよいのか悩んだときは、問題の原因と結果に対する仮説を立ててみましょう。

物事を俯瞰的に眺め、起きている問題と関連性が高いものを見つけ出す方法も効果的です。問題や原因などをツリー状に書き出して可視化すると、どのような調査が必要か見えてくるでしょう。

「Data」データを収集・整理

調査方法を決定したら、実際にデータを収集・整理する段階へ移ります。データの出所に注意し、正確性を重視しながら収集しましょう。

データの収集方法は、新しく調査をするだけではありません。すでに蓄積されていて手元にあるものを使用する方法や、公的なデータを使用する方法などがあります。

例えば「e-stat. 政府統計の総合窓口」や「統計ダッシュボード」などを通じて、さまざまな公的な情報がインターネット上で公開されています。

政府だけでなく企業・団体などが公開しているアンケート結果なども、有用な情報の一つです。収集したデータはカテゴリー別に分けるなどして、見やすく整理しましょう。

「Analysis」分析しヒントを探す

データを収集したら、問題解決のヒントを探し出すために分析をします。データの比較検討や傾向などをグラフや表を使って可視化し、問題を解決するヒントを探し出しましょう。

分析と聞くと専門的な知識が必要と思われがちですが、以下のポイントに注意して進めればそれほど難しくありません。

●全体の傾向を見る
●グループごとに分類し比較する
●時間の経過などによる変化や関係性などを探る
●予測や因果などを探る

より高度な分析をする必要がある場合には、専門家の力を借りる方法がおすすめです。

「Conclusion」結論を導き出す

分析結果をもとに、問題の解決策を提案しましょう。調査分析をする際に立てた仮説に対して、真偽を検証しながら改善点を判断します。

また、結論が問題に対応した内容になっているかどうかも確認しましょう。結果を述べるときは、結論・根拠・詳細の順番で簡潔に伝えられるように準備します。その際、誰もが分かりやすい表現を目指すことがポイントです。

最終段階で新たな問題が見つかった場合は、次のPPDACサイクルを回すことになります。場合によっては結論を仮定の状態にしておき、次のサイクルで問題として検証しましょう。

PPDACサイクルを活用するメリット

PPDACサイクルはさまざまなシーンで使えますが、主にビジネス分野で多くのメリットを発揮する考え方です。PPDACサイクルを活用するメリットを見ていきましょう。

チームが共通認識を持てる

PPDACサイクルを活用すると、チームが同じ認識を持てるようになる点がメリットです。チームで何かを成し遂げようとする際、ゴールが分からない状態ではうまくいきません。

工夫や努力が見当違いの方向を向いてしまい、貴重な労力を無駄にする恐れもあるでしょう。PPDACサイクルを活用することによって、メンバーそれぞれがどの段階にいるのかを把握でき、業務の効率化も図れます。

また、PPDACサイクルによってデータの分析結果が分かりやすく可視化され、蓄積したデータを有効活用できるようになるところも魅力です。

売上向上やコスト削減などに役立つ

PPDACサイクルは蓄積されたデータを有効活用し、ビジネスシーンにありがちなさまざまな問題を解決するために使えます。例えば、売上向上やコスト削減などを効率よく行いたいときに、ぴったりな方法です。

顧客に寄り添った提案やサービスの開発、ベテランの勘に頼らない問題点の発見などにも役立ちます。マーケティングや商品開発、オペレーションの効率化など、多様な分野で活用できる手段です。

PPDACサイクルを回し続けると、何が問題なのかが常に明らかな状態になり、高いレベルでの仕事が可能になるでしょう。

PPDACサイクルと教育

昨今は教育の分野でも、PPDACサイクルの考え方が取り入れられています。教育現場での活用方法や、家庭での取り組み方を見ていきましょう。

小学校の算数にも取り入れられている

現代社会ではインターネットやSNSなどを通じて、多様なデータを簡単に入手できるようになり、蓄積されたデータを活用したAI技術も発達しました。そのため手に入れた情報をどのように活用するのか、子どものうちから教育する必要性が高まっています。

小学生の算数教育でも、統計的な考え方が重要視されるようになりました。例えば、低学年では性別や血液型のような質的データを中心に集計する活動、3~4年生ではデータを集計するだけでなく、表やグラフにまとめる方法なども学びます。

統計学的な知識を高めるとともに、子どもたち自身の問題を解決する力を高めるためにも活用されているのです。

出典:小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 算数編 68~69ページ

家庭での問題解決にも役立つ

PPDACサイクルは教育現場だけでなく、家庭でもデータを用いた問題解決方法として取り入れられます。「忘れ物を減らすにはどうすればよいか」のような子どもにとって身近な課題や、スポーツの試合に関する分析などにも使える手段です。

子どもが小さいうちは本人の興味の方向を考慮しながら、「童話に出てくる動物の種類や性格を分類してみる」「世界の国旗の色や模様を数えて記録する」など、簡単な訓練から始めてみましょう。

日常生活で問題が起きたときにPPDACサイクルを意識しながら考えるように導くと、子どもが自分で解決する力を養えます。

PPDACサイクルを仕事や教育に生かそう

PPDACサイクルは、データの利活用によって問題を解決する手段です。仕事はもちろん、さまざまな分野の問題解決に役立てられます。

小学生であっても、データの利活用をするための統計学的な知識を学ぶ時代になりました。子どもたちもデータの収集や分類、グラフや表を用いて表現する方法などを学習しています。

子どもが生活する中で起きた身近な問題の解決を図る際にも、PPDACサイクルの考え方を取り入れるとよい勉強になるでしょう。

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構成・文/HugKum編集部

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