夫婦ゲンカもやり方次第!賢い子を育てる夫婦の会話テクニックをプロに聞いた

子どもの悩みの根底には、夫婦間の会話の問題が隠れている

「怒らないと勉強をやらない」「友だちとうまく関われない」「きょうだいゲンカが多い」など、子どもの様子で気になることってありますね。その原因はどこにあるのでしょうか。

一見すると子どもの問題とも思えるこれらの悩みですが、実は根底には夫婦間のコミュニケーションの問題が隠れていることが多いそうです。

『賢い子を育てる 夫婦の会話』、他の指南書とどう違う?

5月に出版された天野ひかりさんの著書『賢い子を育てる 夫婦の会話』では、子どもを育てるうえで、言葉がどれほど大きな役割を果たすのかということを、実際の生活に即した内容で細やかにわかりやすく伝えてくれています。「子どもや夫と会話はしているからわざわざ指南書を読まなくても大丈夫」と思う人も多いと思いますが、この本を読んでみると、本当に通じ合えるコミュニケーションについて、改めて多くの気づきがありました。驚くほどわかりやすく、すんなりと心に入ってくるのはなぜなのでしょうか。

著:天野ひかり 監修:教育学者 汐見稔幸

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子どもや夫婦の心が通じ合える言葉の具体例がとてもリアル!

言葉の大切さについて論じた本はたくさんありますが、この本が他の指南書と違う点は、思わず「あるある、こういう場面!」と共感してしまうリアルさです。

この本の監修をつとめた東京大学教授の教育学者・汐見稔幸先生も、「夫婦や家族内で起こりうる全ての事態を網羅するほど、具体的な場面での言葉と心のありようをつなげて論じている、今までにない言葉遣いの百科事典」とそのリアルさに太鼓判を押しています

著者の天野ひかりさんはNHKの「すくすく子育て」でキャスターを務めた言葉のプロですが、自身の結婚、出産、育児、そして仕事との両立など、実生活での経験がベースになっているため、内容がリアルで説得力があるのもうなづけます。

夫婦ゲンカもやり方次第で、子どもの成長につなげられる

例えば、「夫婦ゲンカ」についてのページをご紹介します。

「ケンカしても、仲直りまでちゃんと見せる」という項目がありました。これには、「対話して問題を解決できる子になる」という理由づけがあります。

子どもはケンカを見たことがないと、正しいケンカの仕方が分からないまま成長する

言葉や力で傷つけ合う親のケンカは、子どもの脳にも大きなマイナスの影響があるとした上で、建設的な夫婦ゲンカは、時にはありだと書かれています。そして、大切なのは、ケンカをした結果、何がわかり、今後どうするかまでを、きちんと言葉で伝え合って、仲直りすることで、そこまで子どもに見せられるのが理想だそうです。

「私は○○したいの!」

「ぜんぜんわかり合えないね」

ではなく、

「じゃあ、○○するのはどうかな」

「なるほど、それならできそうだね」

「感情的になってごめんね」

「わかり合えてよかった。言ってくれてありがとう」

というように、言葉のかけ方が紹介されています。

自分の意見を通そうと、感情的に相手を非難して一方的な行いで終わってしまうのは単なるわがままやいじめ。時には感情的に思いを口走ってしまったとしても、相手の言い分を受け入れ、歩み寄って答えを出そうと努力する姿を見ることで、子どもも、わがままやいじめではなく、自分の意見を伝えられるようになるそうです。

子どもには言うけど自分は出来ている? 親も振り返るきっかけに

確かに、子どもには「そんな強い言い方しないの!」とか「相手の意見もきちんと聞いて!」と言いがちですが、自分が夫婦間でできているかな、と振り返ると、わがままを通そうとしてコミュニケーションを諦めてしまっていることがあるなあ、と思います。

「解決する方法を最後まで見せる」という意識を持つだけで、夫婦間のやりとりにも変化が出てきそうですね。

「認める」ことで自分からやる子に必ずなる!

この本の大きなテーマの一つに「ありのままを認めると、夫婦関係も子育てもラクになる」とあります。

子どもの自己肯定感を高めるための具体的な言葉かけや、「認める」ことと「ほめる」ことの違いについてなど、興味深い具体的な項目がこのテーマの中にはたくさん登場します。

その中でも、思わず付箋をつけたくなってしまったページを一部ご紹介します。

怒らないとできないのは「器」が育っていないから…

子どもに身につけさせたい知識や情報、社会のルール、他者とのコミュニケーション力を「お水」とするなら、それを受け入れるのが自己肯定感である「器」です。

なるほど、怒らないと片付けをしなかったり、勉強に取り掛からないのは、自己肯定感という「器」が育ってないからなのか〜、と深くため息をついてしまいそうになりました。天野さんいわく、日本のお父さんお母さんは、器を大きくする前に、お水を入れることに一生懸命なんだそうです。では、その「器」、どうしたら大きくすることができるのでしょうか。

どうしたら「器」を大きくできるの?

「器」を多くするために、一番大切になってくると感じた部分を、少し詳しくご紹介します。それは「夫婦でも認め合うことが大切なワケ」という項目です。一見、どう関係してくるの?と思いますね。

常識にとらわれて、実は子どもを認めていない

真面目で一生懸命な親ほど、自分の中にある完璧な母親像、父親像に縛られてしまっているそうです。

「手作りの料理を毎日作るのが、立派な母親」

「自分の感情にふりまわされないのが、いい父親」

といった感じです。そして子どもに対しても同じように、こうあるべき、という考えになり、子どもの個性やいい部分に気づきにくくなるそうです。

認めることで「器」を大きくし、自分でやるようになる

でも宿題をしない子どもを見て「宿題をしなくてえらいね」と認めることはできませんよね…。でもそういった場面でも、親は「宿題をするか・しないか」という視点でしか我が子を見ていないということが間違いなんだそうです。

例えば子どもが宿題をせずに本を読んだり、ゲームばかりしているとします。

「夢中になって本を読んでいるね」

「ゲームおもしろそうだね、すごい集中力だね」

このように子どもをよく見て、子どもの立場でまずは伝えることが「認める言葉」のポイントだそうです。そして、認めてもらったあとだと、お母さんやお父さんは自分の気持ちをわかってくれたと思って、元気に宿題に取り組むそうです。

子どもは、親同士が認め合う姿から、自分や他人を認めることを学ぶ

そんなうまくはいかないのでは?と思うかもしれませんが、これは1回だけ言って、やらなかったから諦める、というその場限りの話ではなく、お母さんやお父さんの根底に「子どもを自分の中にある常識通り、思い通りに動かそう」という意識をなくすことがまず大切なのかな、と思いました。

そして、子どもを認めることと同じくらい大切なのが、パートナーや自分自身も認めていくことだそうです。黙認でも放任でもなく、言葉で伝え合っていくということが大切。親同士が認め合う姿を見て、子どもははじめて自分や他人を認めることを学ぶそうです。そして、この学びが、子どもの「器」を大きくし、「器」が大きくなることで、怒られずとも自分がすべきことを考えてできるように必ずなっていくそうです。

ありそうでなかった!具体的な会話のコツがわかる

また本のもう一つの大きなテーマに「子どもの器を育む 夫婦・家族の会話のコツ」というのがあります。その中では、家族との様々なシチュエーションでの具体的な会話の例が詳しく紹介されています。

「夫婦で子どもに正論を押しつけない」会話のコツは?

例えば、「子どもが友達の輪に入らないとき」には

「夫婦で子どもに正論を押しつけない」とあります。

お母さんが自分の視点で正論を言ってしまったら、お父さんが子どもの立場に立って話してみるなど夫婦で補い合うのも良いそうです。

「祖父母と対立するより、前向きに楽しむ」会話のコツは?

こちらは、祖父母とのコミュニケーションで気をつけたい具体例です。

祖父母から子育てのやり方に口を出されて、嫌だな、と思った経験のあるパパママも多いと思います。天野さんのお話では、本来の目的である「子ども(孫)の健やかな成長」は同じはずなので、その部分は共有すること。そのうえで、世代の違いによる意見の違いを認める姿勢をとることをすすめています。そして目的達成(ここでは子どもの健やかな成長)のためにいろいろな方法があることをお互いに確認するのが、対立を回避する良い方法だそうです。

ハナっから、「うちはそういう方針ではありません!」などと否定したり、嫌な顔を見せたりしてはいけませんね。

自分の幸せを感じることが、賢く幸せな子どもを育む

ここでは本の内容のほんの一部を簡単にご紹介してきましたが、他にも興味深い具体例がたくさん書かれています。

子育ての指南書を読むと、自分の出来ていなさ具合にかえって凹んでしまうことも多いものですが、この本は、スーッと心に入ってくるフレーズが多くて、今日からでも気をつけてみようかな、と思える内容でした。

最後に、著者である天野ひかりさんの言葉をご紹介します。

「子どもは、お母さんが笑っていても怒っていても、一生懸命なのを知っています。子どもは、お父さんが黙っていても、家族を想っているのを知っています。子どもは、毎日お母さん、お父さんをよく見ているのです。子どもは、親が思っている以上にお母さん、お父さんふたりを喜ばせたくて毎日一生懸命です。だから、子どものためにも、いちばん近くにいる人との会話を大切にして、心から笑っていられる親でいましょう。そして、子どもと同じくらい、自分の幸せをかみしめましょう。それが、賢く幸せな子どもを育むことになるのです」(「賢い子を育てる夫婦の会話」より)

 

子どもの悩みを抱えるパパやママ、夫婦や家族の会話を改めて振り返ってみたい方に、心からお勧めしたい1冊です。

 

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著者:天野ひかり

上智大学文学部卒業。テレビ愛知アナウンサー(1989~1995)。現在はフリーアナウンサーとして活躍中。 フリー転向後はNHKの番組を中心に出演し、2008年3月まで教育テレビの番組『すくすく子育て』でキャスターを務める。 自身の結婚、出産、育児と仕事の両立を経験したことで、子育ての重要性を認識。「NPO法人親子コミュニケーションラボ」を立ち上げる。 子どもの自己肯定感を育むための親子のコミュニケーション力をのばす講座や講演を全国の自治体や幼稚園、学校、企業などで開き、今までの受講者は5万人以上。 多くの父母から支持され「育児が180度変わった! 」など感動の声が寄せられている。 著書に『子どもが聴いてくれて話してくれる会話のコツ』(サンクチュアリ出版)、『天野ひかりのハッピーのびのび子育て』(辰巳出版)がある。

 

監修:汐見稔幸

1947年大阪府生まれ。東京大学名誉教授、日本保育学会会長、白梅学園大学名誉学長。 専門は教育学、教育人間学、保育学、育児学。2017年告示保育所保育指針改定時には、厚生労働省社会保障審議会 児童部会保育専門委員会の委員長を務める。自身も三人の子どもの育児を経験。現代の父親・母親の応援団長を目指している。 保育者による本音の交流雑誌『エデュカーレ』編集長ほか、21世紀型の身の丈に合った生き方を探るエコビレッジ「ぐうたら村」村長など多数。

 

文・構成/HugKum編集部

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