娘が3歳のときに妻が大腸癌と分かってから1ヶ月で他界。僕は突然シングルファーザーになってしまいました。娘と共に戸惑い先が見えない状態でしたが、たくさんの方が支えてくれたおかげで、娘は順調に成長することができました。
その過程の中で、いろんな方からたくさんの声をかけていただいたことを良く覚えています。
その声かけのすべてが、僕と娘に対する善意ということは分かっていましたが、元気や励み繋がることがある一方で、実は悩まされたり、困ったりすることもありました。今回はそれについてお話させていただきます。
食事に関する声かけが多かった
シングルファーザーの生活に関して声をかけてもらえる話題といえば、
「ご飯はいつもどうしているの?」
「毎日料理しているの?」
「娘さんは、どんな食べ物が好きかな?」
などの毎日の食事に関することが一番多かったように思います。そんなときは大体、
「毎日はしてないですね。娘と2人だけなので、材料を買って料理するよりスーパーの惣菜や外食をするほうが安くて時間もかからないので、時間に余裕がないときは、それらに頼ることが多いです」とか「今はハンバーグみたいな肉料理が大好物かな」のような感じで返答をしていました。
すると、
「毎日バタバタで時間ないだろうし、それで十分だよ。良く頑張っているね」
「料理すると洗い物が増えるし、余った食材が腐る心配もいらないから、そのほうが賢いかも」
「じゃあ、今度作ったハンバーグを冷凍して持ってくるね」
などと、なにげない会話で終わるのですが、こんなちょっとした会話から僕は元気を貰っていました。だから、そんな周りからの声かけにはいつも励まされていました。
その一方で悩んだり、困ったりすることも…
でも時々、話題は同じ食事のことなのに、僕が悩むきっかけとなる声かけもありました。
それは
「ご飯は毎日、一汁三菜で食べさせるように」
「身体に悪い物を食べさせないようにしなきゃダメよ。外食や買った惣菜には何が入っているか分からないから」
などと声をかけられたときです。
上記のように、外食やスーパーの惣菜をよく使っていたので、いつも僕は言葉を濁したり、苦笑いしたりしながら返答していました。そもそも料理の知識が乏しい僕は、一汁三菜という言葉さえ、その時まで知りませんでした…(笑)
また、「栄養のあるものを作ってきたから、娘さんに食べさせなさい」ということで、料理の入ったタッパーを持ってきてくれた方もいたのですが、娘と僕が苦手で食べられないものが大量で「どうしよう…食べた感想は何と言おう」と困ったなんてことも…。
これらの声かけなどは当然、僕と娘のことを心配しているからこその善意だということは理解していましたが、僕は「娘の身体のことよりも手抜きすることばかり考えていて、親として失格だ」とか「娘のために頑張っていない」また「人の好意やアドバイスを台無しにしている」などと、悩んで落ち込むことも正直ありました。
どんな話題も同じように2つの結果がある
これは食事に限ったことではなく、他の話題に関しても同じように感じることが多くありました。
恋愛や再婚のことでいえば、
「誰か好きな人ができたときは、やっぱり前の奥さんのことを考えたりするの?」
「娘さんは、新しいお母さんを欲しいとか思ってないのかな?」
などと声をかけられることがありました。
初めてそんなことを聞かれたときは、サクッとではなく一瞬考えてから返答することがあったのですが、少しずつ返答しながら会話をしていると、不思議と自分一人では考えてなかったことに気づいたり、気持ちや感情が整理されたりすることがあるのですよね。また、娘と母親のことについて真剣に話をするよい機会にもなりました。
逆に、
「娘さんが大きくなると生理のこととかあるから、早く誰か見つけて再婚しなきゃ」
とか、僕に彼女ができたときに限って
「娘さんのために頑張らないといけないから、恋愛なんかしている時間はないね」
などと言われ、どのように返答してよいのか困ることがありました。中には、女性の写真を持ってきてお見合いをさせられそうになったこともあり、その時はさすがにビックリしました(笑)
励みになる声かけは「こちらの事情に耳を傾けてくれること」
この他にも、娘の教育のことや将来のことなど、いろんなことに関して声をかけてもらいました。
それらに関しても、ここまで紹介した例と同じように、元気や励みになった声かけがある一方で、ちょっと悩んだり困ったりしたこともありますが、すべてが僕と娘のことを思ってくれたことには変わりはないので、結果はどうであれ全部に感謝をしています。
でも、その結果の違いは何だったのかを今考えると・・・
ここまで読んでくださった方は、もう気づいていますよね?
そうです!
元気や励みになった声かけの最後には、すべて「?」がついている質問からスタートしていて、僕の話を聴こうとしてくれる想いが詰まっていたような気がします。それらは一方通行ではなかったし、一般論やその方が持っているあるべき論などは全く含まれていませんでした。
だから僕は返答の内容に気を遣ったり、なにかを咎められたと感じることもなく、気持ちよく話を聴いてもらいながら会話することができたのだと思います。その結果が僕の元気や励みに繋がっていたのでしょうね。
もし、みなさんの周りに心配で気になる誰かがいて、どんな感じで声をかければよいか、迷うことがありましたら、ぜひ「?」をつけた質問形式の声かけから始めてみてください。その際も暗に責めたり一般論と比べたりしないで、それぞれのファミリーの「今」にフォーカスしながら、お互いの共感を引き出し合うような会話でアプローチしてみてくださいね。きっと嬉しそうに話をしてくれるはずです。
そして、皆さんがお子さんと接する際にも同じような声かけを心掛けてみてください。お子さんが、いつも以上に楽しそうに話してくれると思います。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。すべての親子が幸せになりますように!
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文・構成/ひまわりひであき
※写真はイメージです。