子育ては日々悩みの連続ですね。保育者歴46年、常に子どもに寄り添い、ママたちからの信頼も厚い自主幼稚園「りんごの木」の柴田愛子さんが、豊富な経験を元に、悩めるお母さんにアドバイス。
息子の態度や言葉遣いが乱暴! 私の育て方が悪いの?
先日、薬局で2~3歳の男の子が、息子に近づいてきました。その子は、自分が持っているおもちゃを見せたいだけなのですが、息子は舌打ちをして、「来るなよ!」と蹴るマネをしました。私は、それを見て正直、ショックでした。
その場は、相手の男の子とママに「ごめんなさいね」と謝って、店を出ました。
でも私は「なぜ、その場で息子を叱れなかったのか…」と悩んでいます。正直、子どもだって不機嫌なときがあると思いますが、息子に甘いですよね?
帰り道、車の中で「相手の男の子やママは、どんな気持ちだったと思う?」「あなたが同じことをされたら、どう思う?」「今日のことは、パパに話しますからね!」と怒鳴りつけました。やっぱりあの態度は、許せないです。
また、この件が起きる1カ月半ほど前から、言葉遣いが乱暴になったりはしていました。例えばエレベーターでも「ほかの人と一緒に乗りたくないんだよね。乗らないでくれない?」と、周りに聞こえるように言うのです。私は「エレベーターはみんなの乗り物よ。そんなこと言うなら、あなたも乗らないで!」と注意しました。すると息子は「そんなことないんだよー。そんなこと決まってましぇーん!」と言い返すのです。私が育て方を間違えたのでしょうか。
まったく知らない大人から叱られることも彼にとっては必要かも知れませんが、私としてはやはり可愛い息子が叱られている姿を見ると傷つきます。最近、毎日怒ってばかりの自分がイヤですし、息子にも「ママ、怒り過ぎ」と言われます。(5歳の男の子のママ)
5歳は「勧善懲悪」をはっきり意識させるべき年頃。
息子さんは、あなた自身とあなたの価値観を試しているように思います。
試すと言うのは、お母さんが何を嫌がり、何を喜び、いけないことをするとどれぐらい怒るかということです。息子さんは、それによってあなたの人格を知り、より信頼し、好きになりたいのです。しかし「パパに話しますからね!」という叱り方では、「ママは自分が悪いと思ったことをパパに言いつけて、パパの力を借りなければ怒れないの?」と解釈してしまいます。また子どもにとっては「自分を守れる人ではない!」ということにもなります。このセリフで思春期に傷つき、反抗的になる子もいます。
人前でも、はっきり「いけないことは、いけない!」と叱れる努力をしてください
あなたは毎日、叱ると言いますが、叱らなくてはいけないことは、実はほんの少しだけ。お書きになっている他人に対しての言動ではないでしょうか。くどくど言うと聞き流してしまうので、言葉数は少ない方が効果的です。
私だったら、エレベーターでそんな態度をとったら黙って引きずり出します。お子さんは、もしかしたらそんな叱り方を望んでいるのかも知れません。5歳は勧善懲悪の時代で、白黒はっきりさせたい時期です。白黒はっきりさせることが、基本の思考回路を作るのです。
とは言うものの「育て方を間違えた!」なんて振り返らないでください。ご自分が人前でも、はっきり「いけないことは、いけない!」と言える努力をしてくださいね。
教えてくれたのは
保育者。自主幼稚園「りんごの木」代表。子供の気持ち、保護者の気持ちによりそう保育をつづけて半世紀。小学生ママ向けの講演も人気を博している。ロングセラー絵本『けんかのきもち』(ポプラ社)、『こどものみかた』(福音館書店)、『あなたが自分らしく生きれば、子どもは幸せに育ちます』(小学館)など、多数。親向けの最新刊に『保育歴50年!愛子さんの子育てお悩み相談室』(小学館)がある。
イラスト/海谷泰水