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夏休みは自主性を育てるチャンス!
子育ての基本は、まず子どもの意見を聞いてみることです。まだ宿題が手つかずでしたら、「夏休みの宿題、どうする? 今から計画立ててみる?」と聞いてみてください。ほとんどのお子さんは「立てる!」と答えてくれると思いますが、ポイントはあくまで子どもに決めてもらう、ということです。親がイライラしながら話を持ちかけたり、計画に口出しすぎたりするとうまくいきません。やる気も失われてしまいます。

宿題の進め方は主に3パターン! 子どもの意見を尊重して
夏休みの宿題のやり方には、主に3パターンあります。
①なるべく最初に片付けるパターン
②分散させて毎日コツコツ進めるパターン
③締め切り前に一気に仕上げる追い込みパターン
この3つのパターンからどんなやり方がいいのか、子どもに選ばせます。子どもが③を選んでも決して誘導したり否定したりせず、意見を尊重してあげてください。だいたい半数のお子さんが①か②を選び、もう半数くらいが③を選びます。
①を選ぶお子さんは、不安なことをなるべく早くなくしたい子です。
②を選ぶお子さんは、毎日のルーティンを大切にし、生活のリズムをなるべく崩したくないと考えています。
③を選ぶお子さんは、とにかく楽しいことをたくさんしたい! 嫌いなもの、めんどうなものはあとで一気に片付けたい! と考えるタイプで、シングルタスクのお子さんが多いです。

ここで注意したいのが、③を選ぶお子さんは、「宿題をやりきれない問題」を発生させる可能性が高いことです。「これでは終わらないのでは?」と思ったら、締め切りを始業式の前日にするのではなく、何日か余裕をもった締め切りを提案をしてください。
それでも間に合わなかった場合は、「このやり方は失敗だったな」という経験のため、学校で叱られる覚悟を。叱られる経験も“学び”です。ただし、宿題が終わらないからと親が叱ってしまうと自主性は育ちません。子ども自身が「次は違うやり方でやってみよう」とか「もっとペースを考えればよかった」と、振り返ることができればいいのです。
タスクの“見える化”を意識! 宿題もサマーイベントに
お子さんがどのやり方を選んだとしても、“宿題の見える化”は大事な作業です。カレンダー、ホワイトボード、ノート、模造紙、手帳、なんでもいいので、どんな宿題があるのかを書き出して、いつやるのかを一緒に決めていきましょう。
ただし、計画は全体的にはザックリと立てて、子どもに見せるのは1週間単位や、1日単位にしてください。初めにたくさんのタスクを見てしまうとやる気が出せない子もいます。
シール、付箋、イベントなど楽しめる工夫を取り入れて
宿題が一つ終わったらシールを貼ってもいいですし、スタンプを押してもいいでしょう。宿題が減っていく様子が可視化される方が達成感を味わえるようなら、付箋に書いて貼って、やったら外していく方法でもいいと思います。お子さんが楽しくなる工夫をご家庭ごとに決めてみてください。

「シールやスタンプが貯まったら週末に外食をする」「⚪︎時までに終わったら花火ができる」「この日までに終わったら家族旅行に行ける」など、終わらせた後に夏の楽しいイベントを入れるのもおすすめです。親子で楽しい気持ちで取り組んでください!
計画やスケジュールは変更OK! 親がかたくなになってはNG
ただし、ほとんどの場合はスケジュール通りにはいかないものです。子どもに任せっぱなしで無理なことが大半。特に低学年のうちは、1日ごとに一緒に振り返りをしてあげてください。高学年ならば1週間ごとの振り返りでもいいと思います。そして、ちょっとペースに無理があるかな? と感じた場合には、親子で話し合いをします。
最初に決めたからと言って、最後までその方法でやる必要はありません。1週間ごとに「どうしようか?」と一緒に調整してみましょう。どう調整するかはお子さんが決めることなので、余計なことは言わないように注意です! 「あなたがこの計画を立てたんでしょ!」などとお子さんを責めることは絶対にNGです。

お子さんによっては、ポイントが貯まったりシールを貼るのが楽しくなったりして、どんどん進める子もいます。もしも前倒しで終わった場合は「そんなに勉強やらなくていいんじゃない?」なんて言ってみると、『反作用の法則』でもっとやるようになりますよ。
夏休みのデジタルコントロールは? ゲームにハマらせないコツ
まず、ゲームや動画のルールをなぜ決めるのかを考えてみてください。子どものためと思っていますが、実は親がイライラしないためのルールです。親がイライラしないなら、ルールはいらないのです。そういう家庭の方針ということになります。
低学年のうちは学童保育を利用することができるので、ゲームやタブレットの時間はいつも通りで過ごせるかもしれません。ですが、高学年になると一人で過ごす時間が増えて、お子さんも暇をどうつぶしていくのかに悩みます。そして、結局やりたい放題になるご家庭が多くなります。ゲームや動画の時間を制限するのならば「暇になった時間をどう過ごすのか」まで一緒に考えておきましょう。
思い切って“何時間でもOKな日”を作ると◎
そして、もしお子さんにゲームや動画にハマってほしくないと考えているならば、夏休みの何も予定がない日を洗い出して、「とことんゲームをしてもいいし、動画を見てもよい日」を作ってみてください。思い切ることが難しいかもしれませんが、実はこれは、習慣化させない方法の一つです。“何時間もゲームをしたり動画を見たりする日”と、“全くやらない日”を作って習慣化を防ぎましょう。
親御さんの多くは「1日〇時間まで」と制限して毎日少しずつやらせてしまいがちですが、その方法は逆効果なことが多いのです。制限をかければかけるほど、やめなさい! と注意すればするほど、人はやりたくなってしまうものなのです。

とことんやっても、なおゲームや動画がやめられない、何時間でもできてしまうお子さんは、逆に才能だと思ってしまうのも一つの手です。eスポーツやプログラミングの世界に目を向けてみるのもいいかもしれません。
夏休みは子どもの力を使おう!
「夏休みは地獄!」と、小学生くらいのお子さんがいるご家庭は、そんな表現をすることがあります。子どもが家にいるだけで家事が増えて大変ですよね。そんなときこそ、子どもの力をうまく使っていきましょう!
「7時に起きられたら10ポイント」「お風呂を洗ったら5ポイント」「今日の分の宿題が終わったら10ポイント」など、お子さんに稼ぎ出してもらいます。そうすることで、生活習慣の乱れを防ぎつつも、家事の負担を減らし、夏休みのタスクを少しずつ減らしていきます。
ゲームや動画が大好きなお子さんならば、宿題やお手伝いをしたらポイントをゲーム時間や動画時間に変えてあげるだけで、どんどんお手伝いをしてくれるようになるかもしれません。

1か月以上もある長い夏休みは、お子さんの自主性を育てるチャンスでもあります。夏休みの宿題やお手伝いを利用して“自分から進んでやる”自主性を育てていきましょう。
見るべきは子どもの“行動”ではなく“心”
いくつか夏休みを楽しむための方法をご紹介してきましたが、“絶対にコレ”という方法はありません。このようなやり方を参考にしながら、親御さん自身がわが子にピッタリの方法をカスタマイズすることが重要です。
私の著書『子どもを育てる7つの原則』にも書いてありますが、子どもの“行動”を見るのではなく、子どもの“心”を見ながら工夫していくのです。「宿題をしない、ゲームばかりする」という“行動”ではなく、「宿題がめんどうくさい、ゲームは楽しい、もっとやりたい」という“心”です。その上で、宿題の可視化やポイント制度、何時間でもゲームOKな日をあえて作るなど、どうしたらこの子が楽しめるのか、親子で相談しながら夏休みというビッグイベントを乗り切っていきましょう。
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お話しを伺ったのは
東京大学大学院教育学研究科修士課程修了。20歳で学習塾を始め、これまで4000人以上の生徒に対し、「心を高める」「生活習慣を整える」「考えさせる」の3つを柱に指導。東洋経済オンラインで「ぐんぐん伸びる子は何が違うのか?」は長期人気連載となり、累計1.2億PVを突破している。2016年からママさん対象に「カフェスタイル勉強会〜Mama Cafe」を全国で主宰し、年130回以上実施し、累計1.5万人のママさんと対面での相談を受けてきた。毎日配信している音声配信Voicyでは「Mama Cafeラジオ」を配信しフォロワーは2万人。
NHKあさイチ、フジテレビ「めざましテレビ」、日テレ「ZIP!」、TBS「あさチャン!」、「ガイアの夜明け」等、メディア出演多数。書籍は31冊出版。
文・構成/鬼石有紀

