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石破茂首相の退陣で、米・中・韓との関係は?
石破茂首相が9月7日、突然の退陣を表明しました。政権発足から約1年、党内の対立や経済政策の停滞が背景にありますが、外交面では対中韓融和路線が特徴でした。
退陣により、次期首相候補として茂木敏充氏・林芳正氏らが出馬を表明、高市早苗氏も出馬の意向をかためていると報道されており、今後の外交政策が注目されます。以下では、アメリカ、中国、韓国との関係を中心に、今後の見通しを考察します。
政権交代の混乱で、アメリカとの経済摩擦が増すリスクも
まず、アメリカとの関係です。石破政権はトランプ米政権との間で自動車関税交渉を主導し、15%の関税で決着させるなど、一定の成果を上げました。しかし、退陣により同盟強化の取り組みが停滞する懸念がアメリカ側から出ています。
トランプ政権は対中包囲網を重視しており、日本との協力が不可欠です。次期政権がアメリカ寄りの路線を維持すれば、日米安保はさらに深化するでしょう。例えば、高市氏のような保守派が就任すれば、アメリカ側の期待に応じて防衛協力が加速する可能性があります。

一方、政権交代の混乱で交渉が遅れれば、経済面での摩擦が増すリスクもあります。アメリカのメディアでは「同盟の真空」を警戒しており、次期政権は早期にトランプ政権との良好な関係を維持する必要があります。
安定していた日中関係は、緊張感が高まる可能性
次に、中国との関係です。石破首相は就任直後から習近平国家主席との会談を実現し、短期ビザ免除や経済協力を推進する融和姿勢を示しました。これにより、日中関係は安定化しましたが、領海侵犯や台湾問題での緊張は残っています。

中国側は石破政権を融和的と評価し、退陣を残念がる声が国営メディアから出ています。次期政権が反中寄りの人物になれば、政策は厳しく転換するでしょう。そして、アメリカとの安全保障を強化し、中国経済依存の脱却を加速させる可能性も高くなります。これにより、米中対立のなかで日本はアメリカ側に傾斜し、対中制裁や技術規制が増える一方で、経済摩擦も激化する恐れがあります。
中国は日本への影響力維持を狙うため、外交攻勢を強めるでしょう。結果として、日中関係は緊張が高まる一方、安定した対話への枠組みの継続が課題となります。
日本と韓国の関係も後退する可能性
最後に、韓国との関係です。石破首相は歴史問題で穏健な態度を示し、李在明大統領との会談で関係改善を実現しました。韓国メディアはこれを高く評価し、今回の退陣が日韓関係に悪影響を及ぼすと懸念しています。
韓国メディアも石破氏の対韓姿勢を評価しており、次の首相次第で日韓関係が後退する可能性を懸念しています。仮に次期政権が保守強硬派になれば、慰安婦や徴用工問題が再燃し、経済協力が停滞するリスクがあります。

一方、日本と韓国は米中対立のなかで安全保障連携を強める共通利益があり、尹錫悦前政権時代の緊張から学んだ教訓を生かせば、関係は維持できるでしょう。
韓国側は経済破綻の懸念を抱えており、日本との協力が不可欠です。日本外交としては、感情論を避け、実務的な対話を重視する姿勢が求められます。
各国とのバランスを取れるかがカギ
石破首相の退陣は日本外交に転機をもたらします。米中対立が激化するなか、親米路線を基軸にしつつ、中韓とのバランスを取る柔軟性がカギです。
政権交代の混乱を最小限に抑え、国民の安全と経済を守る外交が期待されます。
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記事執筆/国際政治先生
国際政治学者として米中対立やグローバルサウスの研究に取り組む。大学で教壇に立つ一方、民間シンクタンクの外部有識者、学術雑誌の査読委員、中央省庁向けの助言や講演などを行う。

