話題の「自由進度学習」そのメリット・デメリットは? 具体的な進め方や実践例を紹介【最新の教育事情を知る】

自由進度学習は、子どもが自分の理解度に合わせて、学習を進められる方法です。自由進度学習が注目されている理由や、導入が可能となった背景を解説します。加えて実際の導入事例とともに、自由進度学習の進め方を見ていきましょう。自由進度学習に取り組むメリット・デメリットも紹介します。

自由進度学習とは

自由進度学習とは、子どもが自分のペースで学習を進めていくことです。子どもが学習内容を理解して「分かった」と思えば、どんどん先に進められます。「分からない」と思えば、つまずいた部分を繰り返し学習することも可能です。

また用意されている資料や教材を使って、学ぶ内容やその順番を選べるのも特徴といえます。「もっと知りたい」という興味関心をもとに学べるため、学習への意欲向上も期待できる学習方法です。

自由進度学習が注目されている理由

文部科学省は「令和の日本型学校教育」として「個別最適な学び」「協働的な学び」を掲げています。自由進度学習はこの学びを実現する学習方法として注目されています。

またパソコンやタブレットを1人1台使えるようになったことで、一人ひとりの理解度に合わせて学習しやすくなったことも、自由進度学習が注目されるようになった理由です。

出典:『令和の日本型学校教育』の構築を目指して(答申)|文部科学省

自由進度学習の進め方

これから自由進度学習に取り組む場合、子どもの学習はどのような流れで進んでいくのでしょうか? 公立小学校で自由進度学習を取り入れた事例とともに、一斉授業とは違う自由進度学習の進め方について知っておきましょう。

自由進度学習の流れ

自由進度学習は、子どもが自分の理解度や興味関心に合わせて学習を進めていく方法です。それが可能となるよう、先生はこれから学ぶことについて、目的・学習の流れ・使用する教材を説明します。

子どもは先生の説明をもとに、学習をどのように進めていくか計画を立ててから、計画に沿って学習していきます。最後に振り返りを行う流れです。

【実践例】広島県廿日市市立宮園小学校

実際に自由進度学習を導入した広島県廿日市市立宮園小学校の事例を見ていきましょう。

自由進度学習に取り組むにあたって、同校が工夫したのは学習計画表です。何をするのか、どの順番で行うのか、学ぶ順番を決められるのはどこか、などを分かりやすく示しています。

加えて子どもが学習を進めやすくなるよう、少しずつ理解度を深められるワークシートを用意しました。個々の理解度の把握は、自動採点式アプリによるチェックテストで行い、サポートしています。

また、学習コーナーを複数作っているのも特徴です。例えば「重さ」について学ぶ単元では「砂や水でぴったり1kgを測る」「粘土の形を変えると重さは変わるのか調べる」などの課題に、興味を持った順番で取り組みます。

全員が必ず行う課題と、選択して取り組む課題を用意しており、興味・関心に合わせて学びを深められる構成です。

出典:「自立した学び手」の育成を目指した自由進度学習の取組|文部科学省

自由進度学習のメリット・デメリット

自由進度学習は一人ひとりの理解度や関心に合わせて学習に取り組めるメリットがある半面、デメリットもある学習方法です。ここでは具体的なメリット・デメリットについて解説します。

【メリット】子どもが自分のペースで学習を進められる

子どもが自分のペースで学習を進められるのは、自由進度学習のメリットです。

得意な教科や単元で理解するのが早ければ、どんどん次の課題に取り組んで、得意なことを伸ばしていけます。苦手な教科や単元であれば、基礎を繰り返し学習して十分理解してから応用に進むことも可能です。

何にどのように取り組むかを、子どもが自分で決められるのもメリットといえます。自主性を高めるのにも有効でしょう。

先生から見たメリットとしては、子どもがどこにつまずいているかが明確になる点があげられます。どこまで理解できているか、何が分からずに困っているかが見えやすくなるため、適切にサポートしやすくなります。

【デメリット】きめ細やかなサポートに必要な教員の不足

一人ひとりの学習進度に合わせて、先生が適切なサポートを行うには、十分な人数がいなければいけません。サポートが不十分になれば、自由進度学習のメリットが生かせない可能性があるほか、学習指導要領で定められている内容を進められない可能性もあります。

学習が子どもの自主性や積極性に委ねられてしまう点が、デメリットになることもあるでしょう。もともとの学習意欲が低い場合には、バランスよく学習を進めるのが難しい場合もあります。

広がっている自由進度学習を知っておこう

自由進度学習は「個別最適な学び」と「協働的な学び」の実現に資する学習方法として注目されています。子どもが自分の理解度や興味関心に合わせて学習できるため、得意なことを伸ばしつつ、自主性を高めていくことにもつながる学習方法です。

一方で、自由進度学習の良さを生かすには、先生による適切なサポートが欠かせません。十分な人数がいない場合には、計画通りに学習が進まない可能性もあるでしょう。

メリット・デメリットの両面がある自由進度学習ですが、実際に導入する事例が広がっています。一斉授業と異なる学習方法について、どのようなものなのか知っておくとよいでしょう。

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構成・文/HugKum編集部

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