「ホームスクール」とは? 学校の出席単位になる? 法律事情やメリット、課題も解説【最新教育トレンドを知る】

学校以外での学習方法を検討している家庭にとって、「ホームスクール」は新しい選択肢として活用できる可能性があります。ホームスクールの基本的な定義や、海外と日本の状況について確認しましょう。また、メリットや課題も解説します。

ホームスクールとは何か

ホームスクールは、不登校の問題や学校が合わない児童・生徒の新たな学習方法として、注目を集めています。一体、どのような学習方法なのか、基本的な定義について確認しましょう。

学校に通わず家で学習する教育方法を指す

ホームスクールは、英語の「Home(家)」と「School(学校)」を組み合わせた言葉です。名称のとおり、学校に通わず自宅を拠点に学習を進める教育方法を意味します。

例えば、親が子どもに勉強を教えるほか、オンラインスクールや家庭教師、オンライン教材の活用も考えられます。

細かい規定は設けられていませんが、原則として学校に通わず、家を拠点として学習を進めていれば、ホームスクールとみなされます。

海外と日本のホームスクール事情

海外と日本では、ホームスクールに対する扱いが異なることがあります。国際的にはどのような扱いになっているのでしょうか? 日本での事情も含めて解説します。

ホームスクーリングが正式に認められている国もある

アメリカを中心に、主に欧米ではホームスクーリングが正式に認められています。

法律上、ホームスクーリングが認められている国では、一定の条件を満たすと家で学んでいても学校教育と同等の教育を受けていると認定され、学校に通う必要はありません。

義務教育であっても家での学習が認められるケースが多いですが、学力検査や学習記録の提出を義務としている国もあり、日本よりも具体的な規定があります。

日本では正当な事由があれば違法にはならない

日本の法律にはホームスクールに関する具体的な定義はありませんが、学校教育法によっていくつかのルールが定められています。

まず、保護者は子どもを小学校・中学校に就学させる義務があり、保護者の都合で子どもに義務教育を受けさせないことは認められていません。

しかし、就学義務は保護者に課されており、正当な事由や適切な手続きを踏めば学校外での学びを選択できる場合があります。

子どもの不登校やどうしても学校が合わないなどの事情があれば、ホームスクールで学んでいても直ちに違法とはならないでしょう。

出典:学校教育法第16条 | e-Gov 法令検索

ホームスクールのメリット

ホームスクールには、いくつかのメリットがあります。日本でホームスクールを活用するのは難しいものの、子どもが学校に通えないときの代案としてどのようなメリットがあるか把握しておきましょう。

個々のペースや興味に合わせた教育ができる

学校では、学年ごとに決まったカリキュラムで学習が進んでいきます。ある程度の配慮はあるものの、個別の成長や学力に合わせた授業は難しいでしょう。

ホームスクールでは、学ぶ対象が1人のため、子どもの成長や興味に合わせた学習ができます。必ず◯◯を◯歳までに学ばなければならないといったルールも存在しないため、柔軟な対応が可能です。

子どもが学校の授業についていけないときや、高いレベルの学習に興味があるときなど、さまざまなケースでメリットが生かせるでしょう。

学校に関連する悩みやストレスがなくなる

ホームスクールを活用すると、原則学校に通う必要はありません。学校に関連する悩みやストレスは、ホームスクールによって軽減できるでしょう。

例えば、いじめ・人間関係・授業内容について悩んでいる生徒の場合、家で学習することで問題の多くは改善されます。

また、通学時間が長すぎる、体質の事情で午前中に調子が悪いなどの問題も、ホームスクールであれば対応が可能です。

日本でのホームスクールの課題と活用方法

海外ではホームスクールに関する規定や法律が充実している国もありますが、日本では課題もあります。考えられる課題と併せて、活用方法についても確認しましょう。

【課題】成績評価反映には要件を満たす必要がある

日本でホームスクールを活用する場合、学校の成績評価として認められるには要件を満たさなければなりません。

ホームスクールの定義は幅広く、どこまでを学校の出席・評価として認めるかは、当該学校の教育課程との適合性や学習計画・記録等の要件を踏まえ、校長が判断します。

現状はすべてのホームスクールによる学習が、学校の出席・評価として認められるとはいえず、課題は多いでしょう。在籍している学校の成績評価として認めてもらいたい場合は、学習記録や方針が明確なフリースクールの方が認定されやすいといえます。

出典:「不登校児童生徒が欠席中に行った学習の成果に係る成績評価について(通知)」令和6年8月29日:文部科学省

【課題】保護者負担が大きく教育の質にばらつきが出る

現状、日本ではホームスクールを活用する場合、保護者の負担が多くなります。学習方法や教材の提案、子どもとの質疑応答などは保護者が行う必要があり、さまざまな配慮が必要です。

場合によっては、経済的な負担も増える可能性があります。子どもが在宅することによって発生する光熱費・食費・教育費に加えて、親が時間を取られることによる収入減なども課題といえるでしょう。

また、保護者がすべての対応を任されることで、教育の質にばらつきが出ることも問題です。学校教育のほうが優れているとは限りませんが、質の差が出ることによって学習がうまく進まない子どもが出てくることも考えられます。

【活用方法】新たな学びの手段として活用が可能

日本ではホームスクールの活用が難しく課題が多いものの、学校やフリースクールに通うことが難しい児童・生徒にとっては魅力的な仕組みです。

自宅のみで学習ができ、ある程度自由なカリキュラムを組めるため、学習を続ける新しい手段として活用できます。

特に、一定の要件を満たすことができれば、学校の出席として認められるケースもあるため、今後学校に戻りたいと考えたときや、進学の際に復帰しやすい環境を整えられるはずです。

ホームスクールは課題も多いが注目される教育法

ホームスクールは、自宅等を拠点に学習を進める教育形態全般を指します。しかし、日本では義務教育の間、原則として保護者が子どもを学校に通わせる義務があり、自宅学習の法整備は進んでいません。

海外では法律でホームスクールが認められている国もあり、多様な選択肢の1つとして活用されています。日本ではまだ活用の範囲が狭いものの、不登校や学校に馴染めない子どもの学習方法として注目されつつあります。

今後、ホームスクールに関する議論が進んでいけば、子どもに合わせた学習を取り入れることもできるかもしれません。

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構成・文/HugKum編集部

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