木下ゆーきさんと辻堂ゆめさん。子育てインフルエンサー×ミステリ作家が初対談! 互いに“3人育児”のありのままのトークには、子育てのヒントがたくさん!

3人の子どもの親同士という共通点がある、ミステリ作家の辻堂ゆめさんと、子育てインフルエンサー木下ゆーきさんの対談が実現! 辻堂さんは育児にまつわるエッセイをまとめた『ミステリ作家、母になる』を発売したばかり。木下さんの育児動画は以前から視聴していたそうで、そんな木下さんとの子育てトークは、初対面とは思えないほどさまざまな会話が飛び交い、子育てのヒントも数多く明かされました。

自身が3兄弟であり、子どもも3人という共通点がある2人

――辻堂さんは以前から木下さんの動画を視聴していたそうですね。

辻堂さん:この間も木下さんの食卓の風景を撮影したYouTube動画を見ていたら、お子さんがなにかを言うたびにうちの5歳の長女が大爆笑。大人は木下さんの発言で笑うんですけど、子どもはお子さんが「冷た~い」とか言っているだけでも面白いらしくて。親子で別の部分で楽しんでいます。

木下さん:いやーうれしいですね。いちばん下の子が生まれる前、4人家族だったころの動画ですね。真ん中の娘が末っ子だったころだと思います。

――辻堂さんは昨年3人目をご出産され、お互い3人のお子さんがいますね。

辻堂さん:木下さんは大先輩です。うちは今5歳、4歳、1歳で、学年的には2学年差と3学年差になります。

木下さん:みんな一緒に小学校に通える時期が1年だけあって、エモいですね。

辻堂さん:私自身もまったく同じ年の差の3姉弟なんです。自分がいちばん上なんですが、弟2人と小学校に1年だけ通ったのがいい思い出で、1年生の弟が入ってきたときは喜びがありました。

左/辻堂ゆめさん 右/木下ゆーきさん

木下さん:うちは13歳、6歳、3歳です。1番上と真ん中が6歳差で、真ん中の子が小学校に入るタイミングで上の子が中学校に入ったので、一緒に通えませんでした。

3人だと式典が大変で、この春は卒業式、卒園式、入学式、入学式、入園式があって。入学式をはしごするっていう(笑)。しかも入園準備で子どもの名前をめちゃくちゃ書くじゃないですか。僕も絵本を出したタイミングだったので、自分のサイン会なのに子どもの名前を書きそうになりました。

辻堂さん:あはは(笑)。私も4月に引っ越しをした関係で、保育園の申込書類を3人分書かなきゃいけなかったんですが、手がつりそうになりました。子ども関連は変わらず手書きのものが多いですよね。

木下さんは、お子さんは3人欲しいと思っていたんですか?

木下さん:僕も妻も3人兄弟なので、3人欲しいと思って、決めていたような感じではあります。

いちばん上の子がイヤイヤ期のとき、当時シングルファーザーだったので、ほんとに余裕がなくて。毎日声を荒らげて子どもを怒って、寝顔を見ながら反省して、自分を責める夜を過ごしていました。でも、2人目のときのイヤイヤ期が始まると「懐かしい!」って思ったんです。3人目は「これで最後なのかぁぁぁぁぁ」って。

辻堂さん:最後だと思うと余裕も愛おしさもありますね。

お弁当はどちらもパパが担当! 3人目は効率重視に

――どちらのご家庭もパパがお弁当担当だそうですね。

木下さん:普段は給食ですが、行事のときは僕が作っています。特にいちばん上の子のときは、周りがママに作ってもらった可愛いキャラ弁のなか、僕が作った“ザ!”お弁当、いや“ジ! ”お弁当! ですね。それだとかわいそうだなと、無理してキャラ弁のようなものを作りました。

行事のお弁当作りは木下さんが担当。

辻堂さん:うちも夫が料理担当です。だからお弁当も全部夫が作っていますが、当時通わせていた幼稚園ではみんなママが作っていて、先生も「みんな、ママになに作ってもらったの?」って、ママって自然と言っちゃうんです。

それでうちの子が年少のときに混乱しちゃって、「ママにお弁当作ってほしい」って。「パパがせっかく作ってるのになんで?」と聞いたら、「みんなママに作ってもらってるのに、なんで私はパパなの」と、パパも複雑な感じになっちゃったことがありました。

木下さん:僕の姉が幼稚園のころに、運動会の親子ダンスでみんなはママが行く中、うちは父親が行ったら「うわー! やだー!」ってなっちゃったって。ちょっとそれに近いかもしれないですね。

辻堂さん:今、男性も女性も平等に育児に参加する世の中になってきていると思いきや、環境によってはやっぱりママがっていうケースも多くって。うちの夫は闘争心を燃やして、遠足の写真でほかの子のお弁当を見て「そっか、こういう風にしなきゃいけなかった。おにぎりドーン! じゃダメだったんだ」って反省していました。

辻堂家もパパがお弁当担当。
まだまだ「ママが前提」となっているシーンが多い、と言います。

木下さん:すごいですね。遠足の写真すら見ていないパパもたくさんいますよ。僕は、今ではキャラ弁はやっていなくて、冷凍食品にものすごく助けられています。

辻堂さん:3人目になるとだんだん効率化しますよね。

木下さん:変わってきます。1人目では一大イベントだったものが慣れているものに変わってくる

子どもが熱出したときも、最初の子は夜遅くに39度の熱が出ただけで「夜間救急に連れて行かなきゃ」と焦るけど、2人目、3人目になると、同じように熱が出ても「機嫌もいいし、水分取れてる……なんなら解熱剤もあるしちょっと様子を見よう」って思える。苦戦していた座薬を入れるコツもわかってきますしね。

辻堂さん:本当にそうですね。だんだんと慣れてきちゃう。熱もおでこを触った感じで何度ぐらいかわかるようになり、それには子どもに驚かれました。

「木下さんの“横と比べるんじゃなくて縦で比べる” “弱みを見せていい”にそう考えればいいんだって」(辻堂さん)

――ではお子さんが3人いると、大変よりは楽しさが増すイメージですか?

木下さん:大変は大変ですけど、1人目に比べて何が楽かって、いつかちゃんと終わりが来るとわかっていることだと思います。最初のイヤイヤ期は終わりの見えないトンネルをずっと走ってる感覚がつらかったんですけど、2人目、3人目はいつか終わるってわかっているから。

辻堂さん:確かになかなかしゃべらない、歩かないとかも、上の子はこうだったからこのぐらいの時期までは様子を見ようと思えたり。

木下さん:上の子の友だちに発語が遅かった子がいたけど、今めちゃくちゃしゃべってるよなとか、周りの子のことも見えてきます。1人目だと周りに同じぐらいの年の子しかしないから、焦ることも多いです。

辻堂さん:比べるといえば、木下さんの著書の中に、“横と比べるんじゃなくて縦で比べる”と書かれていて、「なるほど! そうやって考えればいいんだ!」と思ったんです。

木下さん:他の子じゃなくて、その子ども自身の成長で比べる。しゃべるのが遅くても、ちっちゃいときは寝返りすらできなかったのが、今は普通に歩くことができてるってすごく成長しているから。

子どもの周り(横)ではなく、その子の過去(縦)で比べる、と木下さん。

辻堂さん:自分ではあまり考えたことのない子育てのコツが書かれてて、いちばん「あ!」と思ったのが、子どもに弱みを見せちゃおうって。「仕事で疲れたんだよね」みたいなことも言っていいと。自分が弱みを見せない母親に育てられたこともあり、子どもに疲れたところや機嫌が悪いところを見せないようにしようと思っていたんですが、確かに弱みを言ってくれる親の方が、子どもも弱みも言いやすいよなと思ったり。思い返せば、私は親に「頭が痛い」なども気軽に言えなかったですね。

木下さん:今日仕事行きたくないなぁとか、今日めっちゃすべったとか(笑)。自分の失敗もちゃんと言うようにします。成功も話していて、自分がウケたときは大げさに言っちゃってる節がありますね。「笑い声でスタジオが揺れたもん」とかね(笑)。

「子育てに悩み苦しんでる人に、くすっと笑えるコンテンツを」(木下さん)

――おふたりともエッセイや子育ての動画で子どもにまつわる活動をされています。それぞれどのような想いで活動されていますか?

木下さん:僕がインフルエンサーとして活動することになったのは、2018年12月に当時のXで「おむつ替え動画」がバズったのがきっかけですが、実はその年の頭から、子育てに関する笑いを交えた情報発信を始めていました。そのきっかけは当時愛知県豊田市で起きた虐待事件です。

そのとき僕は、シングルで子どもを育てるため、お笑い芸人を辞めて実家がある名古屋に戻り、IT系企業の会社員をやっていました。たまたま見た新着ニュースで、生後11ヶ月の男の子を床に叩きつけて死亡させた母親逮捕って。

なんてひどいことをするんだろうと思っていたら続報で、亡くなった赤ちゃんは三つ子だったと。お母さんは1日24回ミルクをあげて、連続して1時間も眠れない日が続いてたそうです。それを知って自分も「子どもが三つ子だったら同じことしちゃってたかも」って。

そう思うくらい、僕も子育てに悩み苦しんでいた時期があったんですね。息子が寝てくれなくて真っ暗な部屋で2時間抱いて歩き続け、やっとの思いで寝かしつけたあとで開いたSNS。そこでは、未婚の友人が居酒屋で肩を組んでビールジョッキを持っている……それを見て孤独感に苛まれた夜を思い出して。同じように子育てに悩み苦しんでる人がSNSを開いたときに、くすっと笑えるコンテンツを発信できないかなと思ったんです。

子育てに悩み苦しんだ時期が、木下さんの発信の原点。

辻堂さん:本当に、救われている人が多いと思います。

木下さん:そうだとうれしいですね。実際にコメントで「子どもを産んでからいっぱいいっぱいで笑えてなかったんですが、木下さんの動画で久しぶりに声を出して笑いました」みたいなのを見ると、自分が目指してたのが形になっているのかなと。

辻堂さん:子育てっていろんなタスクが発生するので、隙間時間で笑えるのがいいですよね。テレビ番組を見て笑おうと思うとまとまった時間が必要で、その間に子どもが泣いちゃったりしますけど、SNSの短い動画はすぐに見られます。

木下さん:そうですね。辻堂さんのエッセイについてもお話を聞きたいです。辻堂さんは東大出身なんですよね?

辻堂さん:そうです。でも法学部だったので、小説は中学生からの趣味でした。大学4年生のときにデビューしているのですが、文芸系サークルにも入ってなかったので、周りからは驚かれましたね。

今回の子育てエッセイは、子どもが生まれた後ぐらいのタイミングでお話をいただきました。その直前、つまり子どもを産む前に『十の輪をくぐる』という子育てを主題にすえた小説を書いたんです。なんでその話を書いたかと言うと、ある男性編集者さんに「女性作家は結婚して子どもが生まれると、みんな子育ての話を書きがちで残念だ」と言われたんです。個性がある女性作家もみんな同じような方向に行ってしまい残念だ…という意味合いだったと思うのですが、当時独身だった私はひねくれた考えになって「じゃあ、子育てのことを知らない独身のうちに子育ての話を書いてやる」って。自分の経験に基づかない何の色もついてないときに、子育てのことを一生懸命調べて作品を書こうと思って。

そのあとに子どもが生まれて、子育てエッセイの依頼があったので、これは私なりの答え合わせになるかもしれないなと日常を綴り始めました。

木下さん:子どもが生まれてどうでしたか?

辻堂さん:本が完成する前の修正作業のときには生まれていて、「子どもが20分でも30分でもテレビに集中していられるうちに」みたいな描写に「いや、子どもは20分も30分も集中しない! 5分でも10分でもだ!」って思って赤字を入れて。答え合わせになりました。

子どもが生まれて、実際の子育てを知った辻堂さん。

「専門家ではないので、ありのままの姿を書いていく」(辻堂さん)

――3人育児の先輩でもある木下さんに、辻堂さんから聞きたいことはありますか?

辻堂さん:うちの年少の息子が、木下さんの絵本『はぶらしロケット』にハマっていて、寝る前に毎晩読んでいるんです。うちでは仕上げ磨きしようとすると口開けてくれない状況が続いて、私は「虫歯になっちゃうよ」とか「歯が痛くなっても知らないよ」みたいな脅しで開けさせていましたが、絵本の通りやっていたら喜んで口を開けてくれるんです。ああいうのってどうやったら思いつくのかなと。面白がらせながら目的を実現する、のような。

木下さん:僕も全然磨かしてくれなくて、半ば諦めみたいな感覚でやってみたら、それがたまたまハマったんです。でも毎回家でやるかって言ったら、やってないですよ。自分の心と時間に余裕のある時間しかできないので。この間も仕上げ磨きを嫌がられたので、「わかった、じゃあやらない」って。

辻堂さん:そうなんですか!? ちょっと安心しました。

木下さん:おもちゃの片付けのときに運動会の曲を流して「さあ始まりました。全日本~♪」って言うと、子どもが必死に片付けるので、その動画もアップしたことがあるんですが、1年に1回~2回やるかやらないかで、たいていは「出てるおもちゃ全部捨てるよ」って言ってます。

専門家の人は「脅しの言葉を使ってはダメ。大人同士ではそんなお願いの仕方しないですよね」って言いますけど、「大人同士じゃないし!!!!」って。こっちだってその瞬間だけイライラしてるわけじゃなく、いろんなことが積み重なってきて怒ってるわけでってなります。

木下さんも、毎日理想的な対応ができるわけではなく、
余裕がないときは脅し言葉を使うことも普通にある、と言います。

辻堂さん:本当にそうですよね。

木下さん:アンガーマネジメントの専門家は6秒待てばイライラは収まると言いますが、6秒もあったら子どもはまた何かしてるじゃないですか。そんな待ってられないんだから!

そういう面で言うと、子育て関連の本のこうするべきとかこうあるべきみたいなのって、読み手のメンタル状況によってはすごいプレッシャーになると思うんです。でも、辻堂さんの著書『ミステリ作家、母になる』は細かい描写に“わかる”っていう共感というか、うちだけじゃないんだと助けになる人たくさんいるだろうなって思いました。

辻堂さん:私は子育ての専門家ではないので、ありのままの姿を書いていくしかないかなと。

木下さん:専門家みたいな扱いになるのは嫌ですよね。100人いれば100通りの子育てがあるわけで、その子についていちばん詳しいのは専門家よりもその子の親だと思うので。僕も「うちはこうしてる」くらいだったら言えますが、なにかアドバイスするなんてことはできないです。

本に関しては、社会のこんなところがよくないっていう毒が若干入っていたのもよかったです。保活についても、うちも上の子で苦労したことがあったので。

辻堂さん:杓子定規にやられちゃうから、理不尽に感じることが多いですよね。自治体によってさまざまですしね。

辻堂さんの子育てエッセイ『ミステリ作家、母になる』には
辻堂さんの感じた率直な想いが綴られています。

木下さん:僕が住んでいる広島県福山市は、公立の幼稚園や小学校に併設されている保育所が結構あるんですけど、その保育所は2年保育が基本で、年少は別のところに入れて年中から近くの園に入れるとか、年中になるまで自宅で見る人が多分いるんです。そういう人たちは無視して待機児童0ですって。絶対いるだろうに。

辻堂さん:私もどうやったら待機児童に数えてもらえるのかと思って調べたことがありますね。市内の保育所を全部書いた上で落ちたらって書いてあって。えーって。

木下さん:政治家には伝わっていない細かいところが、本から伝わりました。

辻堂さん:ありがとうございます。

互いの子育てする姿から学びを得て、共感する場面も

今回の対談では、それぞれの著書の感想を伝え合い、互いの子育てから学びを得たり、共感したりしたことがわかりました。そして、いつも明るくユーモアと余裕たっぷりに子育てをしているイメージの木下さんでさえ、それは「自分の心と時間に余裕のある時間しかできない」と明かしてくれたのも印象的。これには日々子育てに奮闘する辻堂さんも、同席したスタッフも自分を肯定されたような、救われた心地になりました。

また、実は辻堂さんもIT企業勤務経験があるそうで、特にお気に入りだという木下さんの動画「もしも意識高い系赤ちゃんがいたら」の話で盛り上がる場面も。興味がある方は、ぜひ木下さんの動画や絵本、辻堂さんの著書をチェックしてみてくださいね。

辻堂ゆめ 小学館 1,815円(税込)

東大卒の頭脳派ミステリ作家である著者は、データサイエンティストの夫とともに、家事や育児もすべてGoogleスプレッドシートで進捗管理。育児も仕事も完璧にこなせている……はずだった。

一人のミステリ作家が3児の母になるまでの4年間を綴った〝普通じゃない〟育児エッセイ!

お話を聞いたのは

辻堂ゆめ ミステリ作家

3児の母であり、小説家。1992年神奈川県生まれ。2015年、第13回『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞を受賞し『いなくなった私へ』でデビュー。『トリカゴ』で第24回大藪春彦賞受賞および第75回日本推理作家協会賞候補、『十の輪をくぐる』で第42回吉川英治文学新人賞候補。2022年、『卒業タイムリミット』がNHK総合で連続ドラマ化。主にミステリーを執筆。
X:@YumeTsujido Instagram: @yumetsujido 公式HP:辻堂ゆめ Official Website

お話を聞いたのは

木下ゆーき タレント・子育てインフルエンサー

元シングルファーザーで3児のパパ。子育てインフルエンサー、タレントとして、ママパパに向けたクスッと笑える育児コンテンツをX・Instagram・YouTubeで発信している。チャイルドカウンセラー資格あり。SNSの総フォロワー数は200万人以上。著書に『はぶらしロケット』(Gakken)、『#ほどほど育児 失敗したっていいじゃない』(飛鳥新社)、『世界一楽しい子育てアイデア大全』(KADOKAWA)がある。

X:@kinoshitas0309  Instagram: kinoshitayuki_official TikTok:@kinoshitayuki_official YouTube:@kinoshitayu-ki 公式HP:「ゆーきさんち」

取材・文/長南真理恵 撮影/田中麻以

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