
対話で聞く! 子どもと「格闘技」のいい関係
「格闘技=危険・乱暴」と思われがちですが、実は「礼儀」や「優しさ」を育てるスポーツ。親が知っておきたい「格闘技の本当の魅力」について、今木が大谷選手に率直に聞いてみました。
RISU代表 今木 智隆(以下、今木):今回はプロキックボクサーの大谷翔司さんにお越しいただきました。
大谷翔司選手(以下、大谷):よろしくお願いします。

格闘技って危なくない?──強くなるだけじゃない価値とは
今木:たとえば、格闘技にあまり馴染みがない親御さんだと、「え? 格闘技って危なくない?」「なんでやらせるの?」と疑問に思うことが多いと思うんですよね。
僕自身は格闘技の経験があるので「強くて損はない」と思っていますし、心身ともに鍛える意味でも格闘技は良い選択肢だと思っています。ただ「ケガが心配」「暴力的にならないか不安」という声もよく聞きます。
子どもに無理のない形で取り入れていくとしたら、格闘技ってどんなふうに役立つと感じますか?
大谷:まず大前提として、安全面に配慮した指導をしているジムを選ぶことが大切です。格闘技は確かに本質的には「危険なスポーツ」かもしれません。でもそのぶん、安全管理はとても重視されていて、ちゃんとした道場や教室では「ケガをしないための工夫」がされています。
そのうえで、格闘技から得られることは本当に多いんですよ。たとえば、自分の心と身体の状態をコントロールする力や、相手と向き合う中で身につく集中力・判断力。さらに、痛みや緊張を乗り越えることで、自信や自己肯定感も育まれていきます。
今木:相手と向き合うことで「自分がどのくらい強いのか・弱いのか」を客観的に知ることって、すごく大切ですよね。 万が一のときに慌てない、たとえば護身のような場面で冷静でいられるのも、格闘技ならではの効果だと思っています。

今木:僕自身、現在も空手をやってまして、特に子どもの頃に感じたのは、単に身体が強くなっただけじゃなくて、「気持ち」も強くなっていく感覚がありました。キッズコースだと、どれくらいで変化が見えてきますか?
大谷:1年くらい経つと自信がついてくるお子さんが多いですね。
あとは私自身もそうですが、試合の緊張感を経験することで、メンタルが育つというか、自然と度胸がつくんです。格闘技って喧嘩ではなく、礼儀や優しさもセットで身につくスポーツなんですよ。
「負ける経験」が子どもを強くする
勝ち負けがつく世界だからこそ、負ける経験を通じて育つ心の強さがあります。子どもが困難を乗り越える力をどう育てていくのか、聞いていきましょう。
今木:格闘技って「もともと強い人がやるもの」って思われがちだけど、実際には「弱さを知って、それを乗り越えていくプロセス」が大きいですよね。
大谷:実は僕も、もともと弱くて強くなりたいというきっかけでキックボクシングを始めました。
負けたり、辛いときがあったりしたら、いつかプラスにする、肯定できるところまでもっていくことが、すごく大事なんです。
今木:なるほど! 痛かったり、負けたり、辛いときを乗り越える心構えとか、フィジカル的に苦しいときとかは、どう乗り越えました?
大谷:負けたときって本当に悔しいし、心が折れそうになることもあります。でも、その経験をどう受け止めるかで大きく変わるんです。
ただ落ち込むだけで終わるのか、それとも「次はこうしよう」と自分を成長させる糧にできるのか。そこが、強さの分かれ道だと思います。僕自身も、負けるたびに自分を見つめ直してきました。だからこそ、負ける経験は子どもにとって、とても価値のあるものだと思います。

次の目標に向かう「挑戦心」を育てる
ゴールにたどり着いても、それで終わりじゃない。格闘技を続ける子どもたちが「もっと頑張りたい」と思えるのは、挑戦の連続だから。努力を続ける力と、健全な競争心の大切さについて語り合います。
今木:チャンピオンになってベルトを持っても、そこで終わりじゃないですよね? モチベーションってどう保っているんですか?
大谷:そうですね、実は上には上がいるので、ベルトをとった瞬間はうれしいのですが、次のことを考えていますね。一つの結果に満足せず、次の目標に向かっていく、それが格闘技の面白さでもあります。
今木:いまの子育てって、「勝ち負けをつけない」「競わせない」文化が強いんですよね。
私は、しっかりと管理された環境での勝ち負けは、子どもにとってすごく価値がある経験だと思っています。だから格闘技って、いまの時代だからこそ意味があると思うんです。
大谷:そう思います。格闘技は、身体だけじゃなく心も鍛えるスポーツ。キックボクシングなどの競技も、安全に配慮しながら、大人も子どもも成長できる仕組みがちゃんとありますよ。
今木:安全管理は大切だし、習い事として保護者が検討する際には重視したい一番のポイントですね。
大谷:おっしゃる通りです。指導者やジムなどの見極めをしっかり確認していただきたいです。
実際どんな練習? 体幹も集中力も鍛えられる!
格闘技の練習ってどんなことをするの? 運動が苦手な子でもできる? 保護者が気になる実際の様子について教えてもらいました。
今木:子どもの練習って、どんなことから始めるんですか?
大谷:筋トレもするし、走り回ったり、マット運動をしたりラダー*でステップワークをしたりなど、トレーニングというより、遊びながら楽しくというイメージです。
*ラダーとは:床に置いたはしご状のトレーニング器具(やロープ)を使用して、走ったりステップをふんだりしてバランス感覚や筋トレを行う運動
今木:体操教室に近いイメージでしょうかね。個人的には、格闘技を通して体幹が強くなった気がしてますがどうでしょう?
大谷:そうですね。キック動作では足の大きな筋肉を使うので、全身のバランスが自然と鍛えられるんです。足の大きな筋肉を使うので運動量も多いです。姿勢もよくなりますよ。
今木:そうですよね、きちんとした姿勢で蹴りを入れるって、全身のバランスを保たないとできないですね。

大谷:格闘技は全身運動になるので、フィットネスがわりとして女性が利用しているケースも多いです。
格闘技っていうと保護者の方が身構えるので、筋力や運動神経だけでなく、心も育てられるスポーツとして、お子さんの習い事の選択肢に入れていただけるといいかもしれないですね。
[まとめ]格闘技は、心も体も「バランスよく強くなる」スポーツ
今木:では最後に読者の方々にひとことお願いします。
大谷:格闘技は「強くなる」だけのスポーツではありません。身体を鍛えることはもちろんですが、礼儀や感謝の気持ち、あきらめない心、そして悔しさをバネに前に進むメンタルも自然と育まれます。次の目標に向かって挑戦し続ける気持ちは、子どもたちの将来にとって大きな力になるはずです。
* * *
格闘技は、筋力や運動神経だけでなく、「心のしなやかさ」や「自分を信じる力」も育てるスポーツ。
礼儀・感情のコントロール・挑戦する心、そんな「人としての土台」を、無理なく楽しみながら育める習い事として、いま注目を集めています。
「強さ」=「暴力的」ではなく、「礼儀・自信・継続力」。 そんな新しい価値観に触れるきっかけとして、格闘技を見直してみるのも、いいかもしれません。
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対談者プロフィール
愛媛県北宇和郡出身。陸上自衛隊 徒手格闘訓練隊を経てキックボクサーに。第3代KNOCK OUT-BLACKライト級王者、第6代INNOVATIONライト級王者のタイトル保持者。戦績は39戦25勝(16KO)11敗3分で、得意技はナパーム・ストレート。『KNOCK OUTクロスポイント渋谷』所属。
京都大学大学院エネルギー科学研究科修了。ユーザー行動調査・デジタルマーケティングのbeBitにて国内コンサルティング統括責任者を経験後、2014年、RISU Japan株式会社を設立。小学生の算数のタブレット学習教材で、延べ30億件のデータを収集し、より学習効果の高いカリキュラムを考案。国内はもちろん、シリコンバレーのスクール等からも算数やAI指導のオファーが殺到している。HugKumでの過去の記事はこちら≫
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協力/RISU Japan株式会社、 構成/HugKum編集部
