「叱っても変わらない…」低学年までの子どもの行動は“気質”が9割だった。非認知能力の専門家 中山芳一先生に訊く、友だちトラブルや行き渋りなど、困りごとへのアンサーは?

友だちのとケンカが絶えない…引っ込み思案で学校に行き渋る…座っていられない…宿題に何時間もかかってしまう…など、お子さんの性格によって子育ての悩みは多種多様。何度叱っても子どもが言うことを聞いてくれない、と悩んだ経験はありませんか?
それらの悩みは子ども本来の持って生まれた”気質”が影響しており、実は叱っても意味がないことが多いそうです。幼児期の発達に詳しく、非認知能力の研究者でもある中山芳一先生に、小学校低学年くらいのお子さんに多いお悩みの解決策を伺ってみました。

小学校低学年までの子どもの行動は、“気質”の影響が大。叱っても意味がありません

幼児期から小学校低学年ごろまでの子どもは、生まれ持った“気質”の影響を強く受けています。そのため、“気質”を変えようとする=無理に行動を変えようとしても、子どもの自己肯定感を損なうばかりで、何の効果もないということをまずは知っていただきたいと思います。

たとえば、じっと座っていられないお子さんに「落ち着きなさい」「あなたは落ち着きのない子ね」などと叱っても、子どもの“気質”を否定しているだけで、行動が改善するわけではありません。

必要なのは、“気質”を責めることではなく、周りに迷惑をかけてしまうような行動をしたときだけ、その場で「今はやめようね」と、行動にストップをかけることです。変えるべきは子どもの“気質”ではなく、問題となる“行動”への対処なのです。

注意は「表情」や「仕草」でシンプルに!

この時期の注意の仕方はとてもシンプルです。感情的にならず、その場で具体的に行動のみを指摘し、言葉よりも表情や仕草で簡潔に伝えることが効果的です。大きな声を出す必要もありません。

たとえば、顔をしかめて両手でバツを作る、険しい表情とともに首を左右に振る、など。「今はその行動はだめだよ」というメッセージが端的に伝わります。

もっともやってはいけないパターンは、「あのときは最悪だった」「あのときの行動は良くなかった」など、後から再び話を持ち出して諭そうとすることです。過去を蒸し返したり、他者と比較したりする言葉は、子どもの自己肯定感を傷つける可能性があります。

多くの大人は、つい自分の都合のいいように、子どもの行動を変えようとしてしまうものです。しかし、幼い子どもにとってそれは「自分を否定された」と感じる原因になります。幼少期のお子さんが、物事を自分中心に考えているのは当たり前のことです。そういう時期だと捉えてください。

叱ったことをレコーディングして冷静に。習慣づけたいことは何度でも褒めて

保護者が子どもの気質を理解していても、まわりまでそうとは限りません。先生などから注意されることが多いと、どうしても親として叱らざるを得ない状況も出てくるかと思います。そういうときには、叱ったことをレコーディング(メモ)してみてください。そして、なぜ子どもを叱ったのかについて考えてみてください

実際は「あそこまで叱るようなことじゃなかったな」と振り返るパターンが多いです。保護者が一度“叱るモード”に入ってしまうと、お子さんをメタ認知できなくなってしまいます。本当に叱らなければならないことなのかを見極めるためにも、その日にお子さんに叱った内容を記録して、自己分析してみましょう。

肯定的な側面を伸ばして

また、保育園や小学校の先生から注意を受けることの多いお子さんには、同時に肯定的な側面を褒めて伸ばしてあげることが重要です。

子どもに習慣づけたいことがあるときは、何度でもそれを見つけて褒めてあげることが近道です。その逆で、習慣にしてほしくないことは、その場で短く注意し、多くは触れないことがコツなのです。

たとえば、電車やバスの中で暴れてしまうお子さんには、「それはやめて!」とその場でその行動だけを注意します。そして、静かに座っているときに、何度でも褒めてあげましょう。

心理学における『ロサダ比*』を参考に、一つ注意をしたら、それ以上に褒めるポイントを伝えるようにしていくと、さらに効果的です。

*心理学者のマルシャル・ロサダとバーバラ・フレデリクソンが提唱した、組織や個人の心理的繁栄に必要な「ポジティブな感情・表現3:ネガティブな感情・表現1」の比率

交友関係のトラブル、行き渋り…個々の困りごとへの対処法

ここからは、より具体的な困りごとの声を見ていきましょう。

友だちとのトラブルが多く、怪我をさせてしまった場合は?

最近の保護者は、園や学校でお子さんがケンカをすることをいけないことだと思っている方が多いように感じます。ですが、友だちとのぶつかり合いは人間関係を学ぶ上で大切な経験です。

ベテランの保育士さんは、子どもたちが自ら学べるような環境を意図的に構成します。砂場で10人の子どもたちが遊ぶ想定の場合、スコップなどの道具を、あえて10人分は準備しません。少ないくらいの数を用意し、「貸して」「いいよ」を学ばせる環境を作ります。そうやって、子どもが自分の心をコントロールする環境を作り、少しずつ我慢を覚えるトレーニングなどを行うのです。

苦手だから避ける、できないからやらせない、という環境は子どもの成長にとってはマイナスです。園や学校であったトラブルは、過度に保護者が介入せず、見守る姿勢を基本と捉えてください。

園に通っている間は、ケンカしてしまった相手とどう仲直りするか、自分の気持ちをどう伝えるのかなど、先生の力を借りながらフォローしていきましょう。

小学生になったら、もう1段階レベルアップ! 謝り方を工夫してみる、言葉だけでいいのか考える、手紙を書いた方が反省している気持ちが伝わるのではないか…などを一緒に考えてみてください。

ただし、学校でのトラブルで物を壊してしまったとか、友だちに怪我をさせてしまった場合は、児童養護義務のある保護者の責任にもなっていますので、電話で相手の保護者に謝っている姿を見せる、一緒に謝りに行くなど、ともに行動してください。

保護者がお子さんにしてあげなければいけないことは、18歳(成人)までに自立させることです。社会人として、相手に怪我をさせてしまったときはどう謝るのか、壊してしまったものはどうするべきなのかを教えてあげましょう。

過保護・過干渉に注意! 信頼と盲信は別です

最近の保護者さんは“子どもを信頼する”ことを勘違いして“盲信”してしまうことが多いように感じます。学校でトラブルがあると自分の子どもの言い分を100%鵜呑みにして、相手が悪いと決めつけてしまう…など。本当に子どもを理解している保護者なら、心の中だけでも「うちの子も言い返したりしているんだろうな」と思えるはずです。

また、学校外で起こったことまで担任の先生に相談するケースも増えてきています。現場の先生たちも全力で頑張っていますが、あれもこれもはできません。いったん家庭内で、子どもと保護者が話し合いをして解決しようとする姿勢も大切です。

学校への行き渋りにはどう対応する?

低学年のお子さんの場合、学校という場所に慣れていない不安から行き渋りをすることが多々あります。私の子どももそういう時期がありました。こういうときは、一緒にいると安心できる友だちを見つけることがいちばんの解決策です。

わが家の子どもの場合は、近所に住む上級生のお兄さんでした。もちろん、同学年の子でもいいと思います。一緒に登校する友だちが見つかると、少しずつ安心して登校できるようになりますよ。

授業中に出歩いてしまうのですがどう注意すべき?

授業中に座って先生の話を聞くという行動は、自己調整能力がないとできないことです。子どもの「自己調整」には4つの発達段階があるので、この段階を理解しておいてください。

【段階1】他者調整:大人に支えられて行う調整
幼児期〜低学年のお子さんは「褒められたい」「注意されたくない」という動機で行動することが多いため、この方法が有効です。

【段階2】共同調整:まわりの人と一緒に促されることで行う調整
「みんなで一緒にやろうね」という言葉がけで促していきます。

【段階3】一部の自己調整:「楽しいから我慢できる」という動機づけがある自己調整
たとえば、「鬼ごっこ」の鬼は嫌だけど、みんなと遊びたいから我慢して鬼をやる段階です。

【段階4】完全な自己調整:やりたくないことでも必要性を理解して取り組める段階
9歳〜10歳頃のメタ認知の発達と関連します。

小学校低学年のお子さんには、最終的に自己調整ができるようになるために、他者調整や共同調整から、段階的にサポートしていく必要があります。学校の先生に協力をしてもらい、段階的にできるように見守っていきましょう。

宿題がスムーズにできずに親子で疲弊している場合は?

そもそも、学校が宿題を出さなければいけないという義務はありません。学校教育法でも明記されていることです。そして、保護者が宿題をさせなければいけないという義務もありません。このことを学校側も保護者側も勘違いしているケースがあります。そして起こっている問題が、子どもの“勉強嫌い”です。

子どもに宿題をさせようとすればするほど、子どもは勉強が嫌いになってしまうのです。今は宿題を完全に出さない学校も増えてきています。宿題をやるかやらないかはお子さんに考えさせ、やった方がいいと思うならやればいいし、やりたくないならやらなくてもいいと思います。やりたいけど一人ではできないのであれば、手伝ってあげればいいのです。

自己調整能力が育つのは小3〜4年生。焦らないで

冒頭で述べたとおり、幼少期から小学校低学年ごろまでの子どもの行動は、本来持っている“気質”が大きく影響しています。小学校3〜4年生ごろが、変容可能な非認知能力(行動)が出てくる時期です。

個人差はありますが、徐々に自分をモニタリングして落ち着くことができるようになる“メタ認知”が発達するのです。低学年のうちは焦らずに、小学校3〜4年生くらいから能力が育ってくるのを見守りましょう。

3〜4年生くらいになると、人間関係の構築の仕方も大人とほぼ同じ感覚になります。子ども扱いせずに、大人と同じ感覚が理解できるようになっていることを意識して向き合ってあげるといいですね。

子育ては特別なものではありません! 自信を持って

先ほどもお伝えした通り、保護者がやるべきことは、わが子が自立できるようにサポートすることです。

保護者のみなさんは、社会と関わり、日々働いていることと思います。その社会人の先輩である保護者が、社会に出るまでに身につけておくべきことを徐々に教えている、という視点で子育てに向き合ってください。

子どもの親であることは生涯変わりませんが、保護者であることからは、いつか卒業するときが来ます。それまでに社会人として大事だと思うことを教えてあげてください。

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お話を伺ったのは

中山芳一 教育者、著作家、学者

1976年1月、岡山県岡山市生まれ、All HEROs合同会社代表社員、IPU環太平洋大学特命教授。日本の教育者、著作家、学者。

・All HEROs合同会社 代表  
・日本子ども若者学会 理事長
・岡山県子ども・若者未来会議 会長
・文部科学省進路指導審査会 委員 
・日本非認知能力協会 会長
・子ども學びデザイン研究所 所長  
・日本放課後児童指導員協会 理事長 ……など

  • 【主な著書】

    ・『非認知能力の強化書』(2025年、東京書籍)

  • ・『教師のための「非認知能力」の育て方』(2023年、明治図書)
    ・『「やってはいけない」子育て―非認知能力を育む6歳からの接し方』(2023年、日本能率協会マネジメントセンター)
    ・『家庭、学校、職場で生かせる!自分と相手の非認知能力を伸ばすコツ』(2020年、東京書籍)
    ・『学力テストで測れない非認知能力が子どもを伸ばす』(2018年、東京書籍)

  • ……など多数

文・構成/鬼石有紀

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