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出産後は先が見えず、母親に向いていないのかなと不安に
――書籍には妊娠が分かったとき、出産の瞬間、新生児の育児までその時々の出来事や気持ちがリアルに記されていて、「これまでの甘ったれた人生では、味わうことのなかった試練」とありました。今改めて振り返って、当時つらかったことはどんなことでしたか?
弘中さん 当時つらかったのは、終わりが見えないことでしたね。1人目なので、いつになったら次のステップに進むのかも分からず、ゴールが見えない。育児はそういうものだと思うんですが、つらかったです。
それと、一言でくくるならばメンタル的なもの。外に出て働きたい思いが強かったので、母親に向いていないのかなとか、この先やっていけるのかなという不安がありました。そういう自信のなさを自分の中でモヤモヤと抱えていましたね。
――産んだ後と産む前とで気持ちのギャップは感じましたか?
弘中さん ありました。産む前は、眠れないとか体重が戻らないとか、抜け毛とか…そういう目に見えることで悩んだり、苦しんだりするかなと思っていたんです。でもそういうことは構う余裕もなかったというか、そこまでつらさを感じなくて、普通に乗り切れた気がします。
実際は自分の内面的なことで悩むことが多かったので、産前に想定していた悩みと違うというギャップがありましたね。
――“モヤモヤ”した気持ちを抱えていたときに支えになったものはなんでしたか?
弘中さん 今思えば、支えになったものはなくて、時間が経過するしかなかったです。その間はずっとつらくて、出産から5か月後に仕事に復帰してからやっとモヤモヤが晴れてきたような感じでした。
着替えを嫌がる2歳児。イヤイヤには「まぁいいか」の精神で
――今、お子さんが2歳になって、個性も分かるようになってきた頃かなと思いますが、どんなお子さんですか。
弘中さん 1人目なのでほかの子と比べる機会があまりないのですが、明るい性格だと感じます。
以前はなんで泣いているのか、なにをしたいのかが分からなくて、これで合っているのかなと思うことが多かったのが、最近はお話ができるようになり、彼女のしたいことが明確になって、それを一緒にする、もしくはサポートするというのが分かりやすくなってきました。
ただ、逆にやりたくないことも本人のなかにすごくあって。とくに娘は毎朝「着替えたくない」というので、私は「あぁぁぁぁ」と頭を抱えています。

――たしかにお話ができるようになってくると、意思が明確になる分、親の都合だけでは動いてくれなくなりますね。お出かけも大変ですか?
弘中さん とにかく娘は着替えたくないので、朝が大変です。うちの娘はパジャマがいちばん好きなので、そのままでいたいんです。私も、もうそれならそれでいいか、と思って(笑)。とりあえずパジャマのズボンだけはき替えさせて、上はそのままでいいよ、って。保育園の先生にも「すみません。うちの子はパジャマが好きなので」と伝えています。
――そうなんですね。そこに固執してしまい、うまくいかなくてお互いイライラすることって多い気がします。
弘中さん みんなが着替えていると着替えられるようで、保育園では着替えるんですよ。だから家を出るときは、恥ずかしいかなぁと思いつつも、本人がいいならまぁいいかと思ってそのまま出かけてしまいます。
――パジャマのままで保育園に行ったら、周りからどう思われるかを気にするママもいると思います。
弘中さん 私の場合「うちの子はパジャマが好きなんです」って言っています(笑)。周りも「そうなんだね」って。
ちなみに、同じ保育園のママに「うちの子パジャマが好きで着替えを嫌がるんですよね」という話をしたら、「うちの子は車のショールームの前から動かなくて…」という話を聞いて、お互い大変ですねと共感し合いました。
エッセイでは「新規ママ友をどうつくるか」という章がありますが、お迎えで同じ時間になるママたちはそんなふうに話すようになりました(笑)。

――2歳というとちょうどイヤイヤ期なのかなと思うのですが、イヤイヤ期への対処もそのような感じですか?
弘中さん もちろんイライラしちゃうこともありますが、真正面から向かっていかないように気をつけています。実際に正面からぶつかってしまったこともありますが、これじゃらちが明かないと感じて。向こうが折れないからこっちが折れるしかないな、と思っています。
――パジャマから着替えること以外に娘さんが嫌がること、折れないことはありますか?
弘中さん 保育園の帰りに寄り道をしたがりますね。必ず何かを買って帰りたい、買い食いをしたいんです(笑)。帰り道にパン屋さんがあるのですが、そこでトングを持ってパンをつかみたいんです。私は周りに迷惑がかからないようにつきっきりです。
――通るたびに「買いたい」と言われても、今日はダメだよと言う日もありますか?
弘中さん いや、買っています(笑)。「すみません」と言いながら小さいパンだけ買って、ごはんの前に食べています。
――そうなんですね。ご飯の前に食べさせることは気になりませんか?
弘中さん そのあたりはOKにしています。パンはおいしいですから(笑)。そのあとの夕飯も、パンがなかったらもう少し食べるんだろうなとは思いますけどね。よくないかなと思いつつ、やっぱり「まぁいいか」って(笑)。
――パンだとお菓子よりも罪悪感がないですもんね。
弘中さん そうですね。買うのはパンか、コンビニエンスストアで買えるみかん入りのゼリーです。もう少し大きくなったらちゃんとしつけをしなきゃいけないと思っていますが、今は私にその気力がなくて。「いいよ~、買おうか~」「いいよ~、食べな~」と、娘がやりたいようにやらせています。
産前は先を見越して早めに行動! 今は状況に合わせて対応するように
――おおらかな一方で、慎重派で石橋を叩いて渡るタイプだと本に書いてらっしゃいました。出産前に保育園について調べ、行政サービスをおさえ、ベビーシッターさんの顔合わせもされていましたが、現在お子さんの習い事や進学、ご自身の働き方など、今準備を進めていることはありますか?
弘中さん 生まれる前はやることがなかったので準備ができたんですが、生まれてからはやることがいっぱいあって、先々のことは考えられていません。生まれる前の準備は大切だったし役に立ったこともいっぱいありますが、生まれてからは先を見越すより、都度都度でその状況に対応していかないといけないことも多いなとも思って。

――変化があったんですね。習い事は、弘中さんご自身はなにかしていましたか?
弘中さん 幼稚園のときはなにもやっていなかった気がするんですけど、小学校のときは忙しかった記憶があります。プール、ピアノ、習字、お絵描き教室、高学年からは塾にも行っていました。
娘にはプールに通わせたいと思っていますが、プール以外にも本人にやりたいことが出てくるかもしれないですし、令和の習い事は私の時代とは違いますよね。私の姉にも2人小学生の子どもがいるのですが、女の子はチアダンスをやっていてすごく楽しそうで。ダンスって私の時代では習っている子があまりいなかったので詳しくないのですが、ダンスにもいろいろな種類があるしなぁと。その辺はリサーチしないといけないなと思っています。
――今、娘さんはどんなことが好きなんですか?
弘中さん とにかくアンパンマン! 今は「アンパンマン」ばかり言っています(笑)。あとはEテレですね。『おかあさんといっしょ』と『みいつけた!』、それから話は分かっていないと思うんですけど『忍たま乱太郎』も好きです。
仕事が遅くなる日はシッターさんを活用。行政のフォローもしっかりチェック!
――書籍のなかで産後ケア施設やシッターさんを上手に頼っている様子が印象的でした。今、外注していることはありますか?
弘中さん シッターさんは継続してお願いしていて、私が仕事で帰宅が遅いときがどうしてもあるので、そのときはお迎えから寝かしつけまでやってもらい、帰宅するまで家にいてもらっています。
――シッターさんなどのサポートが普及してはいるものの、外注することをためらう方もまだ多くいらっしゃいます。外注することで、気持ちや働き方としては楽になりましたか?
弘中さん 頼らないと仕事ができないので、頼らざるを得ない感じなんですけど、本当にありがたいですよね。その一言につきます。
――思い切って頼んでみるとうまく回ることって多いですよね。
弘中さん そうですね。金銭的負担がネックになっている方も多いかもしれませんが、補助金を使えばそこまで高額ではないんです。
私は東京のことしか詳しくは分からないんですが、行政は意外とそういったフォローを結構用意しているんです。私は目ざとく見付けて申請しに行くタイプで、産後も助産師さんの訪問サービスを利用できたり、助産院に行くためのチケットがもらえたりしました。

――ちゃんと調べればいい情報がたくさんあるんですね。弘中さんはどうやって情報を得たんでしょうか。
弘中さん 最初は母子健康手帳をもらいに区役所に行ったときに、そういった冊子をもらいつつ話を聞いたり、自分で読んだり、区のホームページを見たりしていました。
あとは、家事も育児も人によって得意不得意があるじゃないですか。女性だから全部できるわけじゃないし、お母さんになったからって育児が急に上手になるかというとそういうこともない。得意な人に頼むことの何が悪いんだろうと思います。私は実際にシッターさんだけでなく、家事を外注することもあります。
自分で全部やろうとしすぎないことが大切。上手に人を頼って
――育児が得意がどうかは産んでみないと分からないですよね。向いている・向いていないなどありましたか?
弘中さん “母だけの自分”は結構厳しいと感じました。確かに母の自分も大切にしたいし、一生懸命頑張ってるつもりです。でも今までの自分も超一生懸命頑張ってきたつもりだから、どっちも捨てきれない! 欲張りなタイプなんです。どっちもやるには1人では無理だから、いろんな人に手伝っていただくという生き方を選択しています。
――産後は割とメンタル的にも不安定なときがあったそうですが、時間がたって今ご自身に心境の変化はありましたか?
弘中さん やっぱり仕事復帰が転機でしたね。それに子どもって1か月、2か月で成長して変わるじゃないですか。そのときそのときで悩みが変わっていくということもあって、すでにこの本が懐かしく感じられます。今の悩みも、この先には懐かしく思うのかもしれません。
そして今思うと、産後のメンタル不調は自分の問題じゃなくて、ホルモンのせいだって思うようにすればよかったと思いますね。自分じゃどうしようもできないことだったから。
――とくに初めての出産だと分からないことばかりですしね。書籍の中で先輩ママや周りの方の声が励みになったとありましたが、弘中さんご自身がママになって、育児に関するアドバイスをすることはありますか?
弘中さん さっきも話したような行政サービスの申請は、面談をしないと受けられないサービスもあったりと意外と大変なので、産前に調べておいた方がいいよと伝えています。産後ケア施設や保育園もそうですね。
出産後は携帯を見るよりは寝たいという感じになると思いますし、産む前のほうが動きやすいと思うので、そう伝えることが多いです。それと私はふるさと納税でおしりふきや赤ちゃん用の洗剤を頼んでいます。長く使えるものなので、それもおすすめですね。

“うちはうち、外は外”は大事なマインドセット
――最後に、HugKum読者にメッセージをお願いします。
弘中さん 今は育児情報があふれていて、私も見比べて、「これをやったほうがいいのかな」と不安になることもありますが、昔から言われていた“うちはうち、外は外”って、結構大事なマインドセットだと思っています。私はそのマインドで不安にならないように、心配にならないようにしているところがあるので、今回私もいろいろと話をしましたが、皆さんもぜひそのマインドで(笑)。
――流れてくる情報がつい気になりますよね。子育てでは、情報に振り回されて不安になったことはないですか?
弘中さん あまりないですね。ただ、娘といるときの私は基本的にどうでもいい格好をしているんですけど、SNSで親子でペアルックをしているような投稿を見ると、「みんなちゃんとした格好で外に出ていてすごいな」って(笑)。うちは娘はパジャマだし、私もほぼパジャマみたいな格好だし。でも、まぁいいか、って。
――ある意味ペアルック(笑)。でも勝手な想像で、弘中さんは割とペアルックを楽しむ方なのかなと思っていました。
弘中さん いや全然パジャマです。娘もパジャマなので(笑)。
――今回お話を伺って意外な一面でした。
弘中さん 娘は今はパジャマブームですけど、ちょっと前はアンパンマンの服しか着なかったんですよ。他の子はフリフリのかわいい洋服を着ている中で、結構しっかりキャラクターの顔がついた服を着て街を歩いていて、なんでうちの子だけこんなに全身アンパンマン…、あぁ…と思いながら…。でもかわいいからまぁいいか、です(笑)。
弘中綾香さんの新刊はこちら
六本木を肩で風を切って歩いていた“自信満々な私”が、
妊娠・出産・育児という人生最大の波にのみ込まれた。
ボロボロになったその先で出会ったのは――
まったく新しい世界だった。
妊娠中の不安、産後の覚悟と救い、
おっぱい問題、孤独感、復帰へのハードル。
そして――
「これまでの私」と「母としての私」のあいだで揺れる、
経験したことのないもどかしさ。
逃げ場のない毎日のリアルを、
笑いと涙、少しの毒、そしていっぱいの愛でつづる一冊。
取材・文/長南真理恵 撮影/小倉雄一郎
