【令和の性教育】性行為はどう伝える? アニメの選び方は? イラストレーター・こたきさえさんに聞く、家庭での性教育の始め方

現代の子どもたちが性に関する情報に触れる機会は、私たち親世代が育った時代とは比べものにならないほど増えています。「家庭でも性教育をしたほうがいい」とは聞くけれど、いつ、何を、どう伝えればいいのかわからないという悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。

そこで、今回はイラストレーターのこたきさえさんにお話を伺いました。こたきさんは、家庭での性教育に試行錯誤する日々を描いたコミックエッセイ『平成生まれの母、令和女児の性教育に挑む』(オーバーラップ)を出版。自分の過去と向き合い、迷いながら子どもたちと向き合うリアルな姿が、多くの読者の共感を呼んでいます。

「プライベートゾーン」の大切さを伝えることから、性教育をスタート

――こたきさんが、お子さんの性教育の必要性を感じたきっかけを教えてください。

こたきさん:もともと漫画や育児コミックエッセイを読むのが好きで、大学生の頃から好きな作家さんの本を読んでいたんです。その中に性教育をテーマにした作品があり、「今の子育ては、こういう感じなんだな」と漠然と知りました。そこから、将来は自分もちゃんと性教育をできる親でありたいなと思うようになりました。

――実際に子育てをされる中で、どのように性教育を始められたのですか?

こたきさん:長女が3、4歳の頃「口や胸、お尻、おまたはプライベートゾーンといってほかの人に見せたり触らせたりしてはいけない自分だけの大切な場所だよ」という話から始めましたね。1回伝えただけでは忘れてしまうので、生活の中で繰り返し教えました。たとえば下着が見えそうになったときなどに「下着は隠そうね」のような感じで、その都度、声をかけていました。

こたきさん:その後、上の子が小学生に上がるくらいのタイミングで、性教育の冊子のイラストを描く機会があったのですが、その本に「子どもは10歳くらいになると性に関する話題を話しにくくなる」と書かれていたんですね。それでタイムリミットを意識するようになりました。

「赤ちゃんはどうやってできる?」には、絵本を使った読み聞かせを

――お子さんに、性行為について教えるのはハードルが高かったと書かれていましたね。

こたきさん:性行為について、いつ切り出そうかというのは考えていました。もし子どもが「赤ちゃんって、どうやってお腹に入るの?」と聞いてきたら、がんばって答えようと思っていたのですが、なかなか質問される機会がなくて…そんなときに「絵本を読み聞かせたらよかった」という話を知り、私もやってみることにしました。

――お子さんの反応はいかがでしたか?

こたきさん:「『お母さんもしたの?』と聞かれたら、どう答えよう?」とか、「興味を持ちすぎて他の人にしゃべっちゃったらどうしよう?」とか、いろいろな不安もありましたが、子どもたちの反応は意外にもあっさりとしたものでした。

ところが、家族で水族館に行ったとき、魚の繁殖の展示を見て「この魚もオスとメスがいて、卵が生まれるの?」と聞いてきたんです。そのときに、娘たちはちゃんと話を理解してくれていたんだなと手応えを感じました。

「アニメはレーティングをチェック」令和だからこそ気をつけたい、メディアとの付き合い方

――こたきさん自身の子ども時代と、令和の子どもを取り巻く環境で、ギャップを感じる点はありますか?

こたきさん:子育てや性教育に関する情報量が多く、子どもの安全に対しても社会全体がすごく気を遣っていると思います。その一方で、アニメや広告で性的なものに触れる機会が多くて、完璧に守れる環境ではないとも感じます。

――ウェブの検索画面でアダルト広告が出てきたりして、ドキッとしてしまうこともあります。何か対策をされていますか?

こたきさん:私のスマホは、子どもに見られてもいいようにGoogleのセーフサーチをオンにしています。また、ニュースサイトなどで広告が出そうなところは先に自分で確認してから子どもに見せるようにしています。とはいえ、すべてを先回りして消すのは不可能ですよね。ですから、「世の中にはこういう広告があって、目を引きつけてアクセスさせるためにわざと表示されている。もし見たとしても、あなたが悪いわけじゃないし、私は怒らないよ」と話しています。

――アニメ選びについてもご夫婦で基準を決めていらっしゃると書かれていましたね。とても参考になりました。

こたきさん:レーティングを確認した上で、夫に先に見てもらったり、SNSでの反応を調べたりしています。自分の知っている漫画でも、アニメになっているのを見たときに「あれ?」って思うことがあるんですよね。漫画だと白黒なので気にならなくても、アニメになると肌の露出が多いと感じたり、動きや音声に性的なニュアンスを感じたりすることもあります。広告と同様に、アニメもうっかり子どもの目に入ってしまうこともありますが、そんなときは一言添えるように気をつけています。放置しすぎず、守りすぎず…というスタンスです。

遊びの最中でも「やめて」と言われたら、すぐにやめる

――こたきさんが子育てにおいて大切にされていることはありますか?

こたきさん:「女の子なんだからこうしなさい」「男の子だからしょうがない」のような言い方はしないようにしています。あとは、「やめて」と言われたらやめる、というのは徹底していますね。

たとえば娘をハグして「もう離さないよ〜」と遊んでいるときも、「やめて〜」と言われたらパッと離します。娘は「もっとやってほしかったのに」という雰囲気を出してくることもありますが、本人が「もう1回やって」と言わない限りはやりません。「”本当はしてほしいやめて”というのは、私には通じないぞ」というスタンスでやっています。将来的に、娘を被害者にも加害者にもしたくない、ということはすごく心がけています。

――お子さんの成長とともに感じる変化や、気をつけていることはありますか?

こたきさん:娘にとって体の変化や恋愛の話が自分事になってきた感じがするので、デリカシーのない親にならないように気をつけないとなと思っています。これまでは教えるだけだった部分を、ちゃんと自分の行動や対応で見せていきたいです。今のところ、娘は何でもフランクに話してくれるので、相談しやすい環境は作れているのかなと感じています。

性教育に取り組むことが、自分の癒やしにもつながった

――早くから性教育に取り組んでよかったと思われる点はありますか?

こたきさん:娘たちの中に、価値観や判断する物差しのようなものをあげられたんじゃないかなと思っています。「やめてと言われたらやめる」とか、当たり前のことなんですけど、昔の自分は何もわかっていませんでした。教えたからといって、娘が間違えないとは限らないけれど、わけもわからず失敗してしまうことは防げるんじゃないかなと思っています。

こたきさん:そして、自分ができなかったことを、ちゃんと娘にできているという部分で、自分が癒やされるというか、ホッとする感覚もあります。

実はこの本を制作する過程で、過去に自分が無自覚に誰かを傷つけてしまった経験への自己嫌悪を強く抱いてしまう時期もありました。でも、編集さんと打ち合わせを進める中で、初めて人に話して、「そうだったんですね」と否定せずに聞いてもらえたことで、カウンセリングのように癒やされていきました。それで今のような明るいコミックに落ち着かせることができました。

――読者の方からはどんな反応がありましたか?

こたきさん:「きちんとした性教育を受けてこなかった現代の親たちが、悩みながら我が子の性教育に向き合う部分に共感した」と言っていただくことが多いです。性教育をテーマにした本やコミックエッセイはたくさんありますが、私の本では、自分の子ども時代と比べた葛藤をたくさん描いているので、その部分に共感していただけるのがうれしいです。

我が子に合った伝え方ができるのが、家庭での性教育のメリット

――これから家庭での性教育に向き合おうとしている方へアドバイスやメッセージをお願いします。

こたきさん:家庭で親が性教育をできる一番のメリットは、その子に合ったタイミングで、その子に合った伝え方ができることだと思っています。スキンシップが大好きなタイプの子なら「でもここは触っちゃいけないよ」と線引きを教えてあげる、逆にスキンシップが苦手な子なら「ちゃんと伝えていいんだよ」と肯定してあげる。スイミングや体操教室に通っている子なら、「着替えのシーンで違和感があったら教えてね」と声をかけることもできます。

こたきさん:また、ぜひ目を通してみてほしいのが、ユネスコが発行している「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」です。書籍として出版されていますが、ネットでも内容を見ることができます。包括的性教育は範囲が広くて、思春期の話だけじゃなく、自己肯定感の育て方やルッキズムへのフォローにつながる内容も多いです。ボリュームはありますが、「こういう考え方や取り組み方があるんだな」と面白く読めるのでおすすめです。

――ありがとうございました。「性教育」というと、身構えて考えがちですが、日常の会話の一つひとつの積み重ねが大切だと気づかされました。また、性教育をすることで自分自身や周りの人を大切にすることにつながるのだと感じます。ぜひこたきさんのコミックを参考に、我が子に合った性教育を考えていきたいです。

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お話を聞いたのは

こたきさえさん イラストレーター

1989年生まれ。 女子美術大学を卒業後、ファンシー文具のデザイナーを経て独立。 書籍の装画、コミカライズ、雑誌カット、幼児向けの月刊絵本のページなど。 コラム連載やweb記事の挿絵、SNSを利用したプロモーションにも携わっています。

この記事を書いたのは

平丸真梨子 ライター

音楽大学卒業後、出版社勤務を経て、現在はフリーライター・編集者として活動中。小学生2人の母。主に教育系、不登校への取り組み、著名人インタビューなどを執筆しています。子育ての中で感じた疑問や発見を活かしながら記事を作成することを心がけています。

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