今、最も注目すべきTVドラマのトピックを紹介するコラムがスタートします。気になる作品の情報や、視聴者の熱狂を呼んだシーンを解説。今後の見どころも紹介します。
あと1ヶ月ちょっとで最終回。一久と結婚し、ついに母親となるヒロインのなつ
なっちゃんがついにママに! 朝ドラこと連続テレビ小説「なつぞら」(NHK)のヒロイン、奥原なつ(広瀬すず)が8月に入り、放送第19週で結婚。第21週で出産します。朝ドラは半年間放送するものですが、残り1ヶ月ちょっとというところでの出産は、昭和を舞台にした作品の歴代ヒロインの中では遅い方です。なつは戦争時の東京大空襲で孤児となり、北海道の牧場に引き取られて育ち、高校を卒業してから東京に戻ってアニメーターになりましたが、30歳を過ぎてから同じアニメーション制作会社にいた演出家・坂場一久(中川大志)と結婚したのです。そして、めでたくご懐妊。ここからは、ママとなったなつの新たな人生が描かれていきます。
舞台は昭和40年代、日本が高度経済成長期に入り、男は企業戦士として仕事に明け暮れ、女は家庭に入って専業主婦となる。そんな生き方が理想とされていた時代ですが、“なっちゃん”と“イッキュウ(一久)さん”夫婦は違います。一久はなつと同じ東洋動画スタジオに勤めていたものの、監督した長編アニメーション映画の興行失敗を受けて退職。東京大学卒という高学歴なのに、結婚した時点では無職でした。秀才ゆえに理屈っぽく、「アニメとは」「酪農とは」と理想を語りがちな一久に、なつも「また始まった」と呆れ気味にはなっているのですが、理屈が先行する人だからこそ「男女の差はなくなるべきだ」という考えに従って、なつの仕事を全面的にバックアップしてくれるのです。
夫に家事育児を任せフルタイム勤務を続けようとするなつに、現代のママも共感!
一久がご飯を作り、洗濯掃除をして前向きに“主夫業”をこなしていく姿は、まさに今、求められている理想の夫。そして、なつが妊娠すると泣き出しそうな表情で喜び、自分が赤ちゃんの面倒を見ると申し出ます。しかし、イッキュウさんのポテンシャル(潜在能力)はこんなものではなかったのです。その後、大きいおなかになったなつが仕事から帰宅すると、針と糸を持って布おむつを縫っている夫の姿が! 子育てに積極的な夫が多い朝ドラ100作の歴史の中でも、おむつを手縫いする夫はさすがにいなかったのではないでしょうか。想像ですが、このイクメン偏差値の高さだと、赤ちゃんが生まれてからも、おむつ替えはもちろん、夜泣きや発熱などにもばっちり対応してくれそうです。なんて頼もしい!
専業主夫状態の夫・一久が赤ちゃんの世話をすると宣言。1年後からは共働きに!?
逆に考えると、なつは出産しても確実に職場復帰し、給料を稼いでこなくてはなりません。しかし、そこは現実主義者のなっちゃん。妊娠が分かった第20週では、職場の同僚たちと団結して社長と直談判し、出産後も正職員として働けるよう交渉していました。そして、復帰後はTVアニメの作画監督となりキャリアアップする予定です。一方、一久も元同僚のマコ(貫地谷しほり)が立ち上げた新しい会社に誘われ、子どもが1歳になったら保育園に預け、そこでアニメの演出家として再スタートする予定。まだ0歳~1歳を預かってくれる保育園なんて少なかった時代ですが、夫婦共働きになってもやっていけるのでしょうか?
朝ドラの歴史を振り返ると、これまでの主人公に起業家(社長)や医師、デザイナーなどはいましたが、意外にも、いち会社員として生きたヒロインはほとんどいませんでした。その意味では、現代のフルタイムワーカーの母親にリンクするところが多い「なつぞら」。なつが組織で働きつつママとしても奮闘していく姿がとても楽しみです。
連続テレビ小説「なつぞら」
NHK総合にて毎週月~土曜日 午前8時~ ほかにて放送中
文/小田慶子