シンガポールを家族旅行にすすめたい理由。治安が良く、清潔なだけでなくやさしい多様性を体験できる国の魅力を深掘り!

子連れの海外旅行は、行き先選びがポイント。遠すぎず、安全で、子どもが飽きず、親も気を張りすぎずに楽しめる。そんなわがままな条件を満たしてくれる国の一つがシンガポールです。楽しさに加えて、ユニークな体験や学びの要素もいっぱい。今回プレスツアーで訪れて感じた、子連れにこそ嬉しいシンガポールの今を4本シリーズの記事でご紹介します。

風景も人も驚くほど多様なシンガポール

ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ越しに望むマリーナ地区。都会と自然の距離の近さが一目でわかる

シンガポールと聞いて、どんな風景を思い浮かべますか。シンガポールは東京23区より一回り大きいくらいの国土に、600万人あまりが暮らす都市国家。でも同じ大都市でも、東京とはずいぶん違います。この狭さのなかにジャングルもあれば、ビーチもあって、車で30分も走れば、まるで違う景色が広がります。旅行中の移動時間が短くて済むのは、子連れにはありがたいところ。

チャイナタウンにあるヒンドゥー教のスリ・マリアマン寺院(右)

風景だけでなく驚くのが、人の多様性。総人口のうち、国民はおよそ6割。残りは永住者や海外から働きに来た人たちです。街を歩けば、中国系、マレー系、インド系など、肌の色も装いもさまざま。仏教、キリスト教、イスラム教、道教、ヒンドゥー教をはじめ、多数の信仰が共存し、チャイナタウンの一角にヒンドゥー教の極彩色の寺院が建っていたりもします。これだけ多彩な人が行き交うなかでは、旅行者である私たちも不思議とよそものという感じがしません。誰のことも特別扱いしない、おおらかな空気が流れていました。

時差が少なく、安全。常夏で荷造りもラク

空港隣接の巨大な屋内庭園・複合商業施設「ジュエル・チャンギ・エアポート」

アクセスは日本の主要都市から、直行便でおよそ7時間。時差はわずか1時間なので、子どもの生活リズムもくずれずにすみます。

一年を通して常夏で、日中は32度前後。冷房対策のはおりものがあるといいですが、基本は夏物だけでよく、荷造りもかさばりません。あとは水着と暑さ対策の帽子、日焼け止めがあればバッチリ。ときどきスコールが降るので、折りたたみ傘を忍ばせておくと安心です。

セントーサ島のシロソビーチ。夜21:00近くでも子連れの姿があった

治安と清潔さは、世界でも指折り。実際、街にゴミはほとんど落ちておらず、夜でも安心して歩けました。英語が公用語のひとつなので、お店でもどこでも言葉が通じます。移動は配車アプリのGrabを使うとスムーズ。暑い国なので、移動の負担を減らすのが子どもの体力温存のコツです。

子どもの学びに、本気の国

セントーサ島の水族館「オーシャナリウム」の最後の展示。海面上昇で人間の部屋が海になった未来を再現したメッセージ性の強いもの

シンガポールは、教育に本気の国という顔もあります。15歳を対象にしたOECDの国際学力調査(PISA)では、近年、読解・数学・科学のすべてでトップクラス。成績上位の子の割合が、参加国のなかで最も多いほどです。現地のガイドさんも「教育熱心な親が多いですね」と話していました。

日本の海外修学旅行先としても、シンガポールは台湾やオーストラリアと並ぶ人気の行き先。取材中も現地で日本の学生を見かけました。安全で英語が通じることに加えて、観光施設そのものに学びが詰まっているのも選ばれる理由なのでしょう。たとえば、動物園も水族館も植物園も、展示のあちこちに考えさせる仕掛けがあり、遊んでいるうちに自然と学びも得ています。ちょうど夏休み期間だったこともあり、どこに行っても地元の子連れの姿がありました。

誰もが当たり前にいられる国。空港には「カーム・ルーム」も

ラッフルズホテルのロングバーで味わうシンガポールスリング。右はノンアルコールのモクテル「ティートトラーズ・スリング」。親子で乾杯も!

有名なラッフルズホテルのロングバーにも、小学生くらいの子連れがいました。観光地ゆえもあるのでしょうが、こうしたバーやレストランの中にも、子ども連れですんなり入れる店が少なくありません。

1956年築の高校をリノベした「New Bahru」。レストランやショップが入居

廃校をリノベした新しい複合施設「New Bahru(ニューバル)」では、夜遅くまで広場で遊ぶ子どもたちの姿がありました。どこへ行っても、子どもがいるのが当たり前の風景が広がっています。周りからも、柔らかいまなざしが注がれていました。

New Bahruの遊び場。週末とあってこのあと夜まで子どもたちで賑わっていた

実はシンガポールは、国民の65歳以上が2割を超えた高齢化の進む国でもあります。だからこそ、小さな世代を大切にしようという気持ちが、自然と根づいているのかもしれません。

第2ターミナルのCalm Room

子どもを含め、誰でも受け入れる姿勢は、玄関口のチャンギ空港にもありました。2025年、第2ターミナルの出発エリアに「カーム・ルーム」ができたのです。

カーム・ルームのフォレストエリア。空港の賑わいがうそのように静か。靴を脱ぐので清潔

カーム・ルームとは発達に特性のある子どもや、その家族の声をもとに設計された空間で、強い光や音が苦手な人、人混みに疲れてしまった人が、静かに気持ちを整えられます。広さはおよそ200平方メートルとゆったりしていて、緑の映像が流れるフォレスト、体を動かせる柔らかな空間のデン、防音された個室のネストと、気分に合わせてゾーンを選べるようになっていました。

街なかにも似た心づかいがあります。誰もが心地よく過ごせるよう、五感をやさしく刺激する植物や水辺で構成された「セラピーガーデン」が各地にあり、今後数を増やしていく計画があります。

カーム・ルームも、セラピーガーデンも、多様性を受け入れ、誰にもやさしくあろうとするこの国の姿勢の表れだと思うと、子連れの旅のハードルも下がる気がします。

気になる物価は? 多文化が同居するホーカーセンター

ビブグルマンに輝く天天海南鶏飯のチキンライス。ほろりと柔らかく、辛くないから子どもも食べやすい

円安の今、どの国に行くにしても気になるのが、物価。シンガポールの物価は、体感では日本より気持ち高いくらいで、たとえば500mlの水はスーパーで2シンガポールドル(約250円)ほど。ただ、観光スポットやホテルには給水機があることが多く、都度買わなくても大丈夫。タンブラーを持参するか、ペットボトルを洗って使い回すこともできます(日本のペットボトルはキャップがしっかり閉まって便利)。

マックスウェルフードセンター。混んでいれば相席で。地元の人との距離の近さがいい

外食はピンからキリまで。ミシュランガイドの名店から屋台まで、食の評価が高い国です。なかでもシンガポールらしいのが、ユネスコ無形文化遺産にも登録されているホーカーセンター。屋台がずらりと集まった、いわばフードコートで、料理のジャンルは中華、マレー、インドなどよりどりみどり。子どもも大人も好きな一皿を見つけられます。家族でシェアすれば、ちょっとした食の世界旅行気分です。価格は、国民食ともいえるチキンライスで6シンガポールドル(約700~800円)前後から。

ハラル用の返却口。緑のボードに「HALAL」の文字

ちなみに子どもにそっと見せてあげたいのが、フードコートの食器の返却口。場所によっては、ハラル(イスラム教の戒律にそった食事)とそうでない食事とで、返す場所が分かれていました。違う宗教の人が、同じテーブルで気持ちよく食事をするための工夫です。

子どもと一緒に多様な風景と文化にふれる旅へ

チャイナタウンの路地に残る、昔の街並みを描いた壁画

いろいろな装いの人が同じテーブルでごはんを食べていたり、街のあちこちにさりげないやさしさが設計されていたり、多様性に柔軟なシンガポール。そういうところを、子どもは子どもなりに感じ取っている気がします。シンガポールは楽しみながら家族の視野が、少し広がる旅先でした。

取材協力:シンガポール政府観光局

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この記事を書いたのは

古屋江美子 ライター

通信会社に約6年間勤務した後、ライターに転身。旅行、IT、インタビューなどを中心に執筆。一児の母で、子どもとのおでかけや子連れ旅行の経験も記事づくりに生かしています。出身地・山梨県の「やまなし大使」。現在は川崎市在住。

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