子供のための製品えらび
子供の衣類やおもちゃを選ぶとき、また、子供が使ったりさわったりする可能性のある製品を選ぶとき、みなさんはどのような基準で選んでいますか?あふれる情報や製品の中から、安全性、サイズ、デザイン、そして価格・・・さまざまな条件や要素を考え合わせ、その時々に最適な製品を選んでいることと思います。
しかし、せっかく子供のために良かれと思って選んだ製品でも、それによってけがをすることがあります。そこで今回は「子供がけがをしないような製品えらび」についてお話しします。
おぼれ予防のための製品
こちらのイラストと画像をご覧ください。どちらも子供の「おぼれ」を予防するために作られた製品ですが、実は上の「足入れ付き浮き輪」と下の「ライフジャケット」には大きな違いがあります。
安全基準は「桜マーク」で確認を
上の「足入れ付き浮き輪」はかわいらしく安全そうに見えますが、過去に死亡事故や重大な傷害が発生したことから、今から10年以上前の2007年に、国民生活センターが業界に製造・販売の中止を求めました。その後しばらくは店頭から姿を消していたようですが、現在は実店舗でも通販でも、そしてフリーマーケットでも、このタイプの浮き輪が販売されています。価格は、新品でも1,000円前後と手軽なこともあり、人気商品になっています。
一方「ライフジャケット(小型船舶乗船用)」は国土交通省が安全基準を定めており、その安全基準を満たした製品には「桜マーク」が付けられています。価格帯は3,000〜5,000円台が中心です。
参考:国土交通省
http://www.mlit.go.jp/maritime/maritime_fr6_000018.html
http://www.mlit.go.jp/maritime/maritime_tk6_000013.html
「足入れ付き浮き輪」は、
・重心が高くなって転倒しやすい
・一度ひっくり返ると元に戻りにくい
という危険性があります。ひっくり返って鼻と口が5分以上水の中にある状態が続くと、溺死する可能性が高くなります。
足入れ付き浮き輪はなぜ危ない?
ところで、「浮き輪は『ドーナツ型』だってすぽっと抜けてしまうことがあって危ないのに、なぜ『足入れ付き』だけ危険性を指摘されるの?」と聞かれることがありますが、それは「子供の年齢および使用目的の違い」にあると考えています。ドーナツ型浮き輪やアームリングは2〜3歳以上の子供が「水に浮いていたい」という目的で使用される製品ですが、足入れ付き浮き輪は0〜1歳の赤ちゃんを浮かせておくために使用されることが多いですね。赤ちゃんは浮き輪に「座らせられている」状態で、倒れないよう自らバランスをとることはむずかしいのです。保護者がずっと見ていれば、ひっくり返ってもすぐに助けることができますが、たとえば入浴中に保護者がシャンプーをしていると、5分くらいはすぐに経過してしまいます。そこが大きな違いと考えています。
桜マークの付いたライフジャケットは、だから安全!
桜マークの付いた「ライフジャケット」は、
・体重に応じた十分な浮力がある
・見やすい色で作られている
・顔を水面上に出しておくことができる
・笛がひもで取り付けられている
という安全基準をクリアしています。
「足入れ付き浮き輪」と「ライフジャケット」は対象年齢が異なりますが、いずれも子供の「おぼれ」を予防するための製品です。このように、同じ目的で作られた製品にもいろいろあり、保護者のみなさんにはぜひ安全な製品、確実に子供の傷害を予防することのできる製品を選んでいただきたいと考えています。
キッズデザイン賞とは?
しかし、「安全な製品を選ぶ」と言っても、実際にはなかなか難しいのが現実ではないかと思います。子育てに家事に仕事に追われる中、あふれる情報の中から製品ひとつひとつの安全性を確認するのは大変です。
そんなとき、ひとつの目安になるのが「キッズデザイン賞」です。キッズデザイン賞は「子どもや子どもの産み育てに配慮したすべての製品・空間・サービス・活動・研究を対象とする顕彰制度」で、子供の安全に貢献する製品も数多く受賞しています。今年も8月23日に今年の受賞作品が発表されました。
2019年の受賞作をピックアップ!
今年の受賞作品の中から、子供の傷害予防に配慮したいくつかの製品をご紹介します。
やけどを防ぐ蒸気レス電気ケトル
やけどによる傷害予防のために:転倒止水機能付き 蒸気レス電気ケトル〈わく子〉 PCK型(タイガー魔法瓶株式会社)
転倒しない自転車用ベビーカー
自転車の転倒による傷害予防のために:バーレー自転車用ベビーカー(ライトウェイプロダクツジャパン株式会社)
過去にキッズデザイン賞を受賞した製品は、こちらから検索することができます。子供が重大な傷害を負うことのないよう、キッズデザイン賞受賞製品を活用していただきたいと思います。
Safe Kids Japanとは
私たちSafe Kids Japanは、事故による子どもの傷害を予防することを目的として活動しているNPO法人です。2018年6月からこのHugKumで、子どもの傷害予防に関する記事を配信しています。基本的に毎月1回、季節や年中行事などに関連した内容の記事をお送りしたいと考えています。
さて、「事故による傷害」、「傷害予防」という言葉、あまり聞き慣れないかもしれません。私たちがなぜ「事故」ではなく「傷害」という言葉にこだわっているのか、について、少し説明させてください。
事故?傷害?その違いは?
「事故」という言葉を辞書で調べてみると、「思いがけなく起こった良くないできごと」とあります。英語で言うとaccidentですね。accidentは「意図しない不幸なできごと」という意味で、「避けることができない運命的なもの」という意味も含まれています。海外でもかつてはaccidentを使っていましたが、最近ではinjuryという言葉が使用されるようになりました。injuryは「ケガ」「負傷」という意味です。「事故」は科学的に分析し、きちんと対策すれば「予防することが可能」という考え方が一般的になり、「運命的な」という意味を含むaccidentではなく、injuryという言葉を使用することが勧められるようになったのです。今ではaccidentという言葉の使用を禁止している医学誌もあるくらいです。
そのinjuryに対応する日本語として、Safe Kids Japanでは「傷害」という言葉を使っています。よく「事故予防」と言われますね。もちろん事故そのものが起きないことがいちばんなのですが、たとえ事故が起きたとしても、(重大な)ケガはしないように備えよう、そんな思いも込めて、「傷害予防」と言っています。