【世界初のAI美術館】LAに誕生した「DATALAND」を親子で体験! AI時代の最新アートをレポート

大人はもちろん、子どもにとっても身近になっているAIですが、最近ではアートの世界でも活躍しています。
2026年6月、世界初のAI美術館「DATALAND(データランド)」が、アメリカ・ロサンゼルスにオープンしました。AIが見せてくれるアートとは、いったいどんなものなのでしょうか。気になったので夏休みに娘と訪問。娘は16歳ですが、小学生でも十分楽しめますし、大人もワクワクしっぱなしでした!



常に作品が変化する「生きた美術館」が誕生

「DATALAND」は建築家フランク・ゲーリー設計の複合施設「The Grand LA」の一角

ロサンゼルスに2026年6月にオープンした、世界初のAI美術館「DATALAND(データランド)」。場所はロサンゼルスのカルチャーエリアのど真ん中です。周囲にはウォルト・ディズニー・コンサートホールや無料の美術館「The Broad」もあり、アートのハシゴもおすすめです。

「DATALAND」を手がけたのはロサンゼルス在住のメディアアーティスト、レフィク・アナドル氏。生成AIを使った作品がニューヨーク近代美術館(MoMA)に史上初めて収蔵された、AIアートの第一人者です。

そもそもAI美術館って何?

メインルーム「Data Pavilion」。 ©Refik Anadol Studio for Dataland

AI美術館に、まだ明確な定義はないと思いますが、「DATALAND」はAIがその場で作品を生み出していく美術館です。日本にもデジタルアートの美術館ならすでにありますよね。見た目は似ている部分もありますが、既存のデジタルアートはあらかじめ設定した「プログラム」で生み出されるのに対し、こちらはリアルタイムの「データ」を取り込みながらAIがその場で作品を生み出していきます。

「DATALAND」の作品をつくっているのは「Large Nature Model(LNM/大規模自然モデル)」という独自のAIモデル。ChatGPTなどは「Large Language Model(LLM/大規模言語モデル)」と呼ばれますが、LNMはNature、つまり自然をメインに学んでいるのが大きな違い。

世界中の博物館や研究機関と連携して集めた5億枚を超える画像をはじめ、音声や環境の記録などさまざまなデータを学習しているそうです。レフィク・アナドル氏は、「LNMは環境問題への意識を高め、保全への行動を促すためのツール」でもあると語っています。

来館者のデータも作品づくりに活かされる

入口で渡される生体センサーと香りを放つ首かけデバイス。 ©Refik Anadol Studio for Dataland

さらに面白いのは、来館者の反応もデータとして混ざること。それを可能にするのが、最初の部屋「Discovery Portal(ディスカバリーポータル)」で渡される二つのデバイスです。

一つは、手首に巻くスマートウォッチ風の生体センサー。心拍や皮膚温、さらに緊張や興奮による、肌のかすかな変化まで読み取れる本格的なもの。来館者の反応は匿名のデータとしてリアルタイムで館内のシステムに取り込まれ、環境データと混ざりながら、目の前の作品として表れます。つまり、私たちはつくられたアートを鑑賞するだけでなく、アートを変化させる(=データを提供する)側にもなるというわけなんです。

もう一つは、首にかけるネッククーラーのような機器。こちらの正体は香りを放つデバイスでした。なお、デバイスをつけられるのは13歳以上。ただ、デバイスなしでも展示はそのまま楽しめるので、12歳以下の子どもも大丈夫。香りと、自分のデータがアートに混ざる体験は、13歳になってからのお楽しみに。

前置きが少し長くなりましたが、ここからは世界初の体験をレポートしていきます。

壁一面が熱帯雨林に! AIが森を生成し続ける巨大空間

メインルームにはEPSONのプロジェクターが84台設置されている

2027年1月末までは、こけら落とし展「Machine Dreams: Rainforest(機械の夢:熱帯雨林)」を開催中です。圧巻なのがメインの大空間「Data Pavilion(データパビリオン)」。私たちが一番長くとどまった部屋もここで、27分45秒でした(デバイスをつけていると、そんな記録も残るのです)。

84台のプロジェクターが壁一面に熱帯雨林を映し出します。もちろん、完成済みの映像を流しているわけではありません。世界の熱帯雨林のライブ環境データを取り込みながら生み出されていて、変わり続ける映像はずっと見ていても飽きません。

館内にはフットカバーをして入るので床はきれい。寛いで眺められる

時折、土のにおいや香水のようなにおいが首元のデバイスから漂ってきました。香りは化粧品大手ロレアルのラグジュアリー部門と共同開発したもので、作品の展開に合わせて放たれているのだとか。

なお、デバイスを装着した本人にだけ香る仕組みです。「first rain on dry earth(乾いた大地に降る最初の雨)」や「synthetic breath of the machine(機械の吐息)」など、香りの説明からしてアートです。


遊園地のアトラクションのような没入感

「Infinity Room」。私たちが訪れたときはみんな座って見ていた

次に入った「Infinity Room(インフィニティルーム)」は、壁も天井も床も、六面すべてに映像が流れる立方体の部屋。コンパクトな空間なので、とにかくものすごい没入感! テーマパークのアトラクションさながらです。

映像の主役は一羽のハチドリ。レフィク・アナドル氏がアマゾンで見た夢をもとに、LNMで映像化したそうです。

美しい映像に目を奪われっぱなし!

聞こえてくる鳥の声は、1987年に録音された、今は絶滅してしまったハワイの鳥カウアイオオ。もうこの世にいない鳥の声が、AIが描く夢の世界で響くという、リアルと空想のハイブリッド感が新鮮でした。私自身は、表現もコンセプトも、この部屋が一番好きでした。

親子におすすめ! AIとお絵かきで遊べる体験ゾーン

娘のお絵かきが美しいチョウに

子どもが特に夢中になったのが、体験ゾーン「Latent Gallery(潜在ギャラリー)」です。タッチスクリーンに指で絵を描ける「Thinking Brush(考える筆)」では、娘が青いハートをいくつか落書きすると、チョウの群れに育っていきました。筆の題材は、珍しいキノコや、ナンヨウハギ、サンゴなどAIが学習した本物の生きものたち。描いたアートは二次元コードを読み取ってダウンロードして持ち帰ることもできます。

「Fluid Pigments」。カメラの前に立つと、シルエットが光の粒に変化

体の動きがそのままアートになる「Fluid Pigments(流れる絵具)」も面白かったです。カメラが体をスキャンすると、シルエットが光の粒として画面に現れ、動きに合わせて粒が形を変えていきます。こちらも画材はクラゲやアジサイなどいろいろ。出口の記録を見ると、娘の心拍のピークはこの部屋でした。

AIがつくったデータチョコレート

地元LAのショコラティエ、ヴァレリー・ゴードン氏が仕上げた「Data.Chocolate」©Refik Anadol Studio for Dataland

自然界のデータをAIに入力して得たレシピをもとに作ったチョコレートの販売コーナーもありました(1粒7ドル)。4種類から自分で選んでもいいのですが、せっかくなので「AIおまかせ」に。手首のセンサーが読み取った、ここまでの体験から選んでくれるのだそうです。「どのフレーバーが選ばれたと思います?」とスタッフ。

しばらくすると、私にはほろ苦いダークチョコレート「PHOENIX EMBER(フェニックス・エンバー)」、娘にはキャラメル入りの「MYCELIAL WHISPER(マイセリアル・ウィスパー)」が届きました。同じような体験をしてきても、選ばれる味が違うんです。娘は「甘いのが好きだから、選ぶならこれにしようと思ってた。私の好み、わかってるのかな」とおいしそうに食べていました。

自分の生体データがアートになる体験

今館内にいる人たちのIDと心拍、皮膚温。下段の円は一人ひとりのデータ

最後の部屋「The Sanctuary(ザ・サンクチュアリ)」は、あえて入場者のデータを可視化した空間でした。壁の画面には、今館内でデバイスをつけている人たちの2桁のIDと心拍や皮膚温がずらり。その後、目の前に現れたのは、来館者たちの生体データの蓄積を描き込んだという幅約9メートルの絵でした。

刻々と動く絵

正直、どういうアルゴリズムで絵になっているかはわかりません。それでも一期一会で集った人たちのデータが1枚の絵になっていると思うと、なんだかうれしい一体感。最後に映し出されたのは「この絵は今ここに集った人たちで形づくられ、一度だけ現れて消えていく」という英語のメッセージでした。娘は「人間のデータをこんなにすぐ解析して絵にするなんて、人間にはできないね」と驚いていました。

出た先には、今日の体験を振り返るコーナーも。デバイスをつけていた人は、滞在時間や館内を歩いた軌跡まで見られて、自分のデータから生成されたアートをTシャツやバッグにすることもできます(要追加料金)。新しい美術館のお土産の形になるかもしれませんね。

お絵かきロボットが描いていたもの

お絵かきロボット「QUALIA」。こんな現代アート、見たことある気が

出口にもう一つ、気になるものがありました。お絵かきロボット「QUALIA(クオリア)」です。描いていたのは、人の「感動」。壁の説明によると、来館者の鳥肌や肌の反応から感動の瞬間を捉えて、ロボットアームの筆づかいに変換し、1日1枚の絵に仕上げているとのこと。

ロボットと組めば、デジタルだけでなくアナログなアートまでAIでつくれる時代。アートの価値はどこにあるんだろう、なんてことも考えさせられました。文章でもよくいわれることですが、結局は誰がつくっているかという背景や文脈、情熱なのかもしれません。

新しいアート体験ができる「DATALAND」

動きに反応して円が現れる。大人もワクワクしっぱなし!

ちなみにこの美術館、来館者一人分のアート生成に使う電力はスマホ1回分の充電と同じくらいだそう。こういう数字をきちんと出してくるあたりも今っぽいところです。

滞在時間の目安は1時間半〜2時間。出たあとは、異世界へのトリップを楽しんだような充足感に満たされていました。データと聞くと無機質ですが、その一部は、今そこにいる人たちの鼓動そのもの。親子で刺激をたっぷり受けた、初めてづくしの美術館でした。

【DATALAND】
100 S Grand Ave Los Angeles CA 90012
月曜休館。チケットは49ドルから(12歳以下は割引あり)。デバイス装着は13歳以上
公式サイト https://dataland.art

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この記事を書いたのは

古屋江美子 ライター

通信会社に約6年間勤務した後、ライターに転身。旅行、IT、インタビューなどを中心に執筆。一児の母で、子どもとのおでかけや子連れ旅行の経験も記事づくりに生かしています。出身地・山梨県の「やまなし大使」。現在は川崎市在住。

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