最初に漫画を読んで目を見張り、続いて映画化決定にびっくり仰天し、完成した映画の仕上がりにほっこりと、ホップ・ステップ・ジャンプの驚きを与えてくれた実写映画『生理ちゃん』。原作は、生理をポップに擬人化して話題を呼び、第23回手塚治虫文化賞短編賞を受賞した小山健の人気コミックです。
ちょっとシュールだけどなんともいえない愛らしさを醸し出す、実写版の生理ちゃん。CGではなく、ゆるい感じの着ぐるみやぬいぐるみで表現されたところが最高です。主演は二階堂ふみで、伊藤沙莉、松風理咲、須藤蓮ら若手俳優陣が、生理ちゃんと共演しています。
二階堂さんが演じるのは、恋人の久保(岡田義徳)とのデートよりも、仕事を優先させがちな女性ファッション誌の編集部員、米田青子役で、毎月やってくる生理ちゃんと向き合っていきます。また、SNSで毒を吐きまくる清掃スタッフのりほ(伊藤沙莉)や、青子の妹、ひかる(松風理咲)たちの下にも、大小様々な生理ちゃんがやってきます。
生理痛の重さを、生理ちゃんの大きさで表現
生理ちゃんがやってくることで、生理の大変さが可視化されます。生理痛の重さや貧血、眠気などのつらさは人によって千差万別ですが、やはり生理ちゃんの大きさもそれぞれ異なっています。
青子は、生理痛が重い分、生理ちゃんもバカでかくて、容赦なく下腹部に“生理パンチ”をお見舞いしたり、眠くなるミストを噴射したりします。大きな生理ちゃんを背負いながら走ったり、仕事をしたりするのはなんともつらそうで、女性なら「わかるわあ」とうなずいてしまいます。
一方、青子の妹、ひかる(松風理咲)の生理は軽いほうで、生理ちゃんもミニサイズ。また、ボーイフレンドのゆきち(狩野見恭兵)と2人で一緒に勉強していると、彼の性欲くんもやってきます(笑)。ほかにも初潮ちゃん、童貞くんなどが、ここぞという時に現れ、大いに共感を呼びます。
生理ちゃんが教えてくれる、体を大切にすることや、思いやりの大切さ
女性にとって生理というのはとても大切なもの。実は生理ちゃんは女子の味方で、体調を知るバロメーターでもあるし、当然ながら実はウェルカムな存在です。それを象徴するように、生理ちゃんは親身一体となる存在として描かれ、たとえば青子たちが弱音を吐く時も、そばで聞いてくれたりもします。
りほ(伊藤沙莉)は、コンプレックスの固まりで「自分に生理なんて来なくていい」と自暴自棄になってしまいますが、そんな時も生理ちゃんは彼女に寄り添います。今回、初潮ちゃんが登場するエピソードも、まるで自分の過去に向き合えたような感覚を覚え、懐かしい想いが溢れ出しそうです。
また、二階堂さんがインタビューで、『生理ちゃん』が描くテーマについて「根底に描きたいのは、男性vs女性というところではなく、自分以外の誰かのつらさや痛みを、自分のもの差しで測らないでいたいというものではないかと」とおっしゃっていましたが、大いに納得。確かに、男女問わず、観れば響くメッセージが散りばめられています。いろいろな意味で、親子で観てほしい1作となっています。
原作:小山健「生理ちゃん」(ビームコミックス/KADOKAWA 刊) 監督:品田俊介
出演:二階堂ふみ、伊藤沙莉、松風理咲、須藤蓮、狩野見恭兵、豊嶋花、岡田義徳…ほか
公式HP: https://seirichan.official-movie.com/
文/山崎伸子