外出自粛が続く中、親子共々ストレスが溜まり、お子さんとの日々の過ごし方に苦慮していらっしゃる方は多いと思います。発達障害を持つ⼩学校1年⽣から⾼校3年⽣を対象とした放課後等デイサービス「Luce(ルーチェ)」を運営している、藤原美保さんに、少しでもお子さんと快適に過ごすためのアドバイスをいただきました。
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視覚優位の子には一日の過ごし方を決めたスケジュール表が効果的です
今はコロナウィルスで家にいる事が多くなり、対応に手を焼いている保護者の声もちらほら耳にします。
ASD(自閉スペクトラム症)のお子さんにスケジュール表を使うのは効果的と聞いたことがある方は多いと思います。発達障害の子の多くは先が見通す力が弱く、視覚優位の子が多いためスケージュールを使い、活動を視覚的に確認できると安心感にもつながり行動を切り替える事が出来るお子さんが結構います。
しかし、スケジュール表をどう使って良いか分からない、やってみたけど上手く行かなかったという声が多く寄せられています。時間や気持ちに余裕がないときにスケジュールに沿った過ごし方を練習するのは難しいので、外出自粛の、この機会にスケジュールに則った過ごし方を練習するのも良いかもしれません。
朝、「今日おうちでやりたい事リスト」→「今日やらなくてはいけないリスト」を作成
まず、朝、その日のスケジュールをお子さんと一緒に作ってみてはいかがでしょう?
その際に気を付けて頂きたいポイントは、いきなりスケジュールに予定を入れ込まない事です。
発達障害のお子さんの場合、頭の中で整理がつかない子が多いので、まずはお子さんの「今日おうちでやりたい事リスト」作りから始めましょう。
その次に「今日やらなくてはいけないリスト」を作ります。
そして「やりたい事リスト」の内容に順位を付けてもらいましょう。次に「やらなくてはいけない事」にも順位をつけていきます。
時間の配分は保護者がアドバイスしてください。
「やりたい事」の間に「やらなくてはいけない事」を入れるようにする
例えばやりたい事の中に「YouTubeを見る」があるとすると、10分、20分、30分に分けたりなど、最初にどのくらいの時間かを決めておかないと、一日中「YouTube」になりかねない為、スケジュールに入れる前に決めておいてください。
順位がそれぞれ決まってから、スケジュールに入れ込みますが、「やりたい事」を固めるのではなく間に、「やらなくてはいけない事」が入るように事前に説明してください。
スケジュールの中に一番最初に入れ込むのは「やりたい事リスト」の中の1番です。
可能な限りそれはお子さんに決めさせてあげてください。本人のモチベーションに繋がります。
あとは順位にそってやりたい事を1日の中にスケジュールにちりばめて入れ込んでいき、「やりたい事」の間に「やらなくてはいけない事」のリストの内容を挟み込んでいきます。
「やらなくてはいけない事」の中でも子どもが嫌だな、、、と思っている事があると思います。それぞれのお子さんの性格もあるので、「やりたい事」の前に持ってくる、など必ずお子さんと話し合って決めてください。
「やらなくてはいけない事」の次に「やりたい事」ができる事が視覚的に解り、見通しが立ち行動の切り替えがしやすくなることもあります。スケジュールの中に先に自分のやりたい事を入れ込めることでお子さんの満足度が上がり、保護者とフェアな交渉がしやすくなります。
最後は好きなことで終わると1日がいい形で終えられるでしょう。
終わった活動にシールを貼って達成感を見える化することで自信につながります
終わった活動にはシールを貼るなどの工夫も良いと思います。
やらなくてはいけない事をその日のうちに片づけられる事で本人の自信につながりますし、自分で決めたスケジュールをこなせた事で本人の達成感や満足度上がります。
保護者の方も1日の中でお子さんの集中力や疲れ具合などを観察でき、どれくらいの時間帯にどのような内容をいれたらよいかの計画を立てられるようになります。
落ち着かない時は、まず腹式呼吸で深呼吸を
発達障害のお子さんは不安が強い子が多く、その感情を上手く表現できず、怒りで表現したり、イライラと癇癪をおこしたりすることがあります。
ご存じのように、落ち着くためには深呼吸が効果的です。
腹式呼吸でゆっくり呼吸をすると副交感神経が優位になり落ち着けることは科学的にも証明されているのでここでは省かせていただきますが、発達障害のお子さんの多くは深呼吸をすることが出来ない子が多いのです。
発達障害のお子さんにゆっくりとした腹式呼吸を教える際のポイントをお伝えします。
腹式呼吸の練習をしましょう
まず、お子さんを仰向けに寝かせましょう。寝かせる事でお腹のふくらみを練習しやすくなります。
①片手を胸の前に置き、片手をお腹の上に置きます。
②胸が膨らまないように、お腹が膨らむように鼻から吸って口から吐く呼吸を繰り返します。遊びの要素を取り入れて、お腹の上に人形などを置いて「上がったね」「下がったね」とやってみるのもお勧めです。
呼吸に意識が向けられるようになると落ち着きを取り戻すことが出来ます。まだまだ続きそうなコロナウィルスの外出自粛要請。様々な工夫で乗り切りたいものです。
教えていただいたのは
発達障害のお子さんの運動指導の担当をきっかけに、彼らの身体使いの不器用さを目の当たりにし、何か手助けができないかと、感覚統合やコーディネーショントレーニングを学ぶ。その後、親の会から姿勢矯正指導を依頼され、定期的にクラスを開催。周囲の助けを受け、放課後等デイサービス施設「ルーチェ」を愛知県名古屋市に立ち上げ現在に至る。著書に『発達障害の女の子のお母さんが、早めにしっておきたい47のルール』(健康ジャーナル社)『発達障害の女の子の「自立」のために親としてできること』(PHP研究所)がある。
イラスト/海谷泰海
5月10日に、藤原美保さんの「発達障害の女の子のための性教育セミナー」がオンラインで行われます。