子どもの性教育はいつから始める?子どもが興味を持ち始めたら進めたい性教育のステップ

子育てにはさまざまな悩みがありますが、子どもに対する性教育もその1つのはず。時代もあって、自分自身が親からきちんと教わってこなかった現役のパパ・ママも多いはずです。そこで今回は、HugKumがこれまでに取材した性教育の専門家のコメントをまとめてみました。

性教育はいつから始めるといいの?

わが子の性教育と言えば、真っ先に思い浮かぶ問題は、「いつから始める?」という点ではないでしょうか? なんとなく「子どもが思春期を迎えるころから始めればいいのかな」と素人ながらに思いますが、専門家の見解はどうなのでしょうか?

小学校の保健の授業は3、4年生からだけど……

筆者(男性)にとって真っ先に思い浮かぶ性教育と言えば、小学校の授業です。学校の保健体育の授業で教科書に載る異性の体をまじまじと見た時の気持ちを、今でもはっきり覚えています。

現代の小学校においては、中学年(3、4年生)、および高学年(5、6年生)の保健の授業で、心と体の発育・発達について学びます。同じ時期に道徳や特別活動でも、学びが深まるようになっていると言います。特に小学校の4年生の保健の授業で、性に関する問題はスタートします。

中学校に入ってからも、もちろん保健と道徳の授業で学びは続きます。高校でも、保険や特別活動の授業が設けられています。こうしたカリキュラムを見ると、学校でもしっかりやってくれるので、学校任せにしてしまうパパ・ママも居るかもしれません。

スタートは子どもが興味を持ち始めた時から

しかし、性教育に詳しい専門家によれば、「性教育は小学校や中学校に入る前から始めても構わない」といいます。例えばHugKumでも過去に取材した、放課後等デイサービス施設を運営する藤原美保さんによれば、「子どもが興味を持ち始めた瞬間が始め時」だと言います。

もちろん、いつだから遅い、いつだから早いなどのきっちりした線引きがあるわけではないみたいですが、「赤ちゃんはどこから出ててくるの?」など、素朴な疑問を持ち始める幼児期から、少しずつ始めていくといいのだとか。

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幼児から始める 小学校入学までの性教育ステップ

ただ、幼児から始めると言っても、何から始めていいのか分かりません。小学校の4年生の保健の授業で性の問題が始まるまでの準備として、家庭ではどのような話をすればいいのでしょうか。

3~5歳の幼児には、体の機能を正しく伝える

3~5歳と言えば、日常会話にほとんどついていけるくらい、言葉が達者になる時期。難解な言葉は理解できないものの、5歳にもなれば大人顔負けの会話をします。性教育に詳しい専門家によれば、この段階から子どもは自分と他人の体のパーツに対する興味が大きくなると言います。男女の体の違いも、強く意識するとか。

この段階になったら、子ども用の解剖学の図鑑などを使って、子どもの興味に応じる形で人体の部位ごとの名前や機能について話す時間を設けると、性教育のスタートになると専門家は言います。

体のパーツについても、例えば肛門(こうもん)を「うんちの出る穴」など変に幼児言葉にせず、図鑑に書かれた用語をそのまま使った方が、かえって親子ともに構えなくて済むと言います。この体の学びを進めるとともに、

・自分の体が自分のものであり、他人に身体を触られるのを拒否することができる。

・自分も勝手に人に触ってはいけない。他人に触るときは許可(同意)を得ること。

・場所と場面や、身体のプライベートゾーンとパブリックゾーンの概念。

(HugKumの過去記事より引用)

なども5歳ごろになったら、教えてあげるといいですね。

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5~8歳の低学年の子どもには、人の多様性についてを教える

小学校で保健の授業が始まるタイミングは3年生、特に性の問題が出てくる時期は4年生です。わが子が小学校の低学年のうちには、どのような準備を進めればいいのでしょうか。

HugKumが過去に取材をした性教育の専門家によると、この時期の子どもには「みんな同じが当たり前」という価値観が育つと言います。逆を言えば、皆と同じでない人は「正常ではない」と考えがちで、例えば母子家庭・父子家庭の子どもに対して、障がいのある人に対して、差別的な言動を平気ですると言います。

また、小学生の低学年になると、今まで以上に「男の子らしく」「女の子らしく」という性別の役割を周りから期待され始めます。その結果、男女のジェンダー観が固定され、「男らしさ」「女らしさ」のステレオタイプが定着し始める時期でもあると言います。

こうした固定観念上の「普通」が正しいというわが子の言動を目の当たりにしたら、親はどうすればいいのでしょうか。もしかすると、親自身もそのような「みんな同じが当たり前」の価値観で生きているかもしれません。
その場合、子どもを助長させるような行動はせず、逆に頭ごなしに否定するのではなく、「正常ではない」と感じる気持ちをまず認めてあげるといいのだとか。その上で「それでも、みんな違って、みんないい」と、教えてあげるべきと言います。

この時期に多様性への寛容な態度が育てられれば、LGBTQ、性差別、障がい者などに対して、偏った見方をしない人間に育つ可能性が高まります。

小学校に入る前に学びたい「タッチ」のルール

性教育の一環で、わが子には「タッチ」のルールも教えたいと、HugKumが過去に取材した性教育の専門家は語ります。

幼いうちは親との触れ合いを通じて、安心感を受け取ります。しかし、子どもが小学校に入る前くらいから、体に触れる問題についても少しずつ教えていきたいとの話。
そうした導きの積み重ねが、自分の心と体を大事にする習慣をつくり、性犯罪や将来的な望まぬ妊娠などを防ぐ土台となってくれるのですね。

いいタッチと悪いタッチを学ぶ

まず、タッチには、

(1)自分自身へのタッチ
(2)相手への(あるいは相手からの)タッチ

があり、(2)相手への(相手からの)タッチにはさらに、(a)安全なタッチと(b)安全ではないタッチがあると教えるといいそうです。

まず、(1)の自分自身へのタッチについては、普段は隠れている部分を自分でタッチする(例えば、鼻や口の中に手を入れる、性器に触れる)場合、

・他の人から見られない場所

で行うと教え、一緒にプライベートとパブリックの考えを教えるといいそう。

(2)相手への(相手からの)タッチについては、(a)安全と(b)安全でないタッチがあると言いました。(a)安全なタッチとは、

・健康や清潔、ルールを守るタッチ(例:病院で診察を受ける、美容院で髪の毛を切ってもらうなど)
・相手を安心させるタッチ(例:ハグ、頭をなでるなど)
・お互いにうれしさを表現するタッチ(例:ハイタッチ、肩を組むなど)
・なぐさめるタッチ(例:背中をさする、手を重ねるなど)

などがあると教えます。一方で(b)安全ではないタッチには、

・危険なタッチ(例:たたく、殴る、引っ張るなど)
・してほしくないタッチ(例:状況、相手、場所によってやめてほしいと思うタッチ)

などがあると教えてあげましょう。

人に触る時には同意を得る

タッチには(b)安全ではないタッチがある以上、誰かにタッチする際に、「触ってもいい?」と同意を得る必要があるとも教えたいと、専門家は指摘します。
「手をつないでもいい?」「握手をしよう」などと、優しい問いかけで聞いてから触る練習を、実際に親子で練習してもいいですね。

悪いタッチを拒否する権利を教える

逆に他人からのタッチに対して、断る・拒否する権利が自分にはあると、同じタイミングで教えたいと専門家は言います。「拒否する=相手を嫌な気持ちにする」ではないとも教え、落ち着いた言葉で相手に「No」の気持ちを伝えても構わないと教えたいです。

自分が相手を触る際に拒否されたら、相手の拒否する権利を守る大切さも、一方で教えられるといいですね。

3歳から始まる性教育のまとめ

性教育は小学校で始まる授業を待たずに、幼児のころから体の機能や名称・役割を家庭で学び、多様性についても学びたいと、性教育に詳しい専門家は指摘していました。

小学校に入る前にはタッチの種類を学び、悪いタッチには断る権利が誰にでもある、その権利を自分が侵さないように、事前に触ってもいいか同意を得る習慣を身につけさせたいという言葉もありました。
要するに、学校任せではなく、幼児のころから性教育は家庭でスタートできるとの話。わが子が将来、自分の心と体を大切にできる大人になれるように、早速取り組みたいですね。

文・坂本正敬、写真・繁延あづさ

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