【医師監修】青あざの蒙古斑(もうこはん)とは?種類と治療法のまとめ

赤ちゃんの体に青いあざを見つけることがあるかもしれません。それは「蒙古斑(もうこはん)」と呼ばれるものです。そこで医師に、蒙古斑とはどんなもので原因は何なのか、症状はいつからいつまで出るものなのか、さらに足、背中、顔、腕など蒙古斑の種類と、蒙古斑の治療法までお聞きしました。

蒙古斑とは

蒙古斑
青あざの一種である「蒙古斑」

 

赤ちゃんの体によく見られる青いあざ。これは、「蒙古斑(もうこはん)」と呼ばれるもので、日本人などの黄色人種の赤ちゃんによく表れる、青あざの一種です。知らない人から見ると虐待の跡のように間違えられるかもしれませんが、日本人の赤ちゃんにとっては生まれつき出てくるもので、ごく普通の症状です。

症状

多くの赤ちゃんで、蒙古斑はお尻を中心に広い範囲に表れます。しかし胸や腕、足、顔などに蒙古斑が出るケースもあります。蒙古斑は、日本人の赤ちゃんの9割以上に出る症状といわれていますが、ほとんど出現しない赤ちゃんもいます。

出るのはいつからいつまで?

蒙古斑は、生後1週間から1か月頃までの赤ちゃんによく見られる現象です。その後は1~2歳頃に色調がもっとも濃くなり、やがて5~6歳頃には自然に消失していき、10歳前後までにはほとんどのケースで消えていきます。赤ちゃんの成長にあわせて皮膚が伸びることで、蒙古斑が広がったように見えることもありますが、ほとんどが自然に消えていくものです。

原因は遺伝?

蒙古斑ができるのは、皮膚の真皮層にある「メラノサイト」という色素細胞がメラニン色素を作るから。メラノサイトは通常は表皮に存在するのですが、赤ちゃんがママのお腹の中にいる間は、メラノサイトが皮膚の深い部分に存在します。そして出産後も一部のメラノサイトが真皮部分に残り、その部分の皮膚が青く見えるようになるのです。

黄色人種では真皮に残るメラノサイトの数が多いため、日本人の赤ちゃんでは蒙古斑はよく見られる現象なのです。「蒙古」という名前がついているように、日本人や中国人などの蒙古系民族によく見られる症状で、別の人種では蒙古斑はまったく見られないこともあります。

蒙古斑と青アザの種類

蒙古斑はお尻に多く出現するとご紹介しましたが、それ以外の部分に見られることもあります。お尻以外の場所に見られる赤ちゃんの青あざは「異所性蒙古斑」と呼ばれ、次のような部分に出現することがあります。

足や足首

足や足首、手首などに蒙古斑が出るケースも少なくありません。子どもが成長して細胞が新陳代謝を繰り返していくうちに、だんだんと蒙古斑が目立たなくなっていくことがほとんどです。

足の甲

足の甲や手の甲に、1センチ程度の小さな青いほくろのような青あざが出現することがあります。これは「青色母斑」と呼ばれるもので、ほくろのように皮膚より少し盛り上がって見えます。青みがかかっているところが、通常のほくろとの違いです。

背中

蒙古斑はお尻に多く出現しますが、腰や背中にかけた広範囲に現れる赤ちゃんもいます。ほとんどの蒙古斑が成長とともに自然と消えていくように、背中の蒙古斑についても自然に薄くなっていくものと期待できるでしょう。

白目部分が、青くみられることがあります。これは「太田母斑(おおたぼはん)」と呼ばれる症状で、蒙古斑ではありませんが青アザの一種です。生後すぐに現れる早発型と、思春期以降に現れる遅発型があり、赤ちゃんの目に見られるのなら早発型でしょう。白目が青くなった場合は、眼球へのダメージがあるためレーザー治療は難しいのが現状です。

太田母斑は、おでこや目のまわり、頬などの領域に現れることもあります。これは蒙古斑ではありませんが、青アザの一種です。顔の片側だけに現れることが多いですが、両側に出ることもあります。遅発型の場合は、ホルモンバランスの変化がきっかけとなって現れることが多く、男性よりも女性によく見られる症状です。

赤ちゃんの腕に蒙古斑が出現することもあり、これは異所性蒙古斑のひとつです。色の薄いものなら、成長していく過程で自然と消失していくものと考えられます。

蒙古斑が増えるのは病気?

蒙古斑のような青あざが出る病気として「ムコ多糖症」があります。これはムコ多糖という成分を体内で分解する働きが弱いか、その酵素がないためにムコ多糖が体内に溜まり、全身にさまざまな症状が出る先天性の代謝疾患のひとつです。このムコ多糖症によって蒙古斑を引き起こす場合があります。

また青色母斑には、細胞増殖型でどんどん大きくなっていく悪性のタイプもあります。

蒙古斑の治療法

蒙古斑は年齢とともに自然と消失していきます。しかしそれ以外の異所性蒙古斑やそのほかの青あざは、治療をしないと消えないこともあります。

異所性蒙古斑

お尻以外に青あざができる「異所性蒙古斑」の場合、ほとんどは自然に薄くなっていきますが、色が濃いものは自然に消えない場合もあります。

異所性蒙古斑が成長しても消えない場合に行われる治療法は、レーザー治療が一般的です。レーザー治療の中にはさまざまな種類があり、異所性蒙古班では「Qスイッチレーザー」が保険適用となりよく利用されています。レーザーが皮膚内部にあるメラニン色素を破壊することで、周囲の皮膚にダメージを与えることなく、効果的にあざを消失させていきます。

治療期間や回数は異所性蒙古斑の大きさや程度により異なりますが、3か月ほどの期間をあけて1~3回ほど照射することになります。レーザーを照射する際は皮膚をはじかれるような痛みが伴うため、治療部分の面積が小さいなら麻酔クリームやシールを塗って局所麻酔の対応をすることになるでしょう。ただし幼い子どもの場合は、局所麻酔を行っても痛みを感じて暴れうまく照射できないことも考えられるため、全身麻酔を受けることが求められるケースもあります。

太田母斑

太田母斑は、蒙古斑ではありませんが青アザの一種です。これについても、異所性蒙古斑と同じくQスイッチレーザーで治療できます。

青色母斑

ほくろと似ている「青色母斑」は、蒙古斑ではありませんが青アザの一種です。小さくて気にならないなら、そのまま治療しなくても問題はありません。大きくなって気になるようなら、摘出手術をすることになります。

いつから治療できる?

Qスイッチレーザーは、乳幼児から治療を受けることができます。大人より幼い子どもの方が皮膚が薄いので、レーザーの効果が出やすいのが特徴。そのため幼い時の方が、照射回数が少なくすみます。成長してあざ部分が大きくなるより、照射範囲の少ない幼いうちに治療を行った方がいいと判断する場合もあるでしょう。

ただし一般的な蒙古斑のほとんどが10歳頃までには自然と薄くなっていくため、経過を観察することもあります。医師の意見を参考にして、子どもにとっていい時期を見て治療することを考えましょう。

蒙古斑があっても心配しすぎないで

日本人の赤ちゃんなら、ほとんどの子に見られるのが蒙古斑です。あざの面積が大きく色が濃いと「そのまま消えないのでは……」と心配するかもしれません。しかし、日々の新陳代謝で少しずつあざが薄くなっていくケースがほとんどです。仮に完全には消えなくても、レーザー治療を利用してきれいにすることもできますので、あまり不安がる必要はありません。治療するべきかしばらく様子を見るか、治療するならいつのタイミングがいいか、子どもの様子を見て医師とよく話し合うことをおすすめします。

記事監修

みずほクリニック院長
小松磨史(こまつ きよし)

H6年 札幌医科大学卒業
H6年 札幌医科大学・形成外科入局
H10年 札幌医科大学・大学院卒業 医学博士取得
H10年 米国フロリダ・モフィット国立癌センター勤務(ポストドクトラル・フェロー)
H12年 札幌医科大学・形成外科 助教
H14年 北海道砂川市立病院・形成外科 医長
H17年 大手美容形成外科入職(院長歴任)
H26年 みずほクリニック開院

<免許・資格>
・日本形成外科学会・形成外科専門医
・日本美容外科学会・正会員
・医学博士

(HP URL)
https://mizuhoclinic.jp/

文・構成/HugKum編集部

【カリスマ小児科医に聞く!アトピーの顔ケア】顔だけに出る症状ってあるの?顔のアトピーの特徴や薬の塗り方
アトピー性皮膚炎は、症状が慢性的に続き、良くなったり悪くなったりを繰り返します。症状が出る場所は年齢や状況などによって違いますが、赤ちゃんや...
魚の目って子どももなるの?「魚の目」やよく似た「ミルメシア」「いぼ」「たこ」の原因や治療法を解説!
足の裏にでき、圧迫されると痛みを伴う魚の目。皮膚の固い大人の足の裏にできやすい魚の目ですが、足の皮膚の柔らかい子どもにも魚の目はできるのでし...

編集部おすすめ

関連記事