足の裏にでき、圧迫されると痛みを伴う魚の目。皮膚の固い大人の足の裏にできやすい魚の目ですが、足の皮膚の柔らかい子どもにも魚の目はできるのでしょうか? そもそも魚の目ができる原因は一体何なのでしょう?
本記事では、子どもの魚の目について、なってしまったときの症状や治療法、魚の目と間違えやすい子どもの病気「ミルメシア」など、魚の目の原因と治療法を「いぼ」と「たこ」とあわせて紹介します。
魚の目って子どももなるの?
魚の目とは、一般的には足の裏の皮膚が固い大人がなりやすいとされていますが、子どもにもできる可能性のある皮膚病です。しかし子どもの足の裏の皮膚は柔らかく、魚の目ができにくいため、魚の目ではない場合のほうがほとんど。後ほど説明する「ミルメシア」などといった、魚の目と区別がつきにくい皮膚病になることもあります。
魚の目の症状・原因・治療法
魚の目とは、直径5~10mmくらいの範囲で皮膚を守っている角質が厚くなり、中心に硬い芯ができる皮膚の疾患です。中心にできる芯が魚の目のように見えるので、魚の目(うおのめ)と呼ばれています。
放置しておくと歩くのも困難になるぐらいの痛みを感じることもあるため、できるだけ早く治しておく必要があります。そもそもなぜ魚の目はできるのでしょうか。病院で診察してもらうなら何科に行けばいいか、どんな治療法があるのかについて、これから紹介していきます。
魚の目の症状(できる場所)
魚の目は圧迫や摩擦による刺激が多く、角質が厚くなりやすい場所にできます。足裏の中央、親指、小指の付け根、指の間など足裏の上部にできることが多いのですが、靴の圧迫が原因できるのがほとんど。野球やテニスなどのスポーツ選手、仕事上なんらかの機材や作業道具を持つ人の場合は、手のひらや手の指などにもできることもあります。
魚の目の原因
魚の目ができる一番の原因といわれているのが、足に合わない靴を履くこと。サイズが合わない靴を履いていると、同じところに継続的に摩擦や圧迫がかかるため、魚の目ができやすくなります。また、サイズが小さい靴だと指先が曲がったまま固定されたり、幅が狭く指が左右から圧迫されたりし、魚の目ができやすいといわれています。
さらに魚の目ができる原因としては、体のバランスの崩れも影響します。大人の場合、たとえば毎日のようにハイヒールなどの高い靴を履いていると、足裏全体で体重を支えることができずつま先に負担が集中し、魚の目の原因に。また普段から歩き方にゆがみがある人も局所的に圧力がかかるため、その部分に魚の目ができることがあります。
それ以外の間接的な原因として、冷え症で足が冷たいと血行不良になりやすく、皮膚が硬くなって古い角質がたまり、魚の目ができやすくなるといわれています。
魚の目の治療法
足の裏に少しでも違和感を覚えたら、皮膚科を受診して診断や治療をしてもらいましょう。近くに皮膚科がない場合は、整形外科や形成外科でも診察してもらうことができます。治療法としては、魚の目の根の深さや大きさで変わりますが、まずは皮膚を刺激しているものを取り除く必要があります。靴を変えたり、歩き方を改善したり、フットパッドを利用したりして原因を排除しましょう。
一般的なものとしては、皮膚の角質をやわらかくするサリチル酸メチル配合の「スピール膏」を数日貼っておくこと。患部がやわらかくなったら、メスやハサミで魚の目の芯だけを取り除きます。スピール膏を貼る際には大きく貼らない様に注意して下さい。周囲の正常な皮膚もふやけてしまいます。芯の部分のみに小さく貼りましょう。手術になれている形成外科では、スピール膏をはらずに芯だけきれいにメスでとってくれることもあります。
また液体窒素を魚の目にあてて、細胞を破壊する冷凍凝固療法もあります。1~2週間に1回のペースで魚の目がなくなるまで治療を続ける必要があります。これには、多少の痛みをともないます。
レーザー治療で治療する方法もあります。炭酸ガスレーザーで魚の目の芯だけをピンポイントに取り除きます。しかし保険適用外となり、治療費が高額になる場合があるため注意が必要です。いずれにしても、魚の目は足の形や歩き方などでくせになっている場合が多く、どの様な治療法でも非常に再発率が高いです。
魚の目でやってはいけないこと
魚の目が自然治癒することはありません。「皮膚科に行くのが面倒くさいから」とそのまま放置してしまうと、症状が悪化する場合があります。やがて痛みが強くなって歩くことさえ困難になり、さらにその痛みを庇おうとして歩くときの姿勢もくずれて、別の部位への負担が増えて、別の部位に痛みなどを生じる場合があります。
また自己判断で「痛いから自分で芯を引っこ抜いてしまおう」という方もいると思いますが、消毒が不十分で患部からバイ菌が入り、足やリンパ節が炎症を起こすことがあります。きちんと専門の病院を受診し、適切な処置をおこなってもらいましょう。
自分で処置をしたい場合には、爪切りなどで痛く無いように慎重に芯の部分のみを切り取るようにしましょう。魚の目の部分は角質の肥厚ですので、切る際に痛みはありません。少しでも痛みを感じるのなら深すぎますので、皮膚を傷つける可能性があります。爪切りでの切除なら、痛みを感じたらそこで止める事が可能です。もう少し芯に近い部分を切るようにしましょう。カッターなどで切るのは微調整が難しく危険ですので、絶対にやめましょう。
魚の目と間違えやすい子どもによくある症状
足の裏にできた痛い部分や硬い部分は、魚の目なのかほかの病気なのか判断がつかないことがありますよね。間違った治療をしてしまうとさらに悪化させる可能性もありますので、痛みを感じたら早めに医師または薬剤師に相談して、適切な治療をうけましょう。
ミルメシア
ミルメシアとは、見た目が魚の目にそっくりな、子どもの足にできる「いぼ」のことです。子どもが魚の目になることはあまりないため、子どもの足に裏に魚の目のようなものを見つけたら、ミルメシアの可能性があります。
いぼ
いぼは見た目や肌の質感などで、魚の目との違いがみられます。いぼは小さな硬い半球状で表面がざらざらだったり、ブツブツだったりします。また、表面に赤い点々が見えることもあります。
たこ
タコは魚の目と同じように角質の増殖・効化がみられる皮膚病変です。タコは魚の目と違って芯がないため痛みがないことが多く、逆に皮膚が厚くなるため、外部からの刺激は感じにくくなります。
ミルメシアの原因と治療法
子どもにできるミルメシアとはどのような病気なのでしょうか。できる原因と治療法について説明していきます。
ミルメシアの原因
ミルネシアはいぼの一種で、ヒト乳頭種ウイルス(HPV)が表皮に感染することで発症します。手のひらや足の裏にできることが多く、発症すると皮膚表面に中央が少し陥没した盛り上がりができます。
ミルメシアの治療法
医療機関では「液体窒素による凍結療法」がよく用いられます。これは液体窒素で、HPV感染細胞を凍結させる治療法です。病変部に液体窒素をスプレー噴射したり、綿棒に浸してあてたりすることで感染細胞を凍結させ、壊死させることができます。
内服薬としては「ヨクイニン」という漢方薬が用いられることがあります。ヨクイニンが免疫細胞を活性化させ、HPVに作用するといわれています。
ミルメシアでやってはいけないこと
ミルメシアはウイルス性のため、いぼが周囲やほかの部位に広がることもあります。自分で削るようなことをせず、早めに病院を受診しましょう。
いぼの原因と治療法
足の裏にできるいぼも、魚の目と間違えられます。ウイルス性で他人に感染する恐れがあるため、原因と治療法をしっかり理解しておきましょう。
いぼの原因
足の裏にできるいぼは「足底疣贅(そくていゆうぜい)」とよばれ、ヒト乳頭種ウイルス(HPV)というウイルスが表皮に感染することで発症します。いぼ自体に特に症状はありませんが、歩くことでいぼが正常皮膚を刺激するため痛みが生じます。
いぼの治療法
ミルメシアと同様に「液体窒素による凍結療法」が一般的です。病変部に液体窒素をあてて感染細胞を凍結させ、壊死させる治療法です。しっかりと治すことができますが、回数が必要になることがありますし、痛みを伴います。また、内服薬としては、こちらもミルメシアの治療法と同じく「ヨクイニン」という漢方薬が用いられることがあります。
いぼでやってはいけないこと
いぼと他の皮膚疾患の区別はつきにくく、皮膚疾患の中には悪性のものの可能性もあります。自己診断せずに、治療の際はまず皮膚科医の診断を受けましょう。
たこの原因と治療法
たこは魚の目と同じように、皮膚の一部が慢性的な刺激をうけて角質が厚くなる病気です。痛みを伴うものは細菌感染を起こしている可能性があるため、早めに受診しましょう。
たこの原因
たこは医学用語で「胼胝(べんち)」といい、摩擦や圧迫が同じ場所で繰り返し起こることで発症します。魚の目とは違い、中心部に芯はなく、圧迫されても痛みを感じません。
発症すると皮膚が少し黄色みを帯びて、厚く硬くなり盛り上がってきます。また、たこは足裏以外にも生活習慣や職業、その人のクセなどにより体のいたる部分に表れます。
たこの治療法
たこを取り除くには、硬くなった角質を軟膏などで柔らかくするほか、魚の目と同様にサリチル酸メチル配合の「スピール膏」などを用いて除去します。コーンカッターというスライサーを用いて削る方法もあります。
たこでやってはいけないこと
痛みがないからといって放置していると、たこの下に潰瘍ができてしまう場合もあります。特に、糖尿病患者では細菌感染を起こし、重症化することも。放置せずしっかりケアしていきましょう。
自己判断は危険!病院を受診しましょう
魚の目やミルメシア、いぼ、たこは治療せず放置しておくと、体のさまざまなところに影響がでてきます。ネットの写真や情報だけで自己判断せず、少しでも違和感を覚えたら痛みがなくても、悪化する前になるべく早く皮膚科などを受診して、治療するようにしましょう。
記事監修
中野 貴光 (なかの よしみつ)
平成9年、筑波大学医学専門学群卒業。東京女子医科大学の形成外科学教室に入局。東京大学医学部形成外科、日本大学医学部形成外科への赴任等を経て、2年間アメリカ・テキサス大学にて熱傷の研究に従事。帰国後、医学博士を取得。2019年6月に練馬で「よしクリニック」を開業。
【所属学会】日本形成外科学会、日本皮膚科学会、日本美容外科学会、日本熱傷学会、日本レーザー医学会、日本手外科学会、日本抗加齢医学会
【資格】日本形成外科学会形成外科専門医、日本熱傷学会熱傷専門医、日本レーザー医学会レーザー専門医、日本手外科学会手外科専門医、日本形成外科学会小児形成外科分野指導医、医学博士
https://yoshi-clinic.com/
文・構成/HugKum編集部