児童虐待などの悲しいニュースが後を絶ちませんよね。HugKumでは、「親とこども」、「社会とこども」の関係性がよりよくなっていくための一助になれば、という想いが込められて始動し出した「こどもの視点ラボ」を取材しました。「え?そうなの?」と目からウロコの話が盛りだくさん。子育て中の人に役立つ情報が満載ですので、ぜひ参考にしてみてください。
「こどもの視点ラボ」とは
大人側の視点でのみ、こどもと接することの多い日本社会。そこに、1児の母石田文子さんは疑問を感じ、日々0歳のわが子の不思議に目を凝らしていた沓掛光宏さんとともに赤ちゃんを研究する「こどもの視点ラボ」を立ち上げたそう。
「こどもになって世界を見てみよう」
石田さんは「こどもの視点(当事者視点)にたって世の中を見てみることで大人や社会がこどもとのコミュニケーションの仕方を見直すきっかけ作りになるのでは?」と語ります。
今回ご相談した先生は、赤ちゃんの研究の第一人者「開先生」
「こどもの視点ラボ」は、「東大赤ちゃんラボ」を運営されている、東京大学大学院総合文化研究科広域システム科学系、開 一夫(ひらきかずお)先生にインタビューをしました。
今回ご相談した先生
開 一夫教授
東京大学大学院総合文化研究科広域システム科学系教授。専攻は赤ちゃん学、発達認知神経科学、機械学習とし、「東京大学あかちゃんラボ」を運営。主な著書は『赤ちゃんの不思議』(岩波新書)、『ミキティが東大教授に聞いた赤ちゃんのなぜ?』(中央法規出版)。絵本監修として『もいもい』、『うるしー』、『モイモイとキーリー』(すべてディスカヴァー・トゥエンティワン)など。また、『シナぷしゅ』(テレビ東京系列)などTVの監修も行い、同番組内では作詞家としての『上々-jyou jyou』『ふゆのキセキ』にも携わる。
「あかちゃんのための絵本」監修の先生
開先生は、「赤ちゃんが夢中になる絵本を」、という想いから絵本づくりの監修をされたそう。
赤ちゃんも一緒に参加して作ったという、こちらの『もいもい』『うるしー』などの絵本は、発売後「この絵本を見るとあかちゃんが泣き止む」、「笑う」、「じっと見つめて集中する」などの驚きの声が多数届いているそう。
絵本の詳細はこちらをチェック>>
『もいもい』
『うるしー』
赤ちゃんの頭は、大人の頭の5倍の重さ!?
「こどもの視点ラボ」では、まずは赤ちゃんのことを知ろうと、赤ちゃんの身体や動作などさまざまことに注目して、開先生に疑問を投げかけます。
石田さん:「こどもの視点ラボ」では、大人が赤ちゃんの頭を体感できる、『ベイビーヘッド(赤ちゃんの頭)』を作ってみたいと思います!
開先生:新生児の頭は、体重の約30%の重さ。大人の頭は約6~10%(所説あり)といわれているから、大人の3~5倍の大きさになるんだよ。
石田さん:えっ! というと、70kgの男性の場合で換算すると……、 21kgの重さの頭をのせていることになるんですか!? それは、想像するだけでも赤ちゃんって大変ですね……。
『ベイビーヘッド』の試作品が完成
石田さん:早速、作ってみました!
開先生:え~! 本当に作ったんだ(笑)
石田さん:うちのこどもが6歳でちょうど21kgなんですよ。なので、6歳児を乗せている感じなんだなと思いました。
開先生:肩車している感じというか。『赤ちゃんの首がすわる』って、どんだけすごいことか、よく分かるよね。
石田さん:確かに!
Q.人間の赤ちゃんはどうしてこんなに頭が大きいのですか?
関先生:これでも小さいサイズなんだよ。人間は直立歩行だから、他の動物よりも産道が狭くなってるんだよね。だからそこを通れるように、幼形成熟で出てくるんだ。
石田さん:他の動物よりかなり早産ということですか?
開先生:そうだね。生まれてすぐ立てるシマウマや鹿と同じくらい成長してからだと産道を通れないから。小さく未熟なうちに出てくるから、他の動物より早くに外界や親と接して刺激を受けることになる。学習できる。それが“人間らしさ“を作るんじゃないかと言われているし、僕もそう思います。
Q.赤ちゃんの脳の重さは全体重の約7分の1なんですよね?
石田さん:先生の著書によると、赤ちゃんの脳の重さは全体重の約7分の1 とありました。人間だから?
関先生:そうだね、サルやクジラも脳の比重は重いと思うけど、体重比というか自分のカラダ比から言うと人間の脳は抜群に重いよね。
また、赤ちゃんは脳に7~8割エネルギーが使っていると言われているよ。身体も大きくならないといけないのだけどね。
ベイビーヘッド(赤ちゃんの頭)を大人が体験!
開先生自らが、試作品をチェックしてくれました!
開先生がベイビーヘッドを体感
開先生:重いね~、これ何キロあるの? ちょっと被ってみたい!
沓掛さん:現状では1.5kgです。計算では21kgになるんですが、被るには危ないので。
体感した感想は?
関先生:なるほど! これは被らないと分からないね。
乳児がベランダから落ちてしまったという悲しいニュースも、この大きな頭を付けたことによって、これは落ちるかもって思ったよ。
今までは、知識として赤ちゃんは大人の3~5倍の重さと認識はしていたけれど、このベイビーヘッドを体感すると、赤ちゃんが寝返りすることや立つという動作も相当なバランスが必要だ!っていうことも実感するねー。
「ベイビーヘッドについて」の「こどもの視点ラボ」詳細記事はこちら>>
2歳の手のひらを大人が体感
皆さんは、こどもが飲み物をこぼしたとき「もう、また!」と怒ってしまった経験はありませんか?
こどもが見たカップと牛乳のサイズは?
沓掛さんは、2歳のこどもの比率にして食卓のものを並べたら、ものすごい大きいのでは?と思ったそう。そこで……。
沓掛さん:こんなものも用意しました。大人が2歳児の手のひらになってみたら?と考えたコップと牛乳です。
開先生:おー。え、こんなに大きいの?笑
沓掛さん:通常のカップや牛乳と比べると、こんなに違います。まだ握力の弱いこどもがカップを持つのは、けっこう大変!ということが分かりました。
開先生:これは面白いね! これで飲んでみろと言われたら、大人もうまく飲めないよね。口からダラーと出てしまっても、こどもを怒らないであげてね!
石田さん:本当ですね。カップには液体がタポタポに入っているから、難しいですよね。
沓掛さん:注ぐのも難しいですよね。
「2歳の手のひらを大人が体感」した「こどもの視点ラボ」詳細記事はこちら>>
こどもの視点を知ろう
今回の取材を通して、子育ては、大人の視点でするのではなく、こどもの視点で接することがいかに重要か気づかされました。
「こどもを知るために、こどもになってみる」このコンセプトを元に「こどもの視点ラボ」はこれからも赤ちゃんのことを研究していくそう。HugKumも引き続き応援していきたいと思います。
「こどもの視点ラボ」コンセプトムービーはこちら>>
文・構成/HugKum編集部