記憶力を高めるには理解が近道! 習慣やトレーニングを脳科学的アプローチで考察

これからの時代、必ずしも暗記力や記憶力が褒められるわけではないと言います。しかし、賢く器用に生きるために、記憶力はあって損はない能力ですよね。そこで今回はわが子を記憶力のいい子どもにするための子育て術を調べました。

記憶力がいいとは、どういうことか?

記憶力がいい子どもに育てるためには、まず「記憶力がいい」人間とはどんな人間なのか、正確に知る必要があるはずです。

記憶力は脳のどこが関係しているの?

そもそも記憶力とは、脳のどういった仕組みによって成り立っているのでしょうか。その点についてはHugKumの過去記事で解説していますが、ここでもおさらいしておきましょう。

記憶には脳の海馬と言われる部分が関係しています。

海馬とはタツノオトシゴのような形をした脳の一部で、大きさは厚さ1cm、長さ5cm程度だと言います。脳の一部なのに、海馬とは少し意外な言葉の取り合わせのような気もしますが、辞書を調べると、

<形がタツノオトシゴに似ることから、16世紀にイタリアの解剖学者アランティウスが命名した>(小学館『大辞泉』より引用)

という由来もあるみたいですね。

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記憶がない、記憶喪失ってどういう状態?

では、この海馬がなくなったり、ダメージを受けたりすると、人はどうなってしまうのでしょうか。

記憶には「短期の記憶」と「長期の記憶」とがあり、海馬は「短期の記憶を一時的に保存しておく場所」とされています。

かつては、てんかんという病気に対する治療法として、海馬を完全に切除してしまう手術も行われていたそうですが、海馬を切除された患者は短期の記憶ができなくなるケースがありました。海馬を切除される前の記憶については、長期記憶として脳の別の部分(脳の外側の大脳)が記憶しているのですが、海馬を失うことで一時的な短期記憶をとどめておくことが困難になったと考えられます。

それだけ海馬は記憶にとって大切な器官なのですね。

記憶力と年齢の関係

海馬を中心とした脳の記憶力には、年齢との間に何か関係があるのでしょうか? 年配の人が「もの忘れがひどくなった」「人の名前を覚えられなくなった」などの言葉を口にします。記憶力に年齢的なピークはあるのでしょうか?

短期記憶のピークは25歳前後

記憶力と年齢に関する話については、米マサチューセッツ工科大学の研究が参考になります。同研究によれば、脳の働きは活動の種類によって、ピークの年齢が変わると言います。

例えば、単純な情報処理の能力については18歳から19歳がピークになると言います。しかし、今回のテーマである短期記憶については25歳前後まで発達し続けると言います。

さらに、記憶力とは違いますが、他人の感情を理解する能力は、40代・50代にピークを迎えると言います。語彙(ごい)力については、なんと60代から70代においてピークを迎える可能性も示されているのだとか。

となると、少なくとも子どもの記憶力に関して言えば、現在進行形で伸び続けていると考えられますね。幼児であっても、児童であっても、大学生であっても、関係なく記憶力を育てるチャンスはあると言えます。

子どもだけでなく、子どもを育てるパパ・ママなどの保護者にも、研究結果は朗報ですよね。年齢を重ねても諦めずに学び続ければ、まだまだ脳の力は伸びるという話。親の学ぶ姿勢は子どもの手本にもなります。率先して学びを続ける姿勢を子どもに見せたいですね。

記憶力とアルコールの関係

ただ、子どもを育てる親として、アルコールには注意したいところです。英オックスフォード大学とユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンの研究によれば、海馬が飲酒によって影響を受け、委縮してしまうリスクも分かっています。

他の研究では、常識的な範囲内での飲酒でも脳に悪い影響が出ると示されています。日常的にアルコールを摂取する方は、その点は意識しておいたほうがよいかもしれませんね。

記憶力が悪い子どもの特徴

子どもの脳の力は伸び続けると分かりました。にもかかわらず、わが子の記憶力が悪いと感じる場合は、何か健全な発達を邪魔するような生活上の環境や、日々の習慣があるのかもしれません。

記憶力が悪い子どもの原因・特徴は

塚野弘明「社会的に組織化された『暗記力』」を読むと、人間は本来、暗記がそれほど得意な生き物ではないと言います。その意味で過剰な期待は禁物ですが、常識的に考えてわが子の記憶力が悪いと感じたら、何か好ましくない問題点が生活環境や日々の習慣に潜んでいるのかもしれません。

例えば、睡眠と記憶力について、さまざまな研究で関係性が指摘されています。子どもの睡眠時間は十分で、睡眠環境はきちんと整えられているでしょうか。何らかの理由で子どもの睡眠不足が続いている場合は、睡眠がしっかり確保できるような状況を、パパ・ママなど保護者として整える必要があるはず。

食事については、どうでしょうか? 好き嫌いのない、バランスの良い食事を普段から子どもに与えられているでしょうか? あくまでもマウスでの実験の話ですが、例えば脂質の大量摂取は記憶力に悪い影響を与えると、英マンチェスター大学の研究者などによって明らかにされています。

十分な睡眠、バランスの取れた十分な栄養は、子どもの記憶力の改善にも大きな影響を与えると考えられるのですね。

子どもの記憶力を高めるためにできること

規則正しく十分な睡眠、バランスのとれた食事が実現できている場合は、わが子の記憶容量の範囲内で最大限の記憶力を発揮させる、何らかの工夫もあるはずです。

記憶力を高める食べ物や飲み物を与えてみる

先ほど、脂質の取り過ぎが、実験用マウスの記憶力にネガティブな影響を与えたという研究を紹介しました。逆に人間の記憶力にいい影響を与えてくれる食べ物や栄養素も、分かっています。

広く知られている話として、脳みその栄養源はブドウ糖(グルコース)だけです。ですから、勉強や宿題の際に、前もってブドウ糖を取らせるといった工夫も効果的かもしれません。

ブドウ糖とは、糖質の一種です。辞書を調べると、

<ブドウなどの果実や蜂蜜(はちみつ)に多く>(小学館『大辞泉』より引用)

とあります。ブドウに多く含まれる糖なので、ブドウ糖なのですね。ただ、ブドウは季節が限られたり、コストが高かったりして、なかなか身近なフルーツとは言えません。もっと身近で手に入りやすいフルーツとしては、バナナが理想的です。

100g中に含まれるブドウ糖の量は、ブドウとバナナで同じです(100g中6.7g)。ブドウよりもコストが安く、簡単にむいて食べられる上に、季節を問わずに手に入ります。外出先のコンビニエンスストアでも売られています。その意味で、暗記や記憶が必要な場面では、前もってわが子にバナナを食べさせるなどの工夫も考えられます。

記憶力を高める効果があるDHAのサプリメント

記憶力を高める栄養素として、DHAの存在も知られています。DHAとはドコサヘキサエン酸とも呼ばれ、魚の脂などに多く含まれている脂質の一種です。

DHAに関する研究はたくさんあり、DHAを豊富に摂取すると、記憶力やIQ(知能指数)に好ましい影響を与えると知られています。そこで、わが子の食事には青魚を出したいところですが、DHAは、

<高温で調理すると大気中の酸素と反応し過酸化脂質となる>(厚生労働省『e-ヘルスネット』より引用)

とも知られています。おいしい魚をたくさん食べさせることが第一ですが、失われたり不足したりしたDHAを補うためには、サプリメントを考えてもいいかもしれません。

子ども向けにつくられた栄養機能食品も販売されています。例えば次のような商品です。

こども DHA&α-GPC DHA EPA α-GPC ホスファチジルセリン 配合 【集中・学習特化型サプリメント】

こども DHA ドロップグミ

こうした商品を、おやつの代わりに与えてもいいかもしれませんね。

ガムや運動など、記憶力アップのための習慣とは

記憶力をアップするための生活習慣として、ガムをかむ行為や、運動もいいと言われています。

高齢者を対象にした研究ですが、そしゃくをすると短期記憶の能力が向上したという結果も出ています。子どもに勉強中はガムをかませてもいいかもしれません。

他にも、米ハーバード大学医学大学院の情報によれば、継続的な運動が記憶力と思考力を向上させるとされています。規則正しくバランスの取れた食生活、睡眠に加えて、運動もいいのですね。

記憶力を高める効果的なトレーニングを学ぶ

以上のような工夫に加えて、わが子の記憶力を高めたいと思ったら、記憶術についても理解を深めたいところです。HugKumの関連記事に詳しい通り、暗記や記憶にはコツがあり、以下の点を心がけると覚えやすくなると知られています。

  1. 意味のある内容は、「覚えよう」ではなく「理解しよう」と導いてあげる
  2. 意味のない情報は、一緒に簡単な暗記法をつくってあげる

 

塚野弘明著「社会的に組織化された『暗記力』」によれば、意味のある内容は「覚えよう」とするよりも、「理解しよう」と繰り返し頭をひねっているうちに、定着しやすくなると言います。

一方で年号など数字の羅列や、春の七草などランダムな情報を覚える場合は、語呂合わせや頭文字法を親子で一緒に考えてあげると、子どもの記憶容量の範囲内で効率的に暗記や記憶ができます。

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記憶力は睡眠、運動、バランスの取れた食事から

以上、記憶力を高める方法について情報をまとめました。まずは、子どもに十分な睡眠をとらせ、青魚を中心としたバランスの取れた食事を継続して与える、運動も欠かさないようにするといった、正しい生活習慣の維持が不可欠だと分かりました。

そうした土台があって初めて、DHAのお菓子を与える、勉強の前にバナナを食べる、勉強中にガムを食べる、親子で暗記術を試すなどのこまごました工夫が効果を発揮すると考えられます。規則正しい生活習慣は、健康だけでなく、頭の良さも含めて、全ての土台となっているのですね。

文/坂本正敬 写真/繁延あづさ

 

【参考・資料】

※ 知的好奇心へのアドベンチャー VOL.8 – 東京農業大学

※ 難治性てんかんに対する手術治療 – 昭和大学病院

※ Even moderate drinking linked to a decline in brain health – University of Oxford

※ 塚野弘明「社会的に組織化された『暗記力』

※ 記憶と睡眠の深い関係 – 筑波大学

※ Can Obesity Shrink Your Brain? – WebMD

※ High-fat diet-induced memory impairment in triple-transgenic Alzheimer’s disease (3xTgAD) mice is independent of changes in amyloid and tau pathology – US National Library of Medicine

※ 速く、良く効く!砂糖が脳の「最適」エネルギーに! – 三井製糖

※ ブドウ糖(ぶどうとう) – 厚生労働省

※ 「食品交換表改定ポイントにおける糖質管理と果物の位置づけ」2015年11月7日、8日 セミナーレポート:第一部(3) – かわるPro

※ 記憶学習の改善 – マルハニチロ

※ 咀嚼が短期記憶能力 に及ぼす効果 – 富田美穂子、中村浩二、福井克仁

※ Exercise can boost your memory and thinking skills – Harvard Medical School

※ The rise and fall of cognitive skills Neuroscientists find that different parts of the brain work best at different ages. – MIT

※ The ages you’re the smartest at everything throughout your life – Business Insider

※ 湯舟英一「長期記憶と英語教育 (1) ― 海馬と記憶の生成、記憶システムの分類、手続記憶と第二言語習得理論 ―」

※ こうすれば記憶力は高まる!~脳の仕組みから考える学習法 – WAOサイエンスパーク

※ 古代ギリシャから天才たちに受け継がれている究極の記憶術『場所法』とは? – 記憶の学校

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