今後は高齢化に対するソリューションも提示していきたい
GPS BoTのサービスをさらに進化させていきたい
――ご自身のお子さんが産まれたことで、ものづくりの姿勢に変化はありましたか?
八木:視点が増えて、複眼的にものごとを捉えられるようになったと感じます。
自分に子どもが産まれて、両親も高齢になってきて、サンドイッチ世代と呼ばれる層になりましたが、それもあってか、より幅広い立場から物事を考えられるようになりました。特定の世代や時代だけでなく、社会全体にとって、今と未来の双方に利益あるものをどうやって作ろうかという視点を持てるようになったと感じています。
――今後チャレンジしたいことはありますか。
八木:自分たちもレベルアップしていく中で、より切実な社会課題を解決するということにチャレンジしていきたいと思うようになりました。より根深い問題で、多くの企業が解決できておらず、かつ、たくさんの人が直面しているようなことを解決できたら、社会に大きな貢献ができる。
その中で、少子高齢化というのは切実な課題。取り組むべき対象だと考えています。
――GPS BoTは、子どもだけではなくさまざまな方に使えそうです。
八木:おっしゃる通りで、高齢者向けのものも研究しています。
我々はまだ「子ども見守り」というふうにしか訴求していないのですが、高齢の方の見守りとしても多くの方にお使いいただいており、実際に徘徊で行方不明になったところを「GPS BoTで居場所がわかり、命拾いした」というお声も多数いただきます。
今後はより高齢者向けに最適化されたものも出したいなと思 っています。子どもを見守るのと高齢者を見守るのでは違いがありますので、そこに寄り添っていくも のを作りたいなと。
少子高齢化は、サンドイッチ世代としては自分ごととして感情移入できますし、解決困難で切実な課題なので、我々の強みを発揮できると考えています。そして少子高齢化は、日本が課題先進国なので、遅れて他の先進国でも必ずやってくる。日本でこの課題に対するソリューションを確立できたら、世界に発信していくチャンスでもあります。
――GPS BoTはまだまだ横展開していくのですね。
八木:はい。親が子を思う気持ちは万国共通なので、広く世界中で見守りソリューションとして提供できると考えています。おもてなしの国のものづくりが、世界で受け入れられるのか、チャレンジのしがいを感じています。
コロナ前ですが、韓国での実証実験も行いました。韓国の携帯網と接続し、現地の20ファミリーにご利用をいただきましたが、ライフスタイルに違いはあれど、GPS BoTは深く生活に定着し、大きな安心感で貢献することができました。
日本以外の国でも、技術的にもサービスとしても、手応えをつかめましたので、コロナ情勢と展開国を見定めつつ、本格展開の準備を進めています。
――新しいアイデアも日々考えている?
八木:そうですね。いつも「このテクノロジーはこの問題に対するソリューションになるのでは」という結びつきを探しています。
片方に切実な問題があって、そこに対していろいろな技術がある。それらをどう結び付けるかが我々のデザイン力だと思うので、いつもアンテナを張っています。
社会の現実と理想のギャップを埋めるカタチを創造したい
――もともとは「ひとりメーカー」でしたが、現在は何名で?
八木:いまは10名ほどですね。創業時は私ひとりでしたが、今では、高度な専門性をもつ社内メンバーとディスカッションしながら製品・サービスを創造できるので、より高い技術をサービスに投影することができるようになりました。
私個人では限界があっても、チームで取り組むことで限界も突破できるので、チーム一丸となって、喜ばれるものを作ろうという想いでやっています。
――最後に、全国のお父さん・お母さんにメッセージを。
八木:子どものことは脳内の大部分を占めることなので、それが心配事ばかりだと人生もったいない。ポジティブに考えられれば、お互いにとっていいこと。それに対して我々ができることがあると思うので、そういうことで貢献できたらと思います。
小学校は、文部科学省の通知で携帯持ち込み禁止が原則なんですよね。賛否両論ありますが、それが事実。それならば、持ち込めないなりに、鞄に入れっぱなしで、音も鳴らずに見守れるように技術で解決するというのもひとつの方法です。
そのように、私たちは現状と理想にいつも着目しています。私たちは本来こう生きたいのに、現状の社会はそうではないというギャップがあるとき、その溝にピタッとハマるカタチのものを作ることで、世の中を生きやすいものに変えることができる。
――ハマると気持ちよさそうです。
八木:私たちが考える現状と理想を埋める形がピタリとハマって、それを他の方も共感してくだされば、社会でヒットするということだと思うんですよね。それによって理想も高まるし世の中も変わるので、また新しい形を模索して「これを使えば自分らしい理想の人生に近づく」というものをさらに作っていけたらいいなと思います。
>>GPS BoTについて詳しく知りたい方はこちら>>
取材/小林麻美
カメラ/黒石あみ
文・構成/HugKum編集部
>>連載「子どもの未来を想う人に会いに行く」Vol.1は『ぺんぎんたいそう』の著者・齋藤槙さん。こちらからご覧ください。