連載「子どもの未来を想う人に会いに行く」Vol.1 絵本作家 齋藤槙さん
かわいらしい2匹のペンギンがさまざまな体操のポーズをする“一緒に踊れる”絵本、『ぺんぎんたいそう』。2013年に月刊絵本(「こどものとも0.1.2」10月号)として刊行、2016年にハードカバー化されたこの絵本は、今や全国の幼稚園や保育園で読み聞かせされ、多くの子どもたちに親しまれています。そして4月には「こどものとも0.1.2.」5月号として、新作の『かめかめたいそう』を出版。作者の齋藤槙さんに、2作の“たいそうシリーズ”の制作秘話、そしてご自身が絵本作家になったきっかけや創作活動についてお話を伺いました。
絵本作家
さいとうまき/1981年、東京都生まれ。武蔵野美術大学で日本画を学び、在学中から絵本作りを始める。貼り絵やステンシルや染めなどのさまざまな手法で、動植物をモチーフにした作品を多数発表。たくさんの色を重ね、深みのある独特のタッチに仕上がっている。これまでに発表した絵本は『ながーい はなで なにするの?』(福音館書店)、『おひさま でるよ』(ほるぷ出版)、『なまけものパーティー』(小学館)など。
23万部売れの大ヒット体操絵本!『ぺんぎんたいそう』の制作秘話
大学時代の1枚の課題から生まれた絵本
--この作品ができたきっかけを教えてください。
齋藤槙さん(以下敬称略):美術大学に通っているとき、動物の絵を1枚仕上げるっていう課題が出て、上野動物園に通ったんです。久々に動物園に行ったらすごく面白くって、中でもペンギンに一番惹かれたんですよね。
ペンギンの動きをずっと見ていたら、「これ、ペンギン体操っていう絵本ができるぞ」って思って。そのときからすでに絵本は描きたかったんです。
――それが『ぺんぎんたいそう』の原型になったんですね。
齋藤:はい。当時は墨一色で、写実的に和紙に描いていました。それを自分で1冊の本の形に製本して。『ぺんぎんたいそう』の“ぺんぎん”は当初カタカナでしたね。
出版するときに絵で変えたことは、色をつけたことと、ペンギンに少し表情をつけたことです。
当初は目が黒い点だったんですが、赤ちゃんに気持ちを入れて見てもらえるように、表情があったほうがいいだろうということで、白目を入れて表情を見えやすくしたんです。
文章も「前屈の運動」だったところを「おなかとあたまをぴったんこ」にしたり、赤ちゃん向けの絵本にするにあたって、よりわかりやすくしています。
あとは、体操できる絵本にしたっていうことですね。
――最初は体操する絵本ではなかった?
齋藤:そうです。一番最初はただペンギンの面白い動きを見てもらう絵本というつもりで作っていました。
私は、絵本を1冊作るときに、核となる言葉みたいなものがあるといいなって思っていて。この絵本については、どうしようかなって考えたときに“一緒に踊れる絵本”というワードがひらめいたんですよね。
それを編集者さんにお伝えして、そのワードを軸として、「それだったらこの動きはできるね」とか「一緒に踊れるように動画も作ろうか」とか、発展していった感じです。
――うちの子どもたちは「おしりをふって~」が大好きなのですが、齋藤さんが特に好きな動きは?
齋藤:絵的には、「あしをあげて~」の動きが好きです。これは、ペンギンが足で顔をかいている、一瞬だけする動きを「あしをあげて」って言っているんですけど。
「おおきくじゃーんぷ!」は、本当はペンギンがこんなに高くジャンプすることはないんです(笑)。勇気をもって水に飛び込むときくらいですかね。
――今や大人気の絵本に。反響も大きかったのでは?
齋藤:いろんな人が、「やったよ~」っていう感じで動画を送ってくれたりしています。0歳の赤ちゃんでも、見よう見まねでちょっとは(ペンギンの動きを)やってくれたりしていて、「そうか、伝わるか~」とうれしくなりますね。
色もよかったのかな、と思います。
――赤ちゃんにとって黄色は見えやすいといいますよね。
齋藤:直感的に黄色がいいなと思っていたんですが、黄色ってまあまあ奇抜じゃないですか。なので、ミントグリーンとうすだいだい色と黄色とくすんだ濃いめのピンクと、4色で試してみたんですよ。
友達の赤ちゃんに「どうですか?」って見てもらって、黄色がなんとなく反応よさそうだったね、ということで決めました(笑)。
次のページではいよいよ『かめかめたいそう』が生まれたきっかけを語っていただきます。