待ってました!『ぺんぎんたいそう』の次は『かめかめたいそう』。著者・齋藤槙さんに制作秘話をインタビュー!

PR

絵本作りについて、そして今後の絵本活動は

これから描いてみたい動物はカワウソとハリネズミ

――動物の絵本をたくさん出されています。もともと動物がお好きで?

齋藤:小さいときに祖母に上野動物園によく連れていってもらっていて、動物を見ていました。サンシャイン水族館も近いので、年間パスポートを買ってよく行っていた記憶があります。なので、小さい頃は好きだったと思います。

ただ、中学生、高校生になるとそういうことって忘れるじゃないですか。大学のときに課題で上野動物園へ久しぶりに行って、「そういえば、動物好きだった」って思い出しました。

そこからですね、動物を描くようになったのは。そう思うと課題はありがたかった(笑)。

なんとなく自分がそこに入り込めるかというのが、私の中で描ける・描けないの基準になっていて。人間はちょっと入りづらいんですよね。私自身は人間なんですけど(笑)。

動物とかお花とかのほうが入れます。不思議なことですね。きっと何か合う波動があるのかもしれません。

――今後、この動物を描いてみたいと思うのは?

齋藤:カワウソの可愛さが、ちょっといいなって思っています。上野動物園にもいますし。

それから、ハリネズミはこれから描くかなという感じです。実はスウェーデンに旅行したときに、野生のハリネズミを1回だけ見られまして。

「ハリネズミを探しています」って言って回っていたら、知り合いの方に「うちの庭に出るから来ていいよ」って言われて。その方が柵みたいなところに追い詰めてくれて、ハリネズミが困っていました(笑)。

「ホントにいるんだ!」と思って、ちょっと感動でした。

ーースウェーデンにはよく行かれているんですか?

齋藤:スウェーデンには一度行って、そのとき友達もできたりしてご縁ができて、今は2年に1回行っています。去年は行けなかったんですが…。自然もあって、いいところです。そこで絵本を作ろうという感じではないんですけどね。

――旅先で絵を描いたりは?

夢うつつ日記

 

齋藤:夢から覚める瞬間に自分の中に感じた色や形を絵にする“夢うつつ日記”というのを気まぐれに描いているんですが、それを旅先で描くことはあります。やっぱり場所が違うと色合いとかも軽くなったりするので、それは面白いなと。

うまく描くっていうのは仕事としては大事なんですけど、そこではうまく描けなくていいし、よくなくてもいいというか…自分の中から自然に出てきたものをただ描くっていうことをやっています。

瞑想みたいな感じみたいなのかな。自分の中にあるものをただ見る、そしてそれをよいとか悪いとか判断しない。面白いんですよ。

“描くモード”にならないと描けないタイプ!

――齋藤さんにとって、絵を描くことはどういう位置づけですか?


齋藤:人と比べて思うのは、私はやっぱり仕事として絵を描くほうの人なのかなって。

もっともっと自分の中から湧き出てくるものを外に出していかないといけないというか、描くのが自然みたいな人っていると思うんですけど、私の感覚では絵を描くこと=力を使うこと、みたいな感じというか。

お金をいただくとかいただかないにかかわらず、誰かの役に立つことに力を使うという感じかなあと思っているんです。

なので、何か月も描かなくても全然平気です(笑)。描くときは描くモードになります。

このスイッチを入れるのが大変でして…描くモードに入ると、スーパーマリオみたいな感じでどんどん描けるんですが、描くモードになるまでは通常のマリオの状態なので、何かあるとすぐゲームオーバーになってしまう(笑)。ちょっと、キノコを食べたりしないといけないですね。

――そのキノコにあたる、スイッチを入れてくれるものは?

齋藤:なんとなくずっとそこに焦点を当てて、頭の中で常に意識するようにします。そろそろあれ、そろそろあれ、ちょっともういい加減にやらないと、って…なので〆切りですね、もうこれがないことにはやれないと思います(笑)。本当にすみません!

――よくわかります(笑)。絵本のインスピレーションはどこから湧いてくるんですか?

齋藤:お散歩しますね。お仕事する前に、朝起きたらご飯を食べて、それからお散歩。散歩もほとんど瞑想に近い感じがあります。頭が空っぽになったときに何かよいことが思い浮かぶような。

お散歩中に、あの絵本どうしようかな~って考えて、「そういえば、あそこはこういう展開にすればいいかも」みたいな感じでふっと思い浮かんだり。

大学に通っているときに、駅から大学まで徒歩25分あって、ずっと玉川上水の自然の中を歩いて行くんですけど、それで歩く習慣ができたかもしれないです。そのお散歩でよい状態になるっていうのがなんとなくあって、卒業しても散歩を続けるようになりました。

自分なりの色や捉え方で『古事記』の絵本を描いてみたい

――絵本作家になりたいと思ったのは高校時代なんですよね。

齋藤:そうです。高校生のときに本屋で過去に読んだ面白い絵本に再び出会って、「これあったよね~!」みたいな感じで友達と盛り上がって。忘れていたけど、こうやって自分の深いところに残っている作品を作れる仕事ってなかなかいいなって思ったのがきっかけです。

それまでは美術の先生とか、漠然と絵を描く仕事に就きたいなって思っていたんですけどね。

――ちなみに、個人的に好きな絵本はありますか?

齋藤:一番最初に私に絵本を出すチャンスを与えてくれた方が、「スウェーデンの絵本が面白いよ」って教えてくださって。

スウェーデンの絵本ってものすごくいろいろな絵本があって、性教育の絵本や、すごくリアルなものもあれば、アーティスティックすぎて子どもに理解できるのかなっていうようなものもあったりとか、多岐にわたっているんです。

売れるものだけじゃなくて、読みたい子どもがひとりでもいたらそれでいい、みたいな絵本もあったりとか。

大人が読んでも素敵な絵本が多くて、旅行に行くたびに見ていますね。言葉はわからないので、絵だけで判断して買っています。どうしても読みたいものは、翻訳家の方にちょっと訳してもらったりして。

齋藤槙さんがおすすめの、スウェーデンの絵本。 『ブルーベリーもりでのプッテのぼうけん』『もりのこびとたち』共に福音館書店

 

――たいそうシリーズの今後の展望を教えてください。

齋藤:実は『ぺんぎんたいそう』の次を作るつもりはなかったんです。二番煎じみたいになっちゃうと不本意だし、それは違うかなと思って。

でもあるとき、“たいそうシリーズ”っていう、何冊かそろってひとつの大きな作品という感じで捉え方を変えて作っていくのも面白いかなと思って。できることなら次も出るといいなと思っているので、3冊目の構想はあります!

――とっても楽しみです。では、それ以外に描いてみたいテーマは?

齋藤:今初めて、誰にも言ったことがない構想をここで発表することになるんですけど…(笑)。

『古事記』の絵本を描きたいんです。たぶん過去に描かれていると思うんですけど、私が感じる色や、自分なりの捉え方で描けたらなあと。まだ勉強中なんですが、とても面白いんですよ。

いつかは…と思っているので、その際にはぜひ読んでくださいね。

 

作・齋藤 槙|福音館書店880円

水族館や動物園でおなじみのペンギン。そのユニークな動きや、伸び縮みをして姿かたちが変わる様子は、まるで体操をしているかのように見えます。作者の齋藤槙さんは、 その面白さに学生時代から注目し、私家版の絵本を制作していました。その私家版の絵本をもとに描かれたのが、『ぺんぎんたいそう』です。

登場するペンギンは、大きさのちがう2匹のペンギン。(左側の小さい方がケープペンギン。右側の大きい方がキングペンギンです。)読みながら思わず身体が動いてしまう絵本です。

かめかめたいそう
作|齋藤槙|福音館書店|440円(税込)

人気作『ぺんぎんたいそう』の姉妹編が8年ぶりに登場です。カメには、あまり動かないイメージありますが、よく見るとゆったりとユニークな動きをしています。また、四つ足で動くところや、甲羅があるのもカメの魅力です。この作品でカメの面白さを感じてもらえたらうれしいです。さらに、絵本を読んだあとは、実際に体操して楽しむのもおすすめです。(なお、体操する際は安全に注意してくださいね!)

「こどものとも0.1.2.」 とは?

1995年に創刊した、0~2才の赤ちゃん向けの月刊絵本シリーズ。まだ限られた「ことば」「生活」「体験」の中で生きている赤ちゃんと、お母さんお父さんの豊かなふれあいの時間をつくる絵本を毎月1冊、年間12冊お届けしています。

詳しくはこちらから>>

 

文・取材/小林麻美

カメラ/黒石あみ

構成/HugKum編集部

編集部おすすめ

関連記事