冷蔵庫はどのような仕組みで冷える?
冷蔵庫がどのような仕組みで冷えるのかご存じでしょうか。冷蔵庫が冷える仕組みを大まかにでも知っていると、冷蔵庫が冷えないときの原因を見極めるために役立つでしょう。
気化熱を利用して冷やす
簡単に説明すると、冷蔵庫は「気化熱」を利用して冷やしています。気化熱の「気化」とは、液体が気体に変わる現象のことです。この気化が起きるときに、周囲から熱を奪います。
例えば、手にアルコール消毒液を付けると、涼しく感じられることがあるでしょう。それも気化熱の働きによるものです。
冷蔵庫の中には「冷媒」と呼ばれるものが入っていて、それが循環する際に気化することで冷気を出しています。一方、冷蔵庫の外側に触れると熱いと感じるでしょう。それは気化熱で冷蔵庫内を冷やした分、熱が放出されているためです。
冷蔵庫が冷えない原因
冷蔵庫が冷える仕組みが分かったところで、冷えなくなった場合に考えられる原因について紹介します。冷蔵庫が冷えないからといって、すぐに故障や買い替えと判断するのではなく、これから紹介するいくつかの原因を探ってみてください。
思わぬところに不具合があるだけで、簡単に問題を解決できるかもしれません。
電源が入っていない
意外と多い原因が、電源が入っていなかったというものです。冷蔵庫のコンセントは頻繁に抜くものではないため、「電源が入っているのは当然のこと」という考えが盲点になりがちです。
しかし、引っ越しや模様替えのタイミング、何かが引っかかったなどのアクシデントでコンセントが抜けてしまうことも考えられます。そのため、冷蔵庫が冷えてないと感じたら、まずは電源がきちんと入っているか確認しましょう。
冷蔵庫のタイプによっても異なりますが、電源が入っていると庫内のランプが点灯するものもあります。また、庫内全体が明るくなるものも多くあるので、チェックするのはそう難しくないでしょう。
設定温度が「弱」になっている
冷蔵庫内には、冷蔵庫の温度設定ボタンあるいはダイアルが付いているはずです。電気代を抑えるために「弱」に設定している家庭もあるかもしれませんが、真夏の場合は「弱」では中の食材を十分に冷やし切れないこともあります。
冷蔵庫は冷蔵室なら4℃以下、冷凍室なら-18℃以下が好ましい温度設定です。特にキッチンは、加熱調理をすると気温が上昇しやすい場所なので、冷蔵庫内の温度が上がりすぎないように気を付けましょう。
「弱」に設定していて冷えがよくないと感じる場合は、温度設定を「中」または「強」に変更してみてください。しばらく様子を見ると、冷蔵庫がきちんと機能しているかどうか確認できるはずです。
ドアパッキンの破損、劣化
長期間使用している冷蔵庫なら、冷えが悪い原因としてドアパッキンの破損や劣化が考えられます。冷蔵庫のドアは1日に何度も開け閉めをするため、ドアパッキンの劣化は避けられません。
冷蔵庫の冷えが弱くなったと感じたら、ドアパッキンが浮いたり剝がれたりしているところがないか確認しましょう。少しの範囲であっても不具合があると、そこから冷気が漏れてしまう可能性があるのです。
また、ドアパッキンが変形している場合なら、40℃程度に温めたふきんを当てると、歪みが元に戻ることがあります。簡単にできるので、試してみる価値はあるかもしれません。
放熱が不十分
冷蔵庫が冷える仕組みのところで、冷蔵庫は放熱していると説明しました。その放熱が十分にできていないと冷蔵庫が熱を逃し切れなくなり、庫内が冷えなくなってしまいます。
放熱が不十分になる原因としては、冷蔵庫が壁や食器棚、シンクなどと近いところに置かれていて熱がこもってしまうことが考えられます。冷蔵庫は、十分に余裕のあるスペースがないと放熱し切れません。放熱に必要なスペースが説明書に書かれているので、参考にしてみてください。
また、窓が近く、直射日光が当たる場所に置いている場合、冷蔵庫が温められてしまうこともあります。冷蔵庫自体が熱を持っていないかも確認してみましょう。
食材の詰め込みすぎ
冷蔵庫内に食材を詰め込みすぎて、冷気が巡回できずに冷えにくくなっていることも考えられます。冷蔵庫に入れる食材は、庫内の7割程度を占める量に抑えましょう。
特に温かい食べ物を、食材がいっぱいに入った冷蔵庫に入れるのは避けてください。冷蔵庫に入れるときは、食べ物を冷ましてから入れるのがポイントです。温かい食べ物を冷蔵庫に入れると、一気に庫内の温度が上昇してしまうので、一時的に冷蔵庫が機能しなくなることもあります。
庫内の霜も冷えない原因
次に気にしたいのが、「冷蔵庫内の霜」です。「霜があっても冷蔵庫の冷却機能と関係ないのでは?」と思うかもしれませんが、意外と冷却効果を下げる原因になっていることがあります。
冷気の通り道を塞いでしまう
冷蔵庫に温かいものを入れたりドアを開けっぱなしにしていたりすると、庫内に霜が発生します。その霜を放置していると、冷気の通り道を塞いでしまうことがあるのです。冷蔵庫自体は冷却しているのに、冷気が庫内を循環していない状態といえます。
霜ができたら取り除いた上で、霜ができた原因を特定しておく方が安心です。霜ができる原因がはっきりしない場合、霜取りセンサーの故障も疑ってみましょう。
薄い霜はぬるま湯で取る
薄い霜は、40℃程度のぬるま湯とふきんがあれば除去できます。ぬるま湯で濡らしたふきんで、庫内の霜を溶かしながら取り除いていきましょう。
霜取りの邪魔にならなければ、冷蔵庫に食材は入れたままでも構いません。霜を放置していると強固になり簡単に取り除けなくなってしまうので、薄い霜のうちに対応することが肝心です。
霜自体は薄いものの庫内の広い範囲に付いているようであれば、冷蔵庫のドアを長時間開けることになるので、庫内の食材をクーラーボックスなどに移動させるとよいでしょう。特に真夏は、食材が傷んでしまわないように気を付ける必要があります。
厚い霜は自然解凍で取る
厚くなってしまった霜は、ぬるま湯とふきんでは溶かし切れないこともあります。その場合は、庫内の食材を全て食べ切るかクーラーボックスに移して、電源を切ってから冷蔵庫のドアを全開にして、霜を自然解凍させましょう。溶けた霜は、乾いたふきんで拭き取ればOKです。
時間と手間がかかりますが、霜は冷気の通り道を塞いてしまうため、放置するのはおすすめできません。そのため可能な限り、薄いうちに取っておく方がよいでしょう。
なお、霜が厚いからといって、金属製のヘラやナイフなどでそぎ落とそうとするのはNGです。冷蔵庫内が傷ついてしまうことも考えられます。
霜を全て取り除いたら、その機会になかなか手の行き届かない庫内の掃除も一緒に済ませるのはいかがでしょうか。庫内がすっきりした状態だと、掃除がスムーズに行えるでしょう。
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それでも冷えない場合は?
電源が入っていて、霜もないのに冷蔵庫が冷えない状況であれば、他の原因も考えましょう。冷蔵庫が故障していた場合の対処法についても説明します。
異音がするなら故障かも
通常時でも冷蔵庫からはファンの音がしますが、氷が作られたわけでもないのにガタガタと異音が鳴る場合は、故障を疑った方がよいかもしれません。コンプレッサーの故障や音の吸収材の劣化などが原因として考えられます。
冷蔵庫が冷えなくなった時期と、ガタガタという音が鳴り始めた時期が一致するなら、メーカーや業者に相談してみた方がよいでしょう。
メーカーや業者に修理を依頼
手先が器用な方は、冷蔵庫も自分で修理してみようと思うかもしれませんが、冷蔵庫の故障に関してはプロに任せた方が賢明です。
冷蔵庫のコンプレッサーは、一般に向けて販売されているものではありません。メーカーや業者の方で冷蔵庫の修理経験がある場合を除いて、むやみに触ることで結果的に故障原因が複雑化してしまうことも考えられます。
冷蔵庫を購入したときに受け取った書類に、メーカーの問い合わせ連絡先が書かれています。修理業者を探す場合は、インターネット検索で「冷蔵庫 修理」と入力すると、多くの業者が見つかります。可能ならば、複数の業者から見積もりを取り、安さとサービスのバランスがよいところを選びましょう。
料金は、単純な作業費だけではない場合もあります。地域別出張料金や部品交換料金なども別途かかることがあるので、総額でいくらになるのか明細もチェックしましょう。
おおよその目安ではありますが、冷蔵庫修理の総額は5万円程度です。もしかすると、修理に出すより買い替えたほうが安い場合もあるかもしれません。
冷蔵庫の買い替えを検討しよう
冷蔵庫の買い替え目安の期間はどのくらいなのでしょうか。故障の場合はもちろんのこと、どのようなタイミングで冷蔵庫を買い替えたらよいのかも知っておきましょう。
寿命の目安はおよそ9年
冷蔵庫の寿命は、平均して「9年程度」です。冷蔵庫が故障したら部品を交換することもありますが、その部品の保有期間は9年となっています。製造から9年以上経ったら、部品がないこともあり得ます。
ただし国税庁によると、冷蔵庫の耐用年数は6年となっています。そのため、9年よりも前に故障してしまうこともあるとも考えられます。冷蔵庫の使用方法によっても違ってくることなので、6~9年を目安に替え時を検討してみましょう。
冷蔵庫全体が冷えない場合だけでなく、冷凍庫のみ冷えないという故障の仕方もあります。長期間使用している冷蔵庫であれば、修理と買い替えの両方を検討し、よりよい選択をしましょう。
参考:【確定申告書等作成コーナー】-耐用年数(器具・備品)(その1)
冷え方にムラがある場合も寿命のサイン
冷蔵庫は、冷蔵室なら4℃以下、冷凍室なら-18℃以下に設定されています。チルド室やドア部分など以外は、左右で冷え方に差がないはずです。そのため、冷蔵庫の左だけ冷えていないなどの症状がある場合は、寿命を疑ってみましょう。
完全に故障したとはいえなくても、不調の兆しかもしれません。冷蔵庫がないと、生活に不自由さを感じる人が多いのではないでしょうか。全く使えなくなる前に、メーカーや業者に相談したほうが安心です。
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不要になった冷蔵庫の処分方法
最後に、不要になった冷蔵庫の処分方法について説明します。
冷蔵庫は、エアコンやテレビ、洗濯機と同様に、家電リサイクル法が適用される家電です。処分する際には3000~5000円のリサイクル料金がかかり、粗大ごみとして出すことはできません。正しい処分方法をしっかりと理解しましょう。
参考:家電リサイクル法(特定家庭用機器再商品化法)|経済産業省
買い替えた店で引き取ってもらう
冷蔵庫を買い替える場合、新しい商品を購入する店で古い冷蔵庫を引き取ってもらうことも可能です。
リサイクル料金や運搬料金が別途必要となることもありますが、交渉次第ではそれらも含めて割引してもらえることがあります。購入する前に、処分方法についても店員などに相談してみるとよいでしょう。
市区町村に問い合わせる
買い替えではなく、冷蔵庫が不要になり処分を考えているなら、市区町村の役場などに問い合わせると正しい処分方法を教えてもらえます。
市区町村によっては、代行で引き取ってくれたり業者を紹介してくれたりする場合もあります。冷蔵庫は粗大ごみとして出すことはできないので、市区町村のルールに従いましょう。
指定の引取場所に持ち込む
全国各地にある指定の引取場所に持ち込む方法もあります。自分で冷蔵庫を運ぶなら運搬料金がかからないため、多少コストを抑えられるかもしれません。
ただしリサイクル料金はかかるので、忘れず払うようにしましょう。指定の引取場所については、一般社団法人家電製品協会のサイトから確認できます。
冷えなくなったときは原因を見極めよう
冷蔵庫が冷えない場合、意外にも電源が抜けているだけということもあります。それ以外にも、庫内の食材が多すぎて冷え方が鈍いだけかもしれません。異音がしたら、メーカーや業者に相談する必要がありますが、まずは自分で確認できるところはチェックして原因を見極めましょう。
また、冷蔵庫を修理をする場合は、メーカーや業者に依頼するのがベターです。買い替えを検討する場合は、不要になった冷蔵庫の処分方法にも決まりがあるので、正しい方法を覚えておきましょう。
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文・構成/HugKum編集部