元園長先生が今、語る! 保護者から多かったあの質問にお答えします【教えて!保育士さん】vol.9

HugKumでは【教えて!保育士さん】シリーズとして『保育士座談会』の様子を連載でお届けしています。 子育て中のみなさんへ、保育のプロである現役保育士さんのリアルな声をお伝えしていきます。9回目は、シリーズで初めて、園長を経験した先生方にお集まりいただきました! これまでの保育士生活で感じてきたことや、お母さんお父さんに伝えたいことを、前編・後編の2回に渡ってお届けします。

【お話を伺った先生】

左から、柏市認可保育所元施設長・楽習保育(R)教育アドバイザー 早坂 まり先生、港区認可保育所元施設長・楽習保育(R)教育アドバイザー 村山 みな子先生、横浜市認可保育所元施設長・楽習保育(R)教育アドバイザー 三堀 律子先生

園長先生って何をしているの?

筆者:園長先生は、毎日どんな仕事をしているのでしょうか。

園長先生はみんなのお母さん!全体を見守っています

三堀先生:園長先生っていつも事務所に座っているイメージがありますよね。でも、午前中は意外と動き回っているのですよ。園長の仕事の一つに全体把握があります。朝、各クラスや給食室などを回って、園児や職員の様子を確認します。おうちでも、お母さんは起きてきた子ども達に声をかけますよね。そんな役割です。声をかけながら、全体の空気を感じます。保護者の方にも挨拶をしながら、今日は元気がないなと感じたら、いつもより一声多くかけています。

村山先生:午前中は保育に入ることも多くありますね。公園でケガをした子がいたら、自転車で駆けつけることもありますよ。また、新卒の先生もいますので、職員の育成も仕事のひとつ。とは言え、園児達の前で指導をされると職員も嫌だと思いますので、気に留めておいて後でアドバイスできるようにしています。

早坂先生:お昼からは事務所にいる時間が増えます。昼礼を行って、職員同士の情報報共有を行ったり、行政とのやり取りや地域の連携など事務的な作業を行ったりもします。そして、お迎えが始まると、保護者の方にひとことお声がけをします。登園の時間帯は保護者の方はお忙しいので、お迎えの時のほうが話しやすいんですね。職員も相談したいことがあれば声をかけてくれるので、できるだけ事務所にいて、いつでも声をかけてもらえるようにしています。

筆者:園長先生は、園児や保護者、先生方にも気を配りながら、一日中いろいろな仕事をされているのですね!

保護者の方から一番多い相談は?

筆者:保護者の方からよくある質問にはどんなことがありますか?

発達に悩む親御さんは多い。でも、じっくり成長するタイプの子も

早坂先生:発達面でのご相談は多いですね。保育園時代の子ども達は成長発達が著しい時期。個人差が大きく、うちの子はこんなことができない、あの子はこんなことができるのに、と心配されることは多いです。例えば、言葉の発達が遅いという悩みがありますが、聞いた言葉をすぐ口に出すお子さんもいれば、頭の中に貯めていって、いっぱいになった時に急に話し出すタイプのお子さんもいるんです。ですから、お子さんのタイプを見極めたうえで、保育園でやっていることを具体的にお話しし、おうちでも絵本の読み聞かせや言葉がけをたくさんしてみてくださいね、とお伝えしています。

 村山先生:外から見ると、一見成長していないように見えたり、戻っているように見えたりすることがありますよね。でも、それは中でためているタイミングで、次のステップでいっきに成長する時が来ます。私たちは階段に例えて「踊り場」と呼んでいますが、次にどんな成長をしてくれるのだろうと楽しみに待ってほしいと思います。

親が期待する保育園行事。子どもが参加しないときは?

筆者:子どもが行事に参加しない、という時はどう話していますか?

行事に参加しないのには子どもなりの理由がある

村山先生:お子さんごとに、参加しない理由はいろいろあります。過去の失敗談ですが、しっかりしたお子さんだからと大きな役を与えたところ、プレッシャーを感じて当日できなくなってしまったことがありました。かわいそうなことをしましたね。ほかにも「自分にできるだろうか」と自信が持てずに参加しない子もいます。行事に対するお子さんの思いもありますので、保護者の方には「今は気持ちを大事にしたいので、見守らせてください。そのかわり、普段の生活の中で成功体験が積めるようにしていきましょう」と伝えています。保護者の方にとっても、行事は大きなことなので、丁寧にお話させていただいています。

 三堀先生:お母さんにとって、子どもは分身のような存在。主観になってしまうんですね。「なんでできないの!」という気持ちになります。でも、今できなくてもいいんです。「お子さんには、いいところがたくさんあるのだから、もっと先を見てあげましょう」と伝えています。私たちは小学校に送り出すことを目標としてはいますが、その子の人生は小学校で終わるわけではありません。社会に出て、そこで自分の力を発揮できればいいので、そこまで見ていてほしいなと思います。

村山先生:そうそう。私はいつも大器晩成でいいじゃないですか。と言うんです。成功体験や失敗、葛藤を乗り越えることが、これからにつながっていくので、さまざまな経験をどういう風に乗り越えるかのところが大切だと思っています。

子どもの成長も、長いスパンで見れば気楽に

母親にとって、子どもは分身のような存在という言葉にはハッとさせられました。「うちの子はなぜできないの?」と思って不安になるのは自然なこと。でも、そんな時こそ視野を広げ、大人になるまでの長いスパンで成長をとらえることで、先生の話していた「今できなくてもいい」という言葉が受け入れられる気がします。子どもの気持ちを大切にしながら、おおらかな気持ちで成長を見守ってあげたいですね。

後編では、イヤイヤ期の子どもへの対応や、子育てを頑張るお母さんやお父さんに伝えたい、大切なことをご紹介します!

 

文・構成/寒河江尚子 

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