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「ヘアターニケット症候群」は、低月齢の赤ちゃんに起きやすい傾向が!
「ヘアターニケット症候群」は、髪の毛や体毛、糸などが手足の指などに偶発的に絡まって起きます。とくに0歳児に多く、なかでも0~3ヵ月ぐらいの低月齢の赤ちゃんに起きやすい傾向があります。
たとえば指に輪ゴムをきつく何重にも巻きつけると、血流が滞って輪ゴムよりも先の指が腫れていきます。時間の経過とともに血流はさらに悪く指先の腫れはひどくなっていきます。「ヘアターニケット症候群」の症状は、これと同じです。
そのままの状態で長時間放置しておくと、最悪の場合、患部の組織が壊死する危険性もあります。
機嫌が悪い、泣き止まないときは、手足の指も確認
「ヘアターニケット症候群」は、早期発見・早期治療が大切です。赤ちゃんの機嫌が悪かったり、泣き止まなかったりすると、赤ちゃんをあやす以外に検温したりおむつをかえたりすると思いますが、同時に手足の指もよく見てみましょう。
髪の毛や糸などが絡まっていたときは、ママやパパが絡まっている髪の毛や糸を少し引っ張ってはさみで切れるか確認しましょう。家庭で切れる場合は、患部を傷つけないように注意しながら切ってください。
ただし強く絡みついていると、髪の毛や糸などが皮膚に喰い込んで見えないこともあります。家庭で切れない場合は、すぐに医療機関を受診してください。診察時間外のときは、急いで救急外来を受診しましょう。
産後の抜け毛が原因になることも! こまめな掃除を心掛けて
前述でも触れましたが「ヘアターニケット症候群」は、とくに低月齢の赤ちゃんに見られる傾向があります。
理由はわかりませんが、1つの推測としては低月齢の赤ちゃん特有の「原子反射」が関係しているのではないかと考えられます。原子反射の中には、赤ちゃんの手のひらや足の裏に何かが触れると勝手にギュッと握ってしまう「把握反射」というものがあります。産後は、ママも抜け毛が多くなるので、赤ちゃんの手のひらや足の裏に抜け毛がつくこともあるでしょう。抜け毛などに触れることで反射的に指が動き、毛が絡まってしまう可能性が考えられます。
また抱っこしているうちに、洋服の繊維などが指に絡まることもあるでしょう。
「ヘアターニケット症候群」を早く発見するには、着替えやおむつ替え、おふろのときなどに手足の指をよく見る習慣をつけることが第一です。
また赤ちゃんがいる場所だけでもいいので、こまめに掃除をすることが予防につながります。掃除機をかけるのが大変なときは、粘着式クリーナーなどを活用してください。
思春期の女の子は、陰毛が絡まり受診することも
「ヘアターニケット症候群」は、赤ちゃんだけでなく思春期の女の子がなる場合もあります。
2019年、当時勤務していた東京都立小児総合医療センターで「ヘアターニケット症候群」と診断された8症例を調べたところ、2症例は10歳と14歳の女の子で、陰毛が小陰唇(腟の入り口にあるヒダ)に偶発的に絡まり、救急外来を受診しています。
2人とも前日から違和感があり、だんだん痛みが強くなって我慢できなくなり、親に相談して救急外来を受診したという経緯でした。思春期の子どもの陰部の違和感や陰部痛では、恥ずかしくて親に言い出せず、受診が遅れる可能性があります。
赤ちゃんの場合は、親が発見してすぐに受診することが多いようですが、この2人の女の子は受診までに10時間ぐらいかかっています。
早期発見・早期治療が何よりも大切!
「ヘアターニケット症候群」は早期発見・早期治療が遅れると、大事に至ることもあります。そのため思春期の女の子がいる家庭は、子どもに陰毛による「ヘアターニケット症候群」のことを教えて、違和感や痛みがあるときは、すぐに親に言うように伝えましょう。
記事監修
竹井寛和先生
日本小児科学会専門医、指導医。日本救急医学会専門医。日本小児救急医学会代議員。
取材・構成/麻生珠恵