ディズニー・アニメーション・スタジオの記念すべき60作目『ミラベルと魔法だらけの家』が11月26日(金)より公開となりました。本作は『モアナと伝説の海』(17)以来4年ぶりとなるミュージカル・ファンタジーなので、家族みんなで映画館に行って、音楽とドラマをめいっぱい堪能してみてはいかがでしょうか?
舞台となるのは不思議な魔法の力に包まれたマドリガル家。この家の人たちは、5歳になると、1人1人に“魔法のギフト(才能)”が与えられてきました。例えば、長女イサベラは、自由に花を咲かせることができるという花の魔法を、ミラベルの次女ルイーサは5頭のロバを軽々と担ぎ上げられるような力の魔法を使うことができます。でも、なぜか末娘のミラベルだけ、何の魔法も使えません。
そんなミラベルが、ある日、家に大きな”亀裂”があることに気づきます。その後、マドリガル家の人々が持つ魔法の力に異変が起こっていきますが、その大ピンチをなんとか救おうと、ミラベルはある行動を起こしていきます。
本作は、魔法を扱った物語なのに、主人公が魔法を使えないという設定がミソ。家族のヒストリーが絡む展開となりますが、いい意味で予想を裏切られる着地点を迎えます。
ミラベル役に大抜擢された新星・斎藤瑠希の美声が心を鷲づかみ
繰り返しますが“ディズニー・アニメーション・スタジオ60作目”という冠つきの本作。そのヒロイン、ミラベルの座をオーディションで射止めたのは、まだ手垢のついていない新人、斎藤瑠希(さいとう・るき)でした。
彼女はLittle Glee Monsterを輩出したプロジェクト「最強歌少女オーディション2014」で見いだされて芸能界入りした注目株ですが、ここまで大役に抜擢されたのは初めてだそう。その伸びやかな歌声は、一度聴いただけで胸アツになりそう。
ミラベルには魔法のギフト(才能)が与えられたなかったという設定ですが、斎藤さんはまさに才能の塊です。ミラベルの葛藤や悩み、開放感に至るまで、表現力豊かに歌い上げているので、観る者の五感をも解放させ、よりミラベルに感情移入させてくれそうです。
「アナ雪」を受け継ぐ、あるがままでいることの大切さ
『アナと雪の女王2』(19)や『ラーヤと龍の王国』(21)など、近年のディズニー映画は、予定調和なところに着地しない結末が非常に新鮮です。『アナと雪の女王2』は、前作を遥かに上回るサーガを綴ったダイナミックな映画でしたし、『ラーヤと龍の王国』も意表をついたクライマックスに「そう来るか!」と驚きました。本作でも、ひねりのきいたストーリーテリングがニクイです。
魔法を手にしないヒロインが、それを手にするために奮闘していく、という王道的な展開を敢えて外すことによって、先が読めません。もっと言えば、ミラベルだけではなく、魔法を使える側の家族たちの内面も掘り下げていく点が新しいです。そうすることで、それぞれの意外な本音が明かされます。
確かに、他人の心の内はその人本人でしかわからないもの。ただ、私たちはパンデミックという予想外に長引く試練を強いられている今こそ、自分の大切な人たちに対してちゃんと思いやりを持って接しているのかが、問われている気がします。
本作が訴えるのは、「アナ雪」でも連呼されてきた、あるがままでいることの大切さや、家族における愛の絆です。まさに今、大事にしたいものとは何なのかについて、改めて気づきを与えてくれる1作にもなっています。そういう意味では、家族で観ていただき、そのあと親子でいろんなアフタートークに花を咲かせてもらえれば最高です!
監督:バイロン・ハワード、ジャレド・ブッシュ
声の出演:ステファニー・ベアトリス、ジェシカ・ダロウ、ダイアン・ゲレロ…ほか 日本版声優:斎藤瑠希、ゆめっち(3時のヒロイン)、平野綾…ほか
公式HP:https://www.disney.co.jp/movie/mirabel.html
文/山崎伸子