冬休みの親子遊びに試してみては? 国立天文台の市民天文学プロジェクト「GALAXY CRUISE」体験記

星にまつわる特別な体験を親子で冬休みに楽しみたいなら、日本の国立天文台が推進する市民天文学プロジェクト『GALAXY CRUISE(ギャラクシー クルーズ)』はいかがでしょうか? 市民天文学者として銀河の分類作業に協力するユニークなプログラムの体験記です。

星空を肉眼で眺める時期として冬は最高です。雪国暮らしの人となるとなかなかすっきりと空が晴れませんが、冬の夜空に輝く星の美しさはやはり格別ですよね。そんな星への関心が高まりやすい冬が始まり、長期の休みもスタートしたわけです。

星にまつわる特別な体験を親子で楽しみたい場合は、日本の国立天文台が推進する市民天文学プロジェクト『GALAXY CRUISE(ギャラクシー クルーズ)』に参加してみてはいかがでしょうか?  内容を簡単に言えば、市民天文学者として銀河の分類作業に協力する活動です。

「え、難しそう……」という方、筆者もまったく同じ思いで子どもに体験させたのですが、大丈夫でした。その体験記を今回は紹介しますので、気になる人は最後まで読んでみてください。

星の集団(銀河)の分類作業に参加するプログラム

国立天文台が推進する市民天文学プロジェクトの『GALAXY CRUISE(ギャラクシー クルーズ)』とは冒頭でも書いたとおり、市民の天文学者として国立天文台の銀河の分類作業に参加するプログラムです。

近いイメージと言えば、市民のボランティアとして恐竜の発掘作業に参加する感じでしょうか。

ハワイ島の中央北部にあるマウナケア山(4,205メートル)の山頂にあるすばる望遠鏡に搭載された、世界最高性能の超広視野主焦点カメラ「HSC」でとらえた宇宙をインターネット上で旅しながら、銀河の分類に参加するのですね。

そもそもなぜ銀河を分類する必要があるのでしょう。私たちの知らない間に銀河は衝突や合体を繰り返していて、そのたびに成長を遂げているそう。しかしその衝突や合体が与える具体的な影響については謎が多いらしく、衝突や合体のサンプルを大量に宇宙から見付け出す必要があるのだとか。

数えきれないほどの銀河が宇宙には存在します。合体・衝突している銀河をその中から探し出す作業もプロの天文学者だけだと大変です。だからこそ市民天文学者の協力が求められるのですね。

より露骨に言えば、市民天文学者の参加を増やしデータ収集を加速する狙いが国立天文台の側にあります。しかしその参加機会を広く開放しながら、天文学への関心を市民の間で高めてもらいたいとの狙いも一方であるようです。

ゲーム感覚で天体観測を体験

体験前の率直な感想としては、何も知らない市民の立場から星の集団(銀河)など正確に分類できるわけがない(できたとしても初歩的な作業に終始するだけで興味が続かない)、インターネット上に再現されたきれいな星を眺めるだけなら本物の夜空を鑑賞したほうがいいとも感じました。

しかし実際に体験してみて子どもの反応を見ると、天体や科学に関する興味関心のきっかけになると思います。

その意味で冬休みや長い休みの自主学習として、一度くらいは試す価値があると思いますが、いかがでしょうか。

「星博士」の誕生

トレーニングを終了した人に発行される乗船許可証(英語版)。プログラムは英語版でも楽しめる。

 

『GALAXY CRUISE(ギャラクシー クルーズ)』では市民天文学者としてデビューする前に、簡単なレッスンをクリアしなければいけません。銀河の分類に参加するのですから、銀河にはどういった種類があって、衝突・合体する銀河にはどのような特徴が出るのかを学ばなければいけません。

そのトレーニングに子どもと参加して思いましたが、親の翻訳力が求められる気がします。

大前提として銀河には、

● 楕円(だえん)銀河
● 渦巻銀河

があるようです。その楕円(だえん)銀河と渦巻銀河を見分ける練習からスタートしますが、振り仮名が一部あるものの使われている言葉がすべて大人向けです。

大人が説明を添えながらのトレーニング

小学1年生と年中児の娘と一緒にパソコン画面を開いてみましたが、子どもが画面を読めない、読めても漢字が多すぎるようで、楕円銀河を「たまごがた銀河」などとその都度置き換えて説明する必要がありました。

解説に続く分類作業の練習になると、ますますフォントが小さくなり、振り仮名も消えて、完全に大人向け(少なくとも中学生向け)な印象になっていきます。

小学1年生と年中児の娘と一緒にチャレンジしようと思った筆者がそもそも間違っているのかもしれませんが、分類の作業自体は意外に簡単ですから、伝え方を工夫すれば小学校1年生でも(それこそ年中児でも)楕円(だえん)銀河と渦巻銀河の分類はクリアできます。

その練習が終わると、衝突や合体する銀河を見分けるトレーニングがステップ2で続きます。

衝突や合体の仕方を分類する練習がステップ3でさらに用意されています。

本番前のトレーニングは以上。年中児の娘はパソコン画面の前から途中で離れておままごとに浮気していましたが、小学校1年生の娘は心配をよそに、トレーニング3を終えるころには自信満々になって「私は星博士だ」と目を輝かせていました。

<国立天文台が所有する最新の大規模データに触れることで、市民(=シチズン)のみなさまに、天文学の魅力を味わっていただく>(GALAXY CRUISEより引用)

との狙いは、まさにわが家では達成されたわけです。

これ、間違っていたらどうするの?

トレーニングを終えると、世界最高性能の超広視野主焦点カメラ「HSC」でとらえた宇宙を実際に旅しながら、銀河の分類作業に取り掛かる形になります。

市民天文学者のキャリアに合わせて分類に参加できる銀河が異なるようです。デビューしたてのころは自分に与えられたミッションを次々とこなしながらキャリアを積んでいきます。

「星博士」を自称する娘も意気揚々と星の分類に取り掛かりました。

作業は以下のとおりです。

1, 銀河を見て、楕円(だえん)か渦巻かをまず判断します。
2, 衝突しているか・していないかを次に判断します。
3, 衝突している場合はどのような状態で衝突しているかを分類します。

すべてを確定させると緑色のチェックボタンが画面上に大きく示されるので次の銀河へ移ります。

「これ、間違っていたらどうするの?」

と分類作業を横で見守りながら筆者はずっと不安を感じていました。しかし大勢の人が同じ銀河を分類し「集合知」のような感じで恐らく正解が決まっていくのだと思います。市民天文学者の一人一人はそれほど分類の精度を心配しなくてもいいようです。

親がサポートすることで、親子の共同作業に

どんな分類をしようとも最後は緑色の大きなチェックボタンが画面に印されます。自分の選択が全部正解していると子どもには恐らく思えるのでしょう。ますます自信をもって分類作業に娘は取り掛かっていました。

とはいえ夢中になる娘にパソコンを託してしばらく一人にしておくと、イレギュラーな操作上の処理が必要になった時、小学1年生の子どもだけでは対応できないみたいでした。やはり親子で始めて、子どもに火が付くまで見守り続ける、定期的にハッパをかけるなど、親のサポートが必要なのかなと思いました。

いずれにせよ宇宙や星や銀河が身近に感じられるいい機会です。日本人の民間人が宇宙に飛び立ったニュースも最近話題になりました。何がきっかけで子どもの未来が切り開かれていくか分からないと思えば、この冬休みを利用して一度は親子で楽しんでみてもいいかもしれませんね。

文/坂本正敬

【参考】

GALAXY CRUISEについて

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