Q:口下手でうまく伝えることができません。
息子は家では家族と話せるのですが、学校では無口になってしまうようです。先生に、話しかけても首を傾げたり、あまり返事が返ってこないと言われました。友だちとの交流も、誘われるまで輪に入ることができないようなのです。言いたいことが言えない、自分のしたいことを伝えられないと、大変な思いをするのではと心配です。親としてできることはありますか? (Y・O さん)
A:話し始めるのを根気よく待つことが、大切です
この子のように、自分から動くのが苦手、つまり、自発行動が少ない子は、脳内の処理速度や反応が遅く、言葉に変換されるまでにとても時間がかかります。例えて言うならば、見えているけれど少ししかないマヨネーズを絞り出すようなものです。
そんなわが子に、お母さんができること、それは子どもが一生懸命言葉を絞り出そうとしている間は、イラつかず、根気よく待つことです。決して、「早く」とか、「どうしたいのか言って」と急かしてはいけません。それは、伝えようとがんばっている子どもの心を簡単に折ってしまうことになりますからね。
そして、しばらく待っても難しそうなときは、「こうやって言えばいいんだよ」と、やさしく提案しましょう。お母さんが言ったように話すのは、子どもにとってゼロから話すより楽になります。
顔の筋肉を鍛え、体も動かしましょう
それから、口下手を解消するために、顔の筋肉を動かすことはとても効果的です。例えば、食事はよく噛んで食べることで、咀嚼筋が鍛えられます。また、家族で歌を歌うのもおすすめです。おうちの人が口を開けて声を出すお手本を見せることがポイントです。ぜひやってみましょう。
あとは、体をしっかり動かすこと。とくに、サッカーや野球などは、コミュニケーション力がないと難しいスポーツです。お子さんが嫌がらなければ、こうしたクラブチームに入れてみてもよいのではないかと思いますよ。
あせらず根気よく聞き役となり、声出しや話し方はおうちの人がお手本となって見守ることが大切です。
できることに目を向け、「9対1の法則」を心がけましょう
親は子どものできないことに目を向けがちです。子どもが素直に聞いてくれる「9対1の法則」をお教えしましょう。できている9割のことを「それでいいんだよ」と1つひとつ肯定し、最後にできていない1割について「こうしたほうがいいよ」と提案します。すると、子どもは素直に受け入れてくれるのです。
もっと子どものできることに目を向け、この「9対1の法則」を心がけましょう。すると、子どもとのコミュニケーションは驚くほどスムーズになるのではないかと思いますよ。
\私がお答えしました/
加藤 俊徳 先生
脳を8つの系統に分けて育てる「脳番地トレーニング」を提唱。昭和大学客員教授。加藤プラチナクリニック院長。著書に、『すごい左利き』(ダイアモンド社)、 『ADHDコンプレックスのための“脳番地トレーニング”』(大和出版)など多数。 InterFM 897 「脳活性ラジオ Dr. 加藤 脳の学校」のパーソナリティーを務める。
1925年創刊の児童学習雑誌『小学一年生』。コンセプトは「未来をつくる“好き”を育む」。毎号、各界の第一線で活躍する有識者・クリエイターとともに、子ども達各々が自身の無限の可能性を伸ばす誌面作りを心掛けています。時代に即した上質な知育学習記事・付録を掲載し、HugKumの監修もつとめています。
『小学一年生』2022年3月号別冊『HugKum』 イラスト/やまのうち直子 構成/天辰陽子