親子でアート鑑賞は「対話」がポイント。美術館デビューで思考力・観察力をみがくコツ

教育と訳されるeducation の語源はeduce。「能力や可能性を引き出す」という意味です。本来の意味を知る福沢諭吉はeducation を「発育」とすべきと主張したそう。この連載では、教える側ではなく学ぶ側を主体とした「発育」をコンセプトに最先端の教育事情を紹介します。

親も子も楽しい! 美術館歩きのコツ

これまで小学生向けに鑑賞プログラムを多く展開している東京都現代美術館の学芸員・鳥居茜さんに、親子でアート鑑賞を楽しむコツを伺いました。

 

まず、想像力を使って作品を見る

アートに苦手意識があると、鑑賞する前に作者や作品について下調べをしないといけないのでは?  と考えがち。また、館内で走り回ったらどうしようなど気を使って集中できないと感じる親御さんも多いかもしれません。でも、「親に予備知識がなくても、子どもが小さくても親子鑑賞は楽しめる」と東京都現代美術館の鳥居茜さんはいいます。

「課外授業などで美術館に来てくれた小学生には、鑑賞前に、想像力を使って作品を見てほしいと伝えます。また、『今日はみんなが想像したこと、発見したことすべてが正解。気づいたことや考えたことはどんどん言葉にしてね』とも。親子で美術館に行く際も、こういった鑑賞の前提を伝えておくといいでしょう」

対話を通して、観察力や言語化する力も

これまで美術館というと、私語厳禁というイメージがありましたが、現在は周囲に迷惑がかからない程度の声の大きさであれば、対話しながら鑑賞できる施設がほとんど。最近では、MoMA(ニューヨーク近代美術館)で開発された対話型鑑賞を応用した、コミュニケーション重視の鑑賞に注目が集まっています。

対話型鑑賞とは、「この絵の中で何が起きていると思いますか」といった質疑応答から鑑賞者の発言を引き出していく方法。こういったコミュニケーションを親子鑑賞に取り入れるのも、楽しみのひとつです。

絵の中で何が起きているか』と聞かれると、作品をよく観察します。その後『どこを見てそう思ったのですか?』と尋ねると根拠を考えるようになります。さらに『ほかに発見はありますか?』と尋ねられると別の視点を探します。このように、対話をしながら鑑賞すると、子どもは観察力や想像力、考えを言葉にする力を使います。さらに1つの作品をいろいろな視点から見る経験は、アート鑑賞に留まらず、日常をとらえる新たな視点を得ることにもつながります」

鳥居さんは、子どもの発見や発言を否定しないことも大切だと語ります。アート鑑賞は正解探しではありません。親も童心に返り、子どもと一緒に想像力をフルに発揮させてみましょう。

ステップ1 美術館に行く前にチェック

親子鑑賞のデビューに最適なのは、体験や遊びができる展示、あるいは映像作品や動きのある作品の展示。最近は、実際に行った人がSNS で写真とコメントを発信していることも多いので、事前にリアルな感想をチェックしておくと安心です。

子ども向けの展示でなくても、親の好きな作家や興味のある展示に一緒にいくのもいいですね。子どもの集中力や混雑状況を考えると、午前中の来館がおすすめ。

ポイント

・体験ができる展示、動く作品が好き
・SNS で行った人の感想をチェック
・午前中の来館がおすすめ

ステップ2 美術館でのマナーを伝える

美術館は作品を見る場であると同時に、作品を守る場でもあるので、「走らない」「騒がない」「触らない」が鑑賞マナー。

これを伝える際には「ダメ」という言い方ではなく、「ゆっくり歩こう」「小さい声で話そう」「離れて見よう」のようにポジティブな言葉で伝えるとスムーズです。また「かっこいい鑑賞のポーズはペンギンさんのポーズだよ」と伝えると、子どもの手が自然と後ろにまわります。

ポイント

・作品を守る場でもあることを伝える
・鑑賞マナーをポジティブな言葉で説明
・ペンギンさんポーズで鑑賞

ステップ3 作品をいろいろな視点から見る

オブジェや彫刻といった立体作品は、近づいたり離れたりして見方を変えることで、「同じ作品でも視点が変わると印象が変わる」という気づきを促すことができます。

また、美術館によっては、パンフレットやイヤホンなどで作品のガイドがあります。そういったツールを利用すれば、自分以外の着眼点を知って視点を広げることも可能。

東京都現代美術館には、作品の見どころがわかる「MOTみつけるマップ」が用意されています。

アルナルド・ポモドーロ《太陽のジャイロスコープ》(東京都現代美術館)

東京都現代美術館の「MOTみつけるマップ」

ポイント

・作品をいろいろな角度から見る、視点を変えて見る
・ガイドを利用して視点を広げる

ステップ4 対話しながら作品を見る

多くの美術館では、周りに迷惑がかからない程度であれば対話をしながら鑑賞することができます。

より深く作品を楽しむには、「リビングに飾るならどの絵がいいと思う?」「(人物の絵に)セリフをつけるとしたら?」など、作品を自分事として考えられる問いかけをすると、楽しく鑑賞できます。親も子どもと一緒に考えてみましょう。

さらに「どうしてその作品を選んだの?」といった質問をすると、子どもの着眼点や思考のプロセスを知ることができます。

ポイント

・作品を自分事として考えられる質問をする
・セレクトの理由を尋ねて対話を深める
・子どもだけでなく親も一緒に考える

 

東京都現代美術館

住所:東京都江東区三好4-1-1(木場公園内)
TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル)
開館時間:10:00〜18:00(展示室入場は〜17:30)
休館日:月曜(祝日の場合は翌平日)
https://www.mot-art-museum.jp

展示情報
Viva Video! 久保田成子展
2021年11月13日(土)〜2022年2月23日(水・祝)
映像と彫刻を組み合わせた「ヴィデオ彫刻」で知られる久保田成子(1937-2015)の
没後初となる大規模個展。復元されたヴィデオ彫刻のほか、ドローイング、資料などを
中心に国内美術館の所蔵品や遺族からの借用品を含め、初公開資料も多数展示。

※新型コロナウイルスの感染拡大により、開館時間や展覧会の開催期間が変更になる可能性があります。

 

「発育のススメ」は『小学一年生』別冊HugKumにて連載中です。

1925年創刊の児童学習雑誌『小学一年生』。コンセプトは「未来をつくる“好き”を育む」。毎号、各界の第一線で活躍する有識者・クリエイターとともに、子ども達各々が自身の無限の可能性を伸ばす誌面作りを心掛けています。時代に即した上質な知育学習記事・付録を掲載し、HugKumの監修もつとめています。

『小学一年生』2021年11月号別冊HugKum 構成・文/山本章子 イラスト/谷端実 

 

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