「疑心暗鬼」の意味や読み方とは?
「疑心暗鬼」の正しい意味を知っていますか? ここでは、今さら聞けない「疑心暗鬼」の意味や、由来を解説していきます。
読み方と意味
「疑心暗鬼」とは「ぎしんあんき」と読み、意味は「疑う気持ちが強くなると、何でもないことまで恐ろしくなってくること」です。もともとは、「疑心暗鬼を生(しょう)ず」という言葉でしたが、現在は「疑心暗鬼」という四字熟語で広く使われています。
そもそも「疑心」とは「疑う心」という意味。「暗鬼」とは暗闇の中に見える鬼という意から、「妄想から生まれる恐れや疑い」をあらわします。この2つの熟語を組み合わせて、「疑いの心を持っていると、暗闇の中に鬼までが見えてしまうこと」をたとえる言葉として使われるようになりました。
由来・語源
「疑心暗鬼」は、中国の昔の思想書『列子』に書かれている話が由来になっている故事成語です。ある男が、鉞(まさかり ※斧のこと)を失くしてしまい、隣の家に住む息子が盗んだのではないかと疑い始めます。一度疑うと、その息子の言葉や行動が全て疑わしく思えてきてしまったのだそう。
しかしある日、鉞が見つかった途端、それまでの疑いが嘘のように、息子のことをまったく怪しく感じなくなったのだとか。この話がもとになり、「疑心、暗鬼を生ず」という言葉が生まれたのだそうです。
使い方を例文でチェック!
「何でもないようなことまで疑わしく思えてくる」という意味の「疑心暗鬼」。誰でも一度は味わったことのある気持ちではないでしょうか。ここでは、実際に「疑心暗鬼」を使った例文を見ていきましょう。
1:「親友に裏切られたことのある息子は、どんな人に対しても疑心暗鬼になっている」
最もよく使われる「疑心暗鬼」の言い回しは、「疑心暗鬼になる」です。「疑心暗鬼になる」は、必要以上に相手のことを疑ってしまったり、怪しんでしまったりするときに使います。そのため、不安や恐れを感じているようすをあらわしますね。
2:「妹は昔の彼氏に浮気されたため、彼氏ができるたびに疑心暗鬼に陥っている」
「疑心暗鬼」は、「疑心暗鬼に陥る」「疑心暗鬼に駆られる」といった表現でも使われます。この例文のように、「疑心暗鬼」は恋愛のシーンでも使われることが多い言葉。この例文では、過去の経験がきっかけとなり、相手のことを信じられなくなってしまっている女性の心理状態をあらわしています。
3:「疑心暗鬼から抜け出すには、冷静になることが大切だ」
この例文で使っている「疑心暗鬼から抜け出す」は、「必要以上に疑ってしまう状態から抜け出す」「無用な心配や疑いの心をなくす」という意味です。そもそも「疑心暗鬼」は、疑う必要のないことまで疑ってしまっている状態。一度気持ちを落ち着けて、客観的に物事を見られるようになれば、「疑心暗鬼」から抜け出せるかもしれませんね。
類語や言い換え表現とは?
「疑心暗鬼」の類義語には何があるのでしょうか? 一般的によく使われる表現のほか、四字熟語、ことわざまで紹介します。
1:猜疑心
「猜疑心」とは「さいぎしん」と読みます。意味は「人を疑う気持ち」。用心深かったり、人をすぐに信じられなかったりする人に対して「猜疑心が強い」と言うこともあります。なお、「心」を抜いて、「猜疑」という言葉だけでも使えますよ。
2:杯中蛇影
「杯中蛇影(はいちゅうのだえい)」は「疑い出すと、何でもないことまで神経を悩ますことのたとえ」です。「杯中の蛇影」という言い方でも使われます。これも「疑心暗鬼」と同じく、中国の話がもとになっている言葉です。
昔、ある男が酒を飲んでいたところ、杯中に蛇の影があるのを見て、病気になったのだそう。しかし後日、蛇の影が弓の影だったことを知ると、その病気がたちまち治ったのだとか。この話がもとになって、「杯中蛇影」という言葉が生まれたのだそうです。
3:幽霊の正体見たり枯れ尾花
「幽霊の正体見たり枯れ尾花」は「ゆうれいのしょうたいみたりかれおばな」と読みます。「疑いの心や恐怖心があると、何でもないことまで恐ろしく思えてくること」という意味のことわざです。「尾花」とは、ススキの穂のこと。幽霊だと思ってビクビクしていたものの、よく見てみるとそれは枯れたススキの穂だったという意味からできた言葉です。
対義語とは?
「疑心暗鬼」の対義語には、「虚心坦懐」や「明鏡止水」などが挙げられます。それぞれの意味を詳しく解説していきましょう。
1:虚心坦懐
「虚心坦懐」の読み方は「きょしんたんかい」。意味は「心にわだかまりがなく、さっぱりしていること」。先入観を持っておらず、素直な心の状態をあらわす言葉です。「疑心暗鬼」は、先入観があるために、心が不安でいっぱいの状態ともいえますので、反対の意味を持つ言葉として使えるでしょう。
2:明鏡止水
「明鏡止水」も「疑心暗鬼」の対義語のひとつ。読み方は「めいきょうしすい」で、意味は、「邪念がなく、澄みきった心境のたとえ」。曇りのない鏡の意である「明鏡」、流れの止まっている穏やかな水の意である「止水」を組み合わせた四字熟語です。
英語表現とは?
続いて「疑心暗鬼」の英語表現を紹介します。「疑い」を意味する「doubt」や「suspicion」、「恐れ」を意味する「fear」などを使って、上手に表現しましょう。
1:Doubts beget doubts.
「doubt」は「疑い」、「beget」は「生む」という意味です。「Doubts beget doubts.」というフレーズで、「疑いは疑いを生む」。「疑う気持ちが強くなると、何でもないことまで疑ってしまうこと」である「疑心暗鬼を生ず」と同じ意味になりますね。
2:Suspicion begets idle fears.
「suspicion」は「疑い」、「fear」は「恐れ」です。「idle」は「根拠のない」「無駄な」などの意味を持つ英語。このフレーズを直訳すると、「疑いは無駄な(根拠のない)恐れを生む」になります。「疑心暗鬼」を英語で言いたい場合に、ぴったりの表現ですね。
最後に
「一度疑い始めると、何でもないことまで疑い、恐れてしまう」という意味の「疑心暗鬼」。慎重な人や、過去にネガティブな経験があった人は「疑心暗鬼」になりやすいようです。ただし必要以上に人のことを疑ってしまうと、自分自身が辛くなってしまいますよね。「疑心暗鬼」になったときは、「虚心坦懐」や「明鏡止水」という言葉を思い出してみると、少し気持ちが楽になるかもしれません。
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構成・文/結野雅美(京都メディアライン)