赤ちゃんとのコミュニケーションには「代弁」が効果的!「親子コミュニケーション」研究者が語る

赤ちゃんに話しかけることがママの自信にもつながります

近年、注目されている「親子コミュニケーション」。立正大学社会福祉学部子ども教育福祉学科准教授の岡本依子先生の研究では、妊娠期から子どもが成人になるまでの親子の日常を継続して調査しています。研究対象者のお子さんも、なんと昨年、成人を迎えたのだとか。20年以上の長きにわたる調査研究からは、まだ話すことができない「前言語期」の赤ちゃんとママとのコミュニケーションがどのように育まれていくかがわかってきました。

今回は、岡本依子先生に、胎児期から乳幼児期までの赤ちゃんとママの「親子コミュニケーション」について教えていただきました。

赤ちゃんに触れたことがないまま母親になって…

20年ほど前から、赤ちゃんに触ったことがないままママになるという人が増えてきました。親戚のお姉さんが赤ちゃんをあやしたり、おむつ替えをしたりする姿を見たりしていれば、自ずと「ああ、あの時のあんな感じね“」いうふうになるのですが、今の時代、きょうだいが少なく、近くに親戚がいないなどの環境から、間接学習の機会がないのです。

そのため、「赤ちゃんにどう接したらいいかわからない」「何をしても泣いているばかり。思わず一緒になって泣いてしまった」というケースも少なくはないようです。

なかには、「赤ちゃんが泣いてしまったらどうしよう」と、スーパーや公園に行くのも怖くて出来なくなってしまい、1日中、家の中に閉じこもってしまう・・・という深刻な育児不安を抱えてしまう人もいます。

ママなら自然にやっている。赤ちゃんの気持ちになって話しかける「代弁」

どうすればいい?赤ちゃんとのコミュニケーション

実は、多くのママたちが無意識のうちに行っていることがあります。それが「代弁」です。例えば、赤ちゃんのオムツを替えた後に「あ~さっぱりしたね」とか、授乳後の赤ちゃんに対して「おいしかったねぇ」と話しかけることがありませんか? 赤ちゃんのことを一生懸命、知りたいという気持ちがママの言葉=「代弁」となって表れるのです。

この「代弁」は妊娠中からすでに始まっています。代弁のようなやりとりのきっかけを作ってくれるのが胎動です。自分は静かにしているのによく動いたり、自分の意図とは別に動く新しい生命の存在。そこに気づくところから、赤ちゃんに対する意味付けとして始まるのです。

もちろん、育児の始まりは「わからない」の連続です。産後、「赤ちゃんがなんで泣いているかわからない」というのも当然のこと。けれど、ママたちは子どものことを知りたいから、一生懸命、赤ちゃんの意思を読み取ろうとします。もし、完全に赤ちゃんの意思がわかっていたら、言葉に出す必要もありません。 ママはむしろわからないから、赤ちゃんの表情や動き、様子をよく観察しながら「代弁」をすることで、赤ちゃんの気持ちを理解しようとするのです。

代弁=言葉がけを続けるうちに、赤ちゃんの気持ちが自然にわかるように

赤ちゃんが何をしてほしいか「わからない」と感じたときは、「おなかすいたかな?」「おいしかったね」というふうに、どんどん言葉がけをしていきましょう。言葉がけを続けるうち、赤ちゃんが嬉しそうにバタバタと手足を動かしたりすると「今日はご機嫌ね~」と、赤ちゃんの気持ちが自然にわかるようになってきます。また、赤ちゃんもいつも自分のことを見守ってくれる存在に安らぎを感じ、深い結びつきを築いていきます。ママの「代弁」を通じて赤ちゃんとの信頼関係がしっかりと育まれるのです。

「代弁」はママの情緒安定にもつながります

赤ちゃんが生まれてから最初の時期の「代弁」では、聞きなおしが多くあります。

「いま、この子はおなかいっぱいかな?」ということがわからないから、「おなかいっぱいだね」と言ったあとでもう1度、「おなかいっぱい?」と聞きなおす。つまり、ママが自分自身に対して「こういう状況だったことにしておこう」という確認と納得させるために言っているんですね。そうすることでママの情緒安定にもつながります。

ところが、面白いことに生後9か月を過ぎた時期になってくると、ママの「代弁」はじょじょに少なくなってきます。この頃になると赤ちゃんがママの話していることを徐々にに理解してくるからです。

さらに赤ちゃんが喋りはじめる数か月前になってくると、それまでは「オムツが気持ち悪いね」「さっぱりしたね」と、一人二役をしていたママたちの「代弁」が変わってきます。なんと、少しの沈黙の後、ママが「そうね」というふうに受け手の返事に変わってくるのです。これは、もう赤ちゃんの考えていることがわかってくるから。わざわざ「おいしいね」と言わなくても、もう子どもの声が聞こえているんですよね。

そして、1才を過ぎて赤ちゃんが喋りだすようになってくると、ママの代弁はピタッとなくなります。ここまできたらもうママも赤ちゃんの気持ちが十分に理解できているということです。

【3か月~1歳】言葉の発達過程とコミュニケーションの育みかた

では、言葉の発達にあわせた赤ちゃんとのおすすめの遊び方をご紹介しましょう。

<生後3か月~>赤ちゃんの声まね(発声返し)を

この時期は赤ちゃんが「あ~う~」などの喃語・クーイングというやわらかな声を出すようになってくる時期です。

「あ~う~」というこの声は、赤ちゃんが自分の声を出してそれを自分で聞いて楽しんで発しているものでもあります。つまり赤ちゃんにとって一番、心地よくて聞きたい声なんですね。赤ちゃんは音色も自分がいちばん好きな音に調整していきます。

そこで、ママも赤ちゃんの声真似(発声返し)をしてみましょう。赤ちゃんは自分の好きな声を、いつも見守ってくれるママが返してくれているのでとっても気持ちが良い状態になります。そして、ママが返した「あ~う~」に対して、再び赤ちゃんが「あ~う~」と続けてくるようになると、これはもうコミュニケーションの第一歩。赤ちゃんが言葉を獲得する基盤にもなるので、「あら、ご機嫌にひとりで喋っているわ」と聞き流さず、返事をしてあげてください。こうしたやりとりが愛着の形成となり、赤ちゃんも自分が愛されているという安心感にも繋がります。

<生後8か月~>やりとりごっこ遊びを

まだ言葉とまではいきませんが、「〇×▽?」というような無意味語を喋りかけてくるようになる時期。

イントネーションやリズムもママが話している言葉に似ています。こうしたお喋りを「ジャルゴン」といいます。赤ちゃんはそれまでの喃語・クーイングとは全く違って、明確な何かを一生懸命、伝達しようとしてきますので、「ジャルゴン」には独り言とは明確に違ったコミュニケーションの意思があります。

さらにこの時期というのは、理解語彙が急速に発達している段階なので、ママは赤ちゃんの意思をくみ取るようにして「そうだね、これはワンワンだね」「きれいなお花ねぇ」というふうに、やりとりごっこ遊びをして楽しんでみてください。その時、例えば絵本の犬を指さして「ワンワン」やお散歩中の花を指さし、「お花ね」と、動作を添えていくと、赤ちゃんはモノの存在と言葉の結びつきに気づきます。といって、「お花よ、お・は・な! 言ってごらんなさい」というふうに無理に言葉を覚えさせようとする必要はありません。この時期はやりとりごっこを存分に楽しむことが大切です。

<1才~>「そうなの?」と受け止める会話を

1才を過ぎた頃から「〇△□ね~」というふうに「ジャルゴン」に語尾がついてくるようになります。とても会話の形に近くなってくるんですね。ママが「へ~、そうなんだ!」と受け止めて会話を続けると、赤ちゃんはとっても嬉しそうに会話を続けます。

ただし、赤ちゃんの言葉が少ないからといって心配しなくても大丈夫。コミュニケーションは音声だけで伝えるものとは限りません。言葉が少なくてもママにぺったりくっついてきたり、どこかに触れていたり。表情で伝達してくる場合だってあります。「はい、どうぞ」とモノを受け渡しだけの繰り返しでも十分にコミュニケーションとなります。

言葉の発達は個人差も大きいので、初語の時期や語彙の数などにあまり捉われる必要はありません。

特に1才を過ぎてちょっとお喋りを始めたかなという時期から、赤ちゃんの言葉の増え方というのはとてもゆるやかです。親としてはどうしても焦りや不安を感じがちですが、日々の生活のなかで赤ちゃんと一緒に見たモノやコト、それらを言葉にしてたくさん注いでいれば大丈夫。

赤ちゃんは自ずと経験と言葉の関係性を吸収していきながら、語彙を獲得しています。そして、1才半~2才近くなった頃には豊富に蓄わえられた語彙を繋ぎ合わせ、すっかりお喋り上手になっていることでしょう。

次回は幼児の発達と知育についてお話します。

岡本依子(おかもとよりこ)先生

立正大学 社会福祉学部 子ども教育福祉学科 准教授

発達心理学を専門として研究するほか、親子のコミュニケーション発達や子育て支援・地域子育てなどをテーマに研究活動を続ける。大学では保育者養成に務めている。著書に『妊娠期から乳幼児期における親への移行 親子のやりとりを通して発達する親』共著に『エピソードで学ぶ 乳幼児の発達心理学』や『エピソードで学ぶ 赤ちゃんの発達と子育て いのちのリレーの心理学』(すべて新曜社)。

幼児の「体験する」「考える」を促す図鑑「ちっちゃなプレNEO」シリーズ(小学館)の監修を務めている。

構成/加藤みのり

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