おだてやご褒美で褒めるのはなぜNG?子どもが伸びるモンテッソーリ流「認める」声掛けとは

毎回、ママやパパのお悩みに寄り添った連載をお届けしている「モンテッソーリ教師あきえの子育てROOM」。今回のテーマは「子どものことを褒めないのが正解⁉」。褒めれば褒めるだけ子どもは伸びると思いがちですよね。今回もあきえ先生のお話に注目が集まります。

「褒め」「おだて」が続くとご褒美のために行動するようになる

おだてやご褒美がないと行動できない子になる

子どもが勉強をする、縄跳びの練習をするなど、「いいな」と思える行動を増やしたいと思うし、強化したいとも思うからこそ、ご褒美をあげたり、おだてたり、モチベーションを維持しようとしがちです。

しかし、それは子ども自身が自分で獲得したリターンではなく、外部から与えられているものなのです。

本来のリターンは、その行動が「できた!」という達成感ですから、このようなおだてやご褒美を続けていると、「ご褒美が欲しい」「褒められたい」などと、実際とは違うところにベクトルが向いてしまいます。そして、おだてやご褒美がないと行動できないというところに行きつきます。

子どもにとって最高の報酬は「褒める」ではなく「認める」声かけ

意外かもしれませんが、子どもを褒めるということは大して必要ではありません。子どもが何かを頑張った時は、「褒める」のではなく、「認める」だけで十分! 褒めたり、おだてたり、ご褒美をあげて子どもの気持ちを高めなくてもいいのです。

子どもが何かを頑張った時、最高の報酬は、その頑張ったことが「出来た」「完成した」「わかった」などの達成感やうれしさ。そこからくる自己効力感や有能感、自己肯定感など、心の中で感じる感情やその経験こそが一番の報酬なのです。

では、具体的なシーンごとに見ていきましょう。

シーン①子どもが絵や文字を見せてくれた時

子ども「ママ、おうちの絵を描いたんだよ」

NG「あなたは本当に絵が上手ね! きっとクラスの中で一番よ」

OK「おうちの絵を描いたのね。線からはみ出さないように色をぬったんだね」

子ども「ママ、書けたよ」

NG「もうひらがなが書けるの?頭いいねー!」

OK「なんて書いたか読んでみるね。『まま』って字を書いたんだね」

忙しい時やパッと思いつく言葉は「すごいね」などという抽象的に褒める言葉です。今となっては大反省ですが、私も以前は「すごい」をよく使っていました。万能なので、つい使ってしまうんですよね。

意識したいのは、子どもがやった行動を具現化するということ。もし、咄嗟に思いつかない場合は「絵を描いたのね」と、子どもが言ったことや実際にやった行動をそのまま言葉にするだけでOK! 初めは物足りないと感じることもあるかもしれませんが、それは今まで言っていたから。「すごい」「えらい」「天才」などの言葉を追加で言わなくても大丈夫です。

シーン②頑張っていたことができるようになった時

子ども「自転車に乗れたよ」

NG「あなた、天才! ご褒美は何が欲しい?」

OK「自転車乗っているところ見ていたよ。乗れるようになってとても嬉しいね。転んでもあきらめなかったから乗れたんだね」

子ども (ピアノなどの発表会を終えた時)

NG「あなたが一番上手だったわよ! すごいすごい!」

OK「おうちで練習がんばってたもんね。無事に最後まで弾くことができて、とても嬉しいね」

自転車に乗れるようになった、逆上がりができた、習い事の発表会を無事に終えたなど、頑張っていたことができるようになった時は、いつも以上に褒めたいと思いがちですよね。しかし、そこで大事なのは「共感」と「プロセスを認める」ことです。子どもがどんなことを頑張っていたのか、それを「ちゃんと見ていたよ」という気持ちを伝えてあげるようにしましょう。

シーン③子どもが「すごい?」「えらい?」などと聞いてきた時

子ども (牛乳を全部飲んで)「すごいでしょ?」

NG「すごいすごい! これで大きくなれるね」

OK「そうね。残さずに飲むことができたんだね」

子どもが「すごい?」「えらい?」などと聞いて来ることも良くありますよね。そんな時は、受け入れてあげて大丈夫です。

その上で、出来たことを認める声かけをしてあげましょう。

大切なのは自分で選択する「自由」を作ってあげること

子どもはなんのため、誰のためにこの貴重な時間を生きているのかというと、自分を作るためです。自分を自立の方向に向けて日々を生きて、この貴重な時間を使っています。だから、褒められるために行動をするのではなく、自分を育むために行動をし、その行動の本質を理解してもらいたいですよね。

そのために重要なのは、ずばり「自由」。なんでも大人に決められていて、禁止事項が多くてあれもだめ・これもだめではなく、子どもがいかに自分のやりたいことを、自分で選択する余白があるかが大事です。もちろん、時間に制限はありますが、その中でも子ども自身がやりたいことをやり、その行動に対して私たち大人は「認める」「共感する」というかかわりをすることで、子どもは正しい報酬を理解するのです。

褒めてはいけないわけではありませんが、考え方を「褒める」→「認める」に変えるだけで、子どもへの声かけや大人の行動も変わって来ると思います。

「褒める」を「認める」「共感する」に切り替えてみよう!

「子どもは褒めなくてもいい」は意外とも感じましたが、あきえ先生のお話を聞いてみると納得しますよね。子ども自身が達成感や自己肯定感など、出来たことに対してポジティブな感情や経験を得られるよう、サポートしていくようにしましょう。

あきえ先生の前回の記事はこちら

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記事監修

国際モンテッソーリ教師(AMI)
モンテッソーリ教師あきえ

幼い頃から夢見た保育職に期待が溢れる思いとは裏腹に、現実は「大人主導」の環境で、行事に追われる日々。そのような教育現場に「もっと一人ひとりを尊重し、『個』を大切にする教育が必要なのではないか」とショックと疑問を感じる。その後、自身の出産を機に「日本の教育は本当にこのままでよいのか」というさらなる強い疑問を感じ、退職してモンテッソーリ教育を学び、モンテッソーリ教師となる。「子育てのためにモンテッソーリ教育を学べるオンラインスクール Montessori Parents」創設、オンラインコミュニティ”Park”主宰。2021年1月に初著書「モンテッソーリ教育が教えてくれた『信じる』子育て」(すばる舎)、2022年3月に「モンテッソーリ流 声かけ変換ワークブック」(宝島社)を出版。

モンテッソーリ教師あきえHP

あきえ先生主宰オンラインスクールMontessori Parents

 

取材/本間綾

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