「失敗=悪」と認識してほしくはない
こぼす、落とす、汚すなど、子どもが何か失敗をすると、「なんでちゃんと見てないの!」と叱ってしまうことがありますよね。しかし、これらは失敗ではなく、子どもが成功するためのひとつの過程だと捉えたいものです。
乳幼児期や児童期は、失敗してなんぼ。失敗することによって子どもは学び、できるようになっていきます。私たち大人にとってはなんてことないようなことでも、子どもは今まさにできるようになっている過程なのです。
子どもの失敗に直面した時、意識したい3つのポイント
①「責める・怒る・叱る」をしない
子どもが成功する過程で失敗は必ず出てくるものです。それに対して「なんでちゃんとやらないの!」「何度も言ってるよね?」。言葉にしなくても「はぁ~」と深いため息をつくなど、子どもの失敗に対して、このような責める・怒る・叱る行動をされると、子どもは「いけないことをした」と認識します。
「なんで?」「どうして?」の「Why?」を子どもに問いかけても、その答えを子どもは持っていません。毎回完璧ではなくても、子どもが失敗をどう捉え、どう乗り越えていくのか。それは、声かけやかかわりが影響を与え、子どもの中で形作られていくものということを、強く意識しておきたいですね。
②事実ベースで捉えて声に出していく
責める・怒る・叱ることをグッと飲み込んだら、起きたことを事実ベースで捉えます。「落ちたんだね」「こぼれたんだね」「これがこうなったんだね」、ただそれだけでいいのです。その状況を見て声をかけましょう。
③このあとどうしたらいいか、リカバリー法を教える
こぼしたのであれば拭く、接着剤などで直せるのであれば直すなど、状況に合わせて、どうすればリカバリーできるかを子どもに伝えていきましょう。
●直すことができる場合
「こぼして汚れてしまったね。濡れた布巾で拭けばきれいになるから大丈夫だよ」
子ども自身でリカバリーができるように、手の届くところに布巾を置く、ほうきなどをいつでも使えるようにするなどの工夫をしてもいいですね。
●直すことができない場合
「落として割れてしまったね。これはもう直すことができないから、残念だけど捨てるしかないんだ」
大切にしていたものが壊れてしまったことにショックを受けると思います。しかし「落とすと割れる」という当たり前のことが子どもにはわかっていない場合もあります。なんとか元に戻したいと自分や子どもが思うなら、その方法を一緒に考えてみましょう。
●わざと落とした・こぼしたなどの場合
「ジュースがこぼれてしまったね。お母さん、これを飲んで欲しかったから悲しいな。布巾で拭いてから、新しいものを入れてくるね」
何かを頑張りたくて、その過程で失敗したなら仕方ないにしても、わざとやったのがわかる時もありますよね。そんな時は、「わざとだよね」などと責めるようなことはせずに、「それをされてお母さんは悲しい」と、自分の感情を伝えるようにしましょう。
リカバリー方法を教えながら、子どもの感情を代弁したり、自分の感情を伝えることも大切です。
ここからは、ありがちなシチュエーションでの具体的な声のかけ方をご紹介します。
子どもが失敗した時のリカバリー声かけ例
NG「なんでちゃんと持たないの」
OK「割れちゃったね。一緒に拾って直してみよう」
NG「うわぁ!ごはんがたくさん落ちてるんだけど。なんで?」
OK「ごはんが落ちているから、拾いましょう」
NG「あ~あ。ちゃんと見てないから服が汚れたじゃない!」
OK「服が汚れているから、新しい服に着替えようね」
NG「せっかく作ったのに、食べられなくなったでしょ!」
OK「こぼれちゃったのね。新しいおかずを入れようね」
NG「こぼさないでっていつも言ってるよ!」
OK「こぼしたのね、大丈夫? 布巾を持ってきて拭いてくれる?」
上記はあくまで一例ですが、子どもの年齢や性格によってアレンジしながら伝えていくようにしましょう。「やって」「拭いて」「拾って」だけではわからないこともあるので、具体的にどのようにすればいいかを意識していきたいですね。
「失敗」を「経験」と捉えてリカバリー法を伝える
あきえ先生の具体的な声かけ例は、すぐに実践できそうですね。目の前で失敗をされる、毎日のように同じような失敗があるなど、ついイラッとしてしまいがちですが、それが成功に向けての過程と考えれば、違った見方ができるかもしれません。
子どもの小さな成長を見逃さないように、一緒に過ごしていきたいですね。
記事監修

モンテッソーリ教師あきえ
幼い頃から夢見た保育職に期待が溢れる思いとは裏腹に、現実は「大人主導」の環境で、行事に追われる日々。そのような教育現場に「もっと一人ひとりを尊重し、『個』を大切にする教育が必要なのではないか」とショックと疑問を感じる。その後、自身の出産を機に「日本の教育は本当にこのままでよいのか」というさらなる強い疑問を感じ、退職してモンテッソーリ教育を学び、モンテッソーリ教師となる。「子育てのためにモンテッソーリ教育を学べるオンラインスクール Montessori Parents」創設、オンラインコミュニティ”Park”主宰。2021年1月に初著書「モンテッソーリ教育が教えてくれた『信じる』子育て」(すばる舎)、2022年3月に「モンテッソーリ流 声かけ変換ワークブック」(宝島社)を出版。
あきえ先生主宰オンラインスクール「Montessori Parents」
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取材/本間綾