事実と逆のことを言えるほど、認知発達が進んでいる
2歳くらいまでの子どもは、あったことをそのまま話してくれると思うのですが、3歳後半くらいから、何が本当で、何が本当でないかの区別がついてくるようになり、嘘と言われるような発言をするようになってきます。
例えば、手を洗っていないけど「洗った」、本当は自分が持って行ったけど「自分ではない」と言うなど、さまざまな状況で事実とは違う発言をする場合があります。このようにお子さんが嘘をつくと、その嘘が大した嘘でなくても、「このまま嘘をつく子になってしまったらどうしよう」「嘘をつくことはいけないと教えたほうが良いのでは」と不安になることがあるかもしれません。しかし、実は今すぐに直そうと必死にならなくても大丈夫なのです。
これは、発達段階として嘘をつけるようになったんだと捉えましょう。真実が何で、その逆が何かということを理解していないと、嘘はつけないので、そこまで認知発達が進んでいるということになります。
また、年齢が低いうちは重大な嘘ではなく、危険性もなく、誰も傷つかないような、いわゆる心配するような嘘ではありませんよね。嘘を言っている子どもの心理として、「本当のことを言ったら怒られる」「なんとなく自分のやったことを隠したい」などが多いでしょう。
その点を踏まえて、子どもの嘘に遭遇した時に気をつけて欲しいポイントを紹介していきます。
子どもが嘘をついた時、気をつけたい5つのポイント
① 子どもの発言を頭から否定しない
例えば「手を洗っていないけど洗ったと言っている」場合について。
子どもはそう言っているけど、洗っていない姿を親が見ていたり、水が流れる音が確実に聞こえていないなど、洗っていないと100%言い切れる時は「ママは洗ってないところを見ていたよ」と真実を伝えて大丈夫です。
しかし、確証を持てない場合は、このような関わり方をするのがおすすめです。
NG
「洗ったというのは嘘だよね。洗ってきて!」
OK
「洗ったんだね。じゃあ、手のにおいをかいでみて。石けんのにおいはするかな?」
信じられない気持ちはあるけど、もしかしたら自分が間違っている可能性もあります。「あなたは嘘をついている」と疑われることが続くと、自分は信じてもらえないんだという認識になり、親子関係という人間関係を築く上で影響が出ることも……。「ママに本当のことを言ってもどうせ信じてもらえない」という気持ちが根底にできてしまうと、「ママに本当のことを言いたい」という気持ちを半減させる原因にもなります。
なので、自分がちゃんと見ていなかった時は、子どもがついている嘘を受け入れるというより、否定しないようにすることがポイントです。
②真実を突き止める姿勢は表す
先ほどの声かけの中にもあったように「手のにおいをかいでみて。石けんのにおいはするかな?」と聞いた時、「しない」と言った場合は「じゃあもう一度洗おうね」と言えばOK。
しかし、「する」と言った場合で、絶対に洗って欲しい場合について。
NG
「まだ汚いから洗ってきて」
OK
「〇〇ちゃんは洗ったと思うけど、ママには石けんのにおいがあまりしないから、もう一度一緒に洗いに行こうね」
この時も子どものことは否定せずとも、事実として手を洗わなくてはいけないということを認識させていきたいですね。
【別のケース】友達のおもちゃを持ち帰ってきてしまったとき
あとは、お友達のおもちゃなどを持ち帰って来て「なぜかバッグに入っていた」と言った場合。
NG
「入っていたんじゃなくて、あなたが持って来たんでしょう?」
OK
「わかったよ。バッグに入っていたんだね。そしたら、明日保育園に持って行って返そうね。これはお友達のものだから、持ってきたらいけないものよね」
このように、子どもの言い分は認めながらも、善悪の線引きは示す姿勢は見せていきましょう。
子どもは、自分が信じてもらえているかどうかを敏感に感じ取ります。自分が信じてもらえているという気持ちは、子どもを自立に向かわせますし、心の土台にパワーを与えます。
しかし、信じてもらえていると感じられない子は、パワーや自信を失います。
③ママやパパからのアイメッセージを伝える
アイメッセージというのは、自分を主語にして言いたいことを伝える方法です。
例えば、大して歯を磨いていないけど、きちんと磨いたという時。
NG
「歯磨きちゃんとしてないよね?もう一度磨きなさい」
OK
「磨いたんだね。でも、ママはもうちょっとよく磨いて欲しいと思うよ」
歯磨きに関しては、きちんと磨かなければいけない理由や必要性を併せて話してあげるのもいいと思います。
●子どもが低年齢の場合
「虫歯になったら歯が痛くなるから、きちんと磨いたほうがいいんだよ」
●小学生以降
「(折にふれて)健康な歯があるから、こんなおいしいものを食べることができるんだよね。もし、歯がなくなってしまったら、食べられるものが限られてしまうね」
こんな風に、年齢によって伝え方も変わって来るかと思いますが、アイメッセージと共に、なぜそれをしなくてはいけないかについても、明らかにしてあげたいですね。
④次回どうすればいいかを伝えてあげる
例えば、お菓子を食べたのに、食べていないと言った時。
NG
「それは嘘!本当は食べたってことママは知ってるからね!」
OK
「食べてないんだね。もし、食べていたらごはんの量が変わったりするから知りたかっただけなんだ。だから、食べた時は『食べた』と教えてくれていいからね」
注意するために聞いているのではなく、本当のことを知りたいと思っていることを伝えて、次回から嘘をつかなくてもいいように手助けしてあげましょう。
⑤本当のことを言ってくれたら感謝する
どんな場面でも、話しているうちに「やっぱり」と本当のことを打ち明けてくれることがあります。
NG
「やっぱり嘘ついていたんじゃない!」
OK
「そうだったんだ。教えてくれてありがとう」
嘘をついたことを指摘するのではなく、素直に話してくれたことに感謝して、認める関わりをするようにしましょう。そうすることで、これから先、もし同じように嘘をついてしまっても、本当のことを話しやすくなると思います。
嘘は受け入れないけど、否定はしない姿勢で
子どもが嘘をつくと、正直、ちょっとショックに感じることもありますよね。しかし、小さな嘘の場合、すぐに変えよう!今、本当のことを言わせよう!ということを最優先させると、嘘をつくことで責められたと感じ、ますます本音や真実を隠すようになってしまいます。
危険性があり、誰かを傷つけるような嘘の場合は、じっくり話をする必要がありますが、年齢が低い場合は、面倒なことを回避するためだったり、ポロっと出てしまう嘘がほとんどだと思います。ですから、上でお伝えした5つのポイントを意識しながらお子さんと関わっていけたらいいですね。
記事監修
モンテッソーリ教師あきえ
幼い頃から夢見た保育職に期待が溢れる思いとは裏腹に、現実は「大人主導」の環境で、行事に追われる日々。そのような教育現場に「もっと一人ひとりを尊重し、『個』を大切にする教育が必要なのではないか」とショックと疑問を感じる。その後、自身の出産を機に「日本の教育は本当にこのままでよいのか」というさらなる強い疑問を感じ、退職してモンテッソーリ教育を学び、モンテッソーリ教師となる。「子育てのためにモンテッソーリ教育を学べるオンラインスクール Montessori Parents」創設、オンラインコミュニティ”Park”主宰。2021年1月に初著書「モンテッソーリ教育が教えてくれた『信じる』子育て」(すばる舎)、2022年3月に「モンテッソーリ流 声かけ変換ワークブック」(宝島社)を出版。
あきえ先生主宰オンラインスクール「Montessori Parents」
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取材/本間綾