2歳を過ぎると「誰かとかかわりたい!」という気持ちが芽生える
モンテッソーリ教育の中では、0~6歳の子どもには、さまざまな敏感期が存在していて、この時期は「特定の能力を獲得するために、ある物事に対して強いエネルギーが出る限られた時期である」とされています。
敏感期の種類はひとつだけではなく、「ママ以外の人が抱っこをすると泣く」などの行動に見られる“秩序の敏感期”をはじめ、さまざまな種類が存在しています。
2歳半を過ぎたころから多く見られるのは“社会性の敏感期”です。
そのころの子どもは、自分一人でできることも「ママとやる!」「パパも手伝って」など、「一緒に!」を求めてくることがあると思います。それまでは一人でできていたのに…、今までは一人で遊ベていたのに…、後退したのかな?と不安に感じることもありますよね。
しかし、社会性の敏感期というのは、人に興味を持ったり、その環境の一員になろうとしたり、関わることに興味を示すような行動が多く見られます。
ですから、一人で遊びたがらないからといって、何かが満たされていないというわけではなく、新しい発達段階に入ったと考えましょう。「今は人と関わりたい欲求を持っている時期なんだ」と理解することが大切です。
しかし、ママやパパは家事や仕事もあり、一日中子どもと一緒に遊んでいられないですよね。そこで、子どもと遊ぶ時のポイントを5つお話します。
ポイント① オンオフをはっきりさせて付き合う
家事など、やらなけらばならないことがあるので、ずっと遊びに付き合うことはできませんよね。なので、その事実を正直に子どもに話して大丈夫です。
NG
子ども「ママ、一緒に遊ぼう」
大人「忙しいから遊べない」
OK
子ども「ママ、一緒に遊ぼう」
大人「ママも一緒に遊びたいんだけど、食器を洗わなくちゃいけないから、それが終わったら、一緒に遊ぼうね」
一日中遊んであげないでいると、子どもの欲求はいつまでも満たされないので、さらに気を引くような行動を取ったりします。それでも遊ばずにいると、諦めてしまい、誘うことをしなくなってきます。
「子どもに言ってもわからない」と思わずに、一緒に遊べない理由を真実として素直に子どもに伝えてみましょう。
ポイント② 最初に「ここまで」と予告して遊ぶ
子どもと遊ぶ時間になった時、遊び始める前に「ここまでは遊べるよ」と予告しておきます。そして、可能な限り大人も遊びに気持ちを向け、一緒に楽しむようにしましょう。
NG
「少しなら遊べるよ」
OK
「長い針が12になったら、ママはお料理をしに行くね。それまで遊ぼう!」
「少しなら」「ちょっとだけ」ではなく、子どもにわかるように具体的に「ここまでなら遊べる」ということを伝えてあげるのが効果的です。まだ数字がわからない年齢の場合は「この遊びをしたら」「このお歌を歌ったら」などと、子どもがわかる区切りを伝えるのがおすすめです。
ポイント③「また遊べるよ」を知らせてあげる
遊びを切り上げる時、いくら予告をしていたとしても「まだ遊びたい」と、子どもが怒ったり、ぐずったりすることがありますよね。そういう時は「またあとで遊ぶことができる」ということを示してあげましょう。
NG
「もう時間だから遊べない。言ったよね」
OK
「ごめんね。今はお料理をしなくちゃいけないんだ。それが終わったらまた遊べるから、次に何をするか決めていてね」
子どもに泣かれてしまうと、愛情が不足してしまうのではないか?などと不安になることがありますよね。それでも、オンオフははっきりと示したほうがいいので、次の行動を実行に移して大丈夫です。
しかし、必ずしも事前に約束した時間で遊びを切り上げなくてはいけばいわけではありません。まだ遊べるという時は、遊ぶ時間を延長するなど、臨機応変に対応してくださいね。
ポイント④ 子どもが求めていない時は見守ってOK!
子どもに「一緒にやろう」と手を引かれたり、呼ばれたりした場合は、ポイント③までのように対応してあげればよいですが、求めていない時もありますよね。集中して一人で遊んでいて、ママパパを求めていないのであれば、無理に入って行かずに、そのまま見守っていて大丈夫です。
中には、初めて遊ぶもので遊び方がわからないものや、大人がモデルになることで、使い方の幅が広がるものもあると思います。その場合は部分的に関わってあげてください。
どんなに小さな子どもでも、集中の糸をピーンと張っている時があります。ママパパは良かれと思って助けたとしても、子どもからすると、自分で最後まで頑張りたいことかもしれません。そこで大人が手を出すと、せっかく集中していたのに、プツンと集中の糸が切れてしまうのです。助けたほうがいいかを見極めるためにも、見守ってあげることが大切です。
ポイント⑤ 心と目を離さずに子どもを見守る
子どもは頑張っていたことができた時、必ずと言っていいほど大好きなママやパパの顔を見ます。その瞬間に目が合うということがとても大事なんです。「ぼくが集中している時もずっと見ててくれていたんだ」という事実は、子どももきちんと感じます。
子どもが集中して一人で遊んでいる時でも、心と目を離さずに見守っていることで、「できた!」の瞬間に目が合って「自分でできたね」と、時差なく共感してあげることができます。「できた!」という声で気づいて、数秒の時差ののちに「できたの?すごいね」と言っても、子どもの喜びの頂点は過ぎています。
その瞬間に目が合い、共感することで、子どもは安心感を得て、物理的に距離がある時にも安心して過ごすことができるようになるのです。
【番外編】子どもとテレビとの付き合い方
人生の初期、受動的な時間が長いことはもったいない
子どもと一緒に遊べない時に、テレビやタブレットを使う方も多いと思います。
さまざまな意見があり、ご家庭ごとに事情は違いますが、年齢が低いうちは特に、積極的に視聴させることは避けたほうがいい、というのが率直な意見です。年齢が低ければ低いほど、発達上、動いてなんぼ。感覚器官を使って、どれだけ能動的に動くことができるのかが大事になってきます。テレビや動画の視聴は、情報が一方的にやってくる受け身の状態。人生の初期であるこの時期に、受動的な時間が長いことはもったいないことと言えます。
こんなお話をするとドキッとされるかもしれませんが、子どもの成長には何が大事なのか、メリットとデメリットを理解した上で何をチョイスするのか、大人が意識的になることが必要です。「じゃあ視聴は0時間に!」と決めたとしても、それが原因でイライラしてしまっては、総合的に考えて本末転倒。
視聴中にコミュニケーションを入れて能動的な時間を作る
もし、テレビやタブレットを見せる場合は、見せっぱなしではなく、「今、くまさんが出てきたね」などと声をかけたり、一緒に踊ったり、能動的なコミュニケーションの時間を作っていきたいですね。
一番大切なのは、子どもにどういう環境を用意したいのか、どういうふうに子育てをしたいのかということです。自分自身の中でのバランスを考えながら、その時々に合わせて考えていきたいですね。
一緒に遊べない時があってもOK!正直に子どもに話そう
常に一緒に遊ばなくてはいけないわけではなく、遊べない理由を正直に子どもに話すだけで、少しずつママやパパの事情を理解することができそうですね。テレビとの付き合い方についても、あきえ先生の意見を参考に、「我が家の場合」を考えていきたいところです。
記事監修

モンテッソーリ教師あきえ
幼い頃から夢見た保育職に期待が溢れる思いとは裏腹に、現実は「大人主導」の環境で、行事に追われる日々。そのような教育現場に「もっと一人ひとりを尊重し、『個』を大切にする教育が必要なのではないか」とショックと疑問を感じる。その後、自身の出産を機に「日本の教育は本当にこのままでよいのか」というさらなる強い疑問を感じ、退職してモンテッソーリ教育を学び、モンテッソーリ教師となる。「子育てのためにモンテッソーリ教育を学べるオンラインスクール Montessori Parents」創設、オンラインコミュニティ”Park”主宰。2021年1月に初著書「モンテッソーリ教育が教えてくれた『信じる』子育て」(すばる舎)、2022年3月に「モンテッソーリ流 声かけ変換ワークブック」(宝島社)を出版。
あきえ先生主宰オンラインスクール「Montessori Parents」
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取材/本間綾