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子どもの癇癪に困った経験はありませんか?
子どもの癇癪が始まると、大人は「また始まった~」と、嫌な気持ちになることもあります。それが自宅ならば、好きなだけ泣いてもいいよ、と思ってあげられるけど、出先のスーパーや公園、時に駐車場のような危険な場所で始まることもありますよね。
そんな時、どのようなかかわり方をすればよいのか、3つの鍵をお話します。
① 「受け止めて代弁する」と子どもの心は安定する
受け止めたい気持ちはあるけど、実際は難しいということもありますよね。そこで重要なのは「順番」。
どの順番で受け止めるかで、子どもに届くか、子どもがわかってもらえたと思えるかが違ってきてしまいます。つまり、一番最初に受け止め、代弁するということが鍵となります。
NG「そんなこと言わないで!」などの声をかけた後に、「やりたかったんだよね」と言う
↓
OK 泣き始めた一番最初に「それが嫌だったのね」「こうしてほしかったんだよね」と言う
OK例のように、子どもが思っていること、嫌だと主張していることをそのままオウム返しするかのように代弁してあげます。そうすることで、子どもは「わかってもらえた」ということを感じることができます。
癇癪を起している根本として、「分かって欲しい」「相手に伝えたい」と主張しているんですよね。なので、まず最初に「あなたの言ってることわかるよ」「そういうことがいやなのね」と受け止めて、代弁してあげる。それで子どもはすぐに泣き止むことはないかもしれないけれど、子どもの心の根底に「わかってもらえた」「いつも自分の気持ちを受け止めてくれる」「話を聞いてくれる」という感情がしっかりと根付いて来ます。それは親子関係という人間関係を構築する上でもプラスの影響になっています。
② 制限を示して「今日だけは特別」はしない
①の「受け止めて代弁すること」は大切ですが、それだけでは次の行動に繋がっていきませんよね。そこで次は、制限を示してあげましょう。
子どもが癇癪を起す時は、「やりたいけどできなかった」「欲しいんだけど手に入らない」など、自分がやりたいこととと制限がぶち当たって、一生懸命「もっとやりたい」と主張している場合が多いと思うんですよね。
例えば、もう帰る時間だけど、まだ遊びたいということはよくありますよね。そういう時に「もう帰る時間だよ」「これが最後だったよね」と、再度制限を示し直します。子どもはやりたいことができないという壁にぶちあたって、一生懸命葛藤しています。そんな時に、大人は早く泣き止んで欲しいという思いから「特別だよ」「今日はいいよ」などと、壁を開けて子どもが通れるようにしてしまうことがあります。
子どもがルールにぶち当たって、「やりたいことがあってもできないこともあるんだ」と学ぼうとしているのに、それを「いいよ」としてしまうことで、せっかく触れていた壁がなくなって、「泣けばその壁はなくなるんだ」ということを学んでしまいます。すると、次回同じような場面になったときに、泣くということが子どもにとってすごく有効な手段になっているので、もっともっと強い泣きを見せて一生懸命嫌な気持ちを通そうと表現してきます。
子どもが規則やルールを通して、善悪を学んでいる最中なので、その力を育むためにも制限を示し直すということは必要になります。
NG 早く泣き止んで欲しいという思いから「特別だよ」「今日はいいよ」
↓
OK 「もう帰る時間だよ」「これが最後だったよね」と、再度制限を示し直す
時に故意ではなくても、子どものやりたい気持ちや欲求を邪魔してしまうということもありますよね。例えば、子どもが自分で開けたいと思っていたドアを大人が開けてしまう、ボタンを押してしまう、カギを閉めてしまうということもあります。大人は無意識に、いつものルーティーンとして行動しているだけなので、誰も悪くないですよね。でも、それを「自分がやりたかったのに」と怒った場合、そういう時は「開けたかったんだね。先にやっちゃってごめんなさい。やってもいいよ」と、制限を示すことより、子どもの主張に耳を傾けるなど、柔軟に対応してあげるといいと思います。
③「言葉で伝えて」はNG。どう言えば良いか表現方法を伝える
今は「泣く」という方法で自分の感情を爆発させながら主張している子ども。しかし、泣くだけでは伝わらないですよね。なので、どうしたらいいか、言葉を使って具体的な表現を子どもが獲得する手助けをしてあげたいですね。
そのためには、日ごろの積み重ねがとても大切です。言語はどれだけインプットして、それをアウトプットできるかなので、子どもがさまざまな語彙や状況に合わせた言い方を自分の中に吸収できるように、その場面に応じた言い方を教えてあげたいものです。
例えば、先ほどの例で、鍵を閉めたかったのに大人が閉めてしまって怒っているとします。
NG 「泣かないで教えて」「言葉で教えて」
↓
OK 「そういう時は、ぼくが開けるって教えて」「鍵ちょうだいって言ってくれればわかるよ」
「言葉で教えて」と伝えても、まだまだインプット量が少ない子どもには分かりづらいこともあります。なので、どうやって言えばいいのかを具体的に伝えるというのが鍵になります。
「帰りたくない」「もっとお菓子が欲しい」と怒っていることがあるとします。その場合は、「もっと遊びたいと教えて」「もう一個食べたいと伝えてね」など、どうやって言葉で表現したらいいかという具体的な言い方をぜひ伝えてあげてください。「何回も言っているのに!」と感じるかもしれませんが、何度も聞いて、初めて自分の中に定着していくものなので、その状況に合わせた言い方を何度も伝えて欲しいと思います。
【番外編】危険な場所で癇癪を起した場合
家の中や安全な場所であれば、できるだけ泣く時間を保障してあげたいところです。子どもは、泣いている時に「やりたいけどできない」という葛藤を一生懸命しています。泣きながらその気持ちになんとか折り合いをつけていくので、時間的にも場所的にも許すのであればぜひなく時間を保障してあげてください。
しかし、場所や時間が許されないという時もありますよね。特に、道の真ん中や駐車場など、危険な場所で泣くこともあります。そういう場合は「ここでは泣いていられないから抱っこするよ」と、一言断りを入れてから抱っこして移動するとという対応をしてあげたいですね。
こちらもイライラして、「もういつまで泣いてるの」と、怒りながら持ち上げて移動させると、余計にヒートアップしてしまうこともあるので、そこは忍耐力がいると思いますが、急に抱き上げるのではなく、一言断りを入れるということを意識してみてください。
3つの鍵を意識しながら癇癪と向き合いましょう
子どもに「ギャー」と泣かれると、こちらもエネルギーを取られて疲れてしまいますよね。特に、外出先での人目が気になったり、道路の真ん中で危険が伴ったりするとなおさらです。しかし、その「泣き」には何か理由があって、子どもなりに葛藤していると思い、お話させていただいたことを意識してもらえたらと思います。
今回の「癇癪」については、こちらのYouTubeでもご覧になれます。
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記事監修
モンテッソーリ教師あきえ
幼い頃から夢見た保育職に期待が溢れる思いとは裏腹に、現実は「大人主導」の環境で、行事に追われる日々。そのような教育現場に「もっと一人ひとりを尊重し、『個』を大切にする教育が必要なのではないか」とショックと疑問を感じる。その後、自身の出産を機に「日本の教育は本当にこのままでよいのか」というさらなる強い疑問を感じ、退職してモンテッソーリ教育を学び、モンテッソーリ教師となる。「子育てのためにモンテッソーリ教育を学べるオンラインスクール Montessori Parents」創設、オンラインコミュニティ”Park”主宰。2021年1月に初著書「モンテッソーリ教育が教えてくれた『信じる』子育て」(すばる舎)、2022年3月に「モンテッソーリ流 声かけ変換ワークブック」(宝島社)を出版。
取材/本間綾