子どもはみんなアーティスト! 創作意欲をくすぐる絵本7冊を絵本専門士がセレクト

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大人には考えつかないような発想力で、アートを表現する子どもたち。絵の具をばっしゃん!手足まで使ってカラフルに!と思えば、小さく描くのが好きな子や、何日もかけてゆっくり描く子も。いろいろなアートに触れて、子どもの発想力や自己肯定感を上げるきっかけとなる絵本をご紹介します。

思いのままに絵を描いてみよう!

『こんにちは!わたしのえ』

作:はたこうしろう
出版社:ほるぷ出版
< 3・4歳から>

こんなに思いっきり、全身を使って、絵を描いたことありますか? 筆を振り回すように色を広げ、もう手や足にも絵の具を塗って、はみ出しそうな大きな絵を描く。そんな子どもの様子を描いた絵本です。「ぽたぽた」「ぺったん」「ずういいいい」など擬音語も臨場感たっぷり。子どもは、大人が絶対に描けないような溢れる表現力を持っているのに、大人はそれをすっかり忘れてつい「紙からはみ出しているよ」なんて声をかけがち。この本の中で、見える範囲をみんな色で埋め尽くした子のなんとも満足げな顔は、絵を描く楽しみを思い出させてくれます。

夢中になった子はどんどん伸びる!

『まほうのえのぐ』

作:林 明子
出版社:福音館書店
<3歳から>

おにいちゃんにやっとのことで憧れの絵の具を貸してもらったよしみが、色を楽しみながら絵を描いていくお話です。最初は全部まぜあわせてどろんこ色に。そしてふと気づくと、リスやヘビが絵の具をどんどん持っていってしまいます。追いかけていくと、動物たちもその絵の具で夢中になって絵を描いていて…! 最初は色の掛け合わせが楽しくて、よしみもみんなと一緒に色を重ねていくうちに、楽しくなってどんどん上達していくのです。よしみの絵を馬鹿にしていたおにいちゃんが、最後に驚いて腰をぬかすところなんて笑ってしまいます。

本当に自由な絵は制限がないこと

『まっくろ』

作:高崎卓馬 絵:黒井健
出版社:講談社
<4歳から>


心に浮かんだことを描く、というお題をもらって、何日も画用紙を真っ黒に塗り続ける男の子。まわりの大人は不安顔。でも真っ黒な絵を最後につなぎ合わせると実は巨大なクジラだった…という印象深い物語です。実は約20年前に「子どもから、想像力を奪わないでください」という公共広告機構のCMから生まれたお話で、作者の高崎卓馬さんが、自分の絵に先生からダメ出しをされた経験から思い起こしたのだそう。大人の知識や偏見で、子どもの表現を決めつけてはいけないと考えさせられます。やわらかい黒を表現した黒井健さんの絵がとてもあたたかく、どんな絵でもいいんだよ、と子どもに伝えたい作品です。

ぱったん!と重ねた模様を楽しむ

『ぱったんして』

 作:松田奈那子
出版社:KADOKAWA
<2・3歳から>

見たままを描くだけがアートではありません。色水を吹いて絵をデザインするアート絵本『ふーってして』の第2弾。2つ折りの紙に色絵の具を落として、ぱったんと閉じると模様が広がる様子を、いろんな形で表現しています。「ぱったん」という赤ちゃんの好きな擬音の繰り返しもあり、小さな子でも色を遊ぶ楽しさに触れられる絵本です。読み聞かせの後に、実際にぱったん遊びを楽しむ体験をしてみてもおもしろいですね。保育や図工で使えるお絵かき遊びの解説付きです。

これってなんだ!? 驚きのペインティング

『なにになれちゃう?』

作:チョーヒカル
出版社:白泉社
<3・4歳から>


実物そっくりに描かれた絵をよく見ると、手や腕がニョキリ。ボディペイントアーティスト・チョーヒカルさんによる写真絵本。ジャンケンのグーチョキパーをリアルに石とはさみと紙に見えるようペイントしたり、ひじのシワを使って桃をペイントしたり、体に直接絵の具を塗ってまるで本物のように表現しているのが驚きです。『じゃない!』(フレーベル館)では、バナナにきゅうりをペイントしたチョーヒカルさんが、今度は体を使ってアート表現。子どもも真似したくなる超絶技巧の世界です。

■メイキングムービー■

立体物だって遊び心がなくちゃ

『いたずらのすきなけんちくか』

文:安藤 忠雄 絵:はた こうしろう
出版社:アリス館
< 3・4歳から>

大阪の新しい図書館「こども本の森 中之島」に遊びに来た兄と妹が、建築家の男性に出会う物語。この男性、実は本の森を設計した世界的な建築家、安藤忠雄さん。「建物でみんなをびっくりさせるのがぼくの仕事」「ひらめいたらそれを絵に描いてみる」と、思い描いた建物をデザインしていくことについて、おもしろく丁寧に教えてくれます。タイトルの「いたずらが好き」という意味は、ぜひ絵本を読んでみて。建物が安全であることはもちろん、人が集う場所をデザインするのは、いつだって遊び心が必要なことを教えてくれます。

青の表現だけでこんなに幅広い

『あおのじかん』

文・絵:イザベル・シムレール 訳:石津ちひろ
出版社:岩波書店
<5・6歳から>


同じ青でも、違う青。なんとも表情豊かな青を、自然や生き物を通して描いていくアートな絵本。小さい頃から一色ではない青の表現を感じて、色彩感覚やデザイン感覚を養える一冊です。世界中に生きる青い生き物が次々に登場し、すべてが青い朝、海、雪景色や闇に溶け込んでいきます。フランスの絵本作家イザベル・シムレールさんの描く繊細で生き生きとした命。その美しさから大人にも人気の高い絵本で、インテリアとして飾る人もいるほどです。親子で深い青の時間に浸ってみてください。

今回の絵本をおすすめした絵本専門士

記事監修

日下淳子(編集ライター・元保育士)
出版社での雑誌編集者を経て、2008年よりフリーランス。出産を機に、絵本と子育て、暮らしを中心に編集・執筆を行っている。音楽・表現教室の講師でもあり、保育士経験があることから、親子向けの企画、制作、イベント運営にも携わっている。「絵本ユニットはっちぽっち」「音の教室カリヨン」所属。https://ehon-press.amebaownd.com/

 

文・構成/日下淳子

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