子育てにイライラ…悩むママ・パパが大切にしたいモンテッソーリ流「子どもの3つの間」と「親の余白不足のサイン」

子育てママ、パパに寄り添い、悩みがちな課題を解決していく人気連載「モンテッソーリ教師あきえの子育てROOM」。今回は、子育てをしていく中で意識して欲しい、大切な3つの「間」についてお話を伺いました。

子どもの育ちに大切な3つの間①「空間」

「子どもは環境に触れて、そこでの経験を通してでしか自分を創っていくことができない」と、モンテッソーリ教育を築いた女性医師マリア・モンテッソーリは言っています。環境=空間」に子どもは多大な影響を受け環境が適切でないと、子どもの発達を妨げる原因にもなります。

もちろん、環境が100%の要因ではなく、先天的な遺伝の部分が要因となることもあります。しかし、持って生まれたものを変えるのは難しく、一生持ち続けていかなくてはならないことに比べ、環境は大半がコントロール可能です。大人が子どもを観察しながら、適切な環境を用意することが大切です。

子どもの育ちを助ける「空間」の具体例

何でも引っ張ったり、取り出したりする姿が見られる時期
いたずらとして取り上げるのではなく、何度も満足いくまで「引っ張る」「取り出す」という動作ができる玩具や道具を用意しましょう。

歩きたがる時期
なるべく子どもが思うように歩けるような公園や広場で遊びます。

字を書きたい時期
手のサイズにあった鉛筆やノートや便箋などをいつでも使える場所に用意します。

子どもの育ちに大切な3つの間②「人間」

2つの目に欠かせない間は「人間」です。1つ目でお話した環境には、人間も含まれています。環境の一部でもある人間がどんな人であるか、子どもにどんなまなざしを向けてくれるのか、どんなかかわりや声かけをしてくれるのか。そこは子どもの育ちに対して大いに関係してくるところです。

そのために、自分がどういう人間で、どうあるべきなのかを考え、その理想に向けて、現実を近づけていくことが重要です。学ぶことや知識をつけることは理想だよねと、理想で終わりにするのではなく、それを達成するためにどう取り組んでいくかを考えることは、子どもの育ちを助けることにもなるのです。

子どもの育ちを助ける「人間」の具体例

「子どもは大人の支配下」ではなく「子どもは大人と対等」

子どもは人格を持った一人の人間。日々発達し続けている子どもの育ちを助けている存在が大人です。大人が育ちを助け、尊重の気持ちを持つことは、子どもの自尊感情や自己肯定感となり、発達を大きく後押しします。

否定ではなく肯定を、具体性のある声かけを心がける

「走らないの!」→「歩こうね」とポジティブなイメージにチェンジして声かけすることで、「怒られた!」という印象が和らぎます。また、0~6歳までの乳幼児には、「ちゃんとして」などの抽象的な声かけではなく、「白い線の内側部分を歩けばいいんだよ」と具体的に示すのが有効です。

子どもの育ちに大切な3つの間③「時間」

3つ目は「時間」です。これは、私自身も意識しないとと、感じていることでもあります。子どもの育ちを助けていくには必ず時間が必要で、子どもサイドからすると、待ってもらうことが100%大事なこと。

子どもの育ちは私たちが代わることはできないですし、やらせることもやってあげることも意味がなくて、自分ができるようになることに価値があって、学びのもとがあります。それを保障するためにも、ある程度の自由があって、その中での経験を保障していくためにも時間は必要になってきます。

子どもの育ちを助ける「時間」の具体例

自分でお洋服のボタンをはめようとしている

かけちがっていても子どもが気付くまで少しぐっと我慢する。

支度が進まない

「先にお着替えにする?ご飯先に食べる?」「ズボンから履く?上の服から着る?」などとやることの選択肢を出して、子どもが選ぶのを待ってみる。

お茶を自分で注ごうとしている

「こぼしそう」と思っても、こぼす前に手出し口出しせず、見守る。

もう1つ、とても重要なのは大人自身の「余白」

3つの「間」は、モンテッソーリの中でもとても大切とされています。しかし、それと同じくらいに大切なのは、著書やSNSでもたびたびお話していますが、大人自身の「余白」です。

余白や心の余裕がない状態で子どもを尊重していくはとても難しいこと。家庭内でどちらか一方に育児がかたよっていたり、周囲に助けてくれる人がいなかったりで、「孤育て」や「ワンオペ育児」なんて言葉を聞く機会も多くあります。働き方やパートナーシップの問題などもあるかと思いますが、余白を作ることはいわば「源泉」とも言えます。この源泉を整えることで、あとは下流に向かって巡っていくのです。要するに、自分に余白を作ることで、自然と子どもに対してやさしくなれる、イライラせずに向き合えることにもなります。

余白のなさは誰かに気づいてもらうことは難しく、自分で作るしかありません。そのため、「とても疲れていてキャパオーバー」「いつもはこんなことで怒らないのに怒ってしまった」など、自分が余白のなさに気づくサインやシグナルを決めておくことが大切です。

ちなみに私の場合、「私は〇〇している“のに”」と感じる時が余白がなくなっているサイン。そんな時は、大好きなサウナに行ったり、読書をしたりしてリフレッシュし、余白を作るようにしています。

3つの「間」と「余白」を意識して子どもとかかわっていきましょう

お話した3つの「間」を意識することはとても大切です。しかし、それを意識し、実行するためには「余白」が絶対に必要です。育児をしていると、「一人の時間なんて取れない」「取ったとしても後からいろいろ大変」などと考え、つい、自分の時間を後回しにしてしまいがちですよね。「母」や「父」というアイデンティティも大切ですが、「自分」というアイデンティティと向き合うようにしてみてくださいね。

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記事監修

国際モンテッソーリ教師(AMI)
モンテッソーリ教師あきえ

幼い頃から夢見た保育職に期待が溢れる思いとは裏腹に、現実は「大人主導」の環境で、行事に追われる日々。そのような教育現場に「もっと一人ひとりを尊重し、『個』を大切にする教育が必要なのではないか」とショックと疑問を感じる。その後、自身の出産を機に「日本の教育は本当にこのままでよいのか」というさらなる強い疑問を感じ、退職してモンテッソーリ教育を学び、モンテッソーリ教師となる。「子育てのためにモンテッソーリ教育を学べるオンラインスクール Montessori Parents」創設、オンラインコミュニティ”Park”主宰。2021年1月に初著書「モンテッソーリ教育が教えてくれた『信じる』子育て」(すばる舎)、2022年3月に「モンテッソーリ流 声かけ変換ワークブック」(宝島社)を出版。

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あきえ先生主宰オンラインスクールMontessori Parents

取材/本間綾

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